葬儀にビニール傘はありか、なしか?
以前、冠婚葬祭マナーについて、次のような類の内容の発信を目にしたことがあります。たしかにビニール傘には、使い捨てで壊れやすいというイメージがあるのは否定できませんが、葬儀の場に本当に相応しくないのでしょうか。「ビニール傘は周囲に安っぽい印象を与えてしまう残念なアイテム」
「ビニール傘はフォーマルシーンにふさわしくない」
結論から言えば、雨具の色や素材に「こうしなければならない」という決まりはありません。ただし弔いの場へ訪問するわけですから、周囲に配慮した装いは心掛けたいもの。黒でなくても喪服や小物に合わせて色味や柄を抑えた傘を使用したほうが無難です。
とはいえ実際の現場では、適当な手持ちの傘がない場合、白や透明のビニール傘を使用している姿を多く見かけます。取り急ぎ用意したものであったとしても、それを特段失礼にあたると感じている人は少ないのではないでしょうか。
近年は、従来のビニール傘のイメージを覆すタイプのものも登場しています。例えば、平成22年度の園遊会では当時の天皇陛下がビニール傘を使用していますし、イギリスのロイヤルファミリーもフルトンというレイングッズメーカーのビニール傘を使用している姿をよく見かけます。ビニール傘は前方の視野の確保がしやすいため、安全性の面からあえて使用している人もいるようですから、もはやその場しのぎのアイテムという位置づけではなくなっています。
雨天時は濡れた靴や傘の“取り間違え”に注意を
実際に傘を使用するのは、葬儀式場までの往復の道中。式場入口の傘置き場に預けることになるため、葬儀の最中に傘を広げることはほとんどありません。色や柄よりも注意してほしいのは、傘の取り間違え。同じような傘が傘立てに並ぶため、取り間違えや自分の傘を探せなくなってしまうことによる混乱が目につきます。柄の部分にゴムやハンカチなどで目印をしておくと良いかもしれません。
荒天の時は長靴などレイングッズで対応を
風雨が強い日、また冬の雪対策として、レインコートやレインシューズ、ブーツ等を着用して安全性を優先することも相手に対する配慮といえるでしょう。これらのアイテムも弔いの場にふさわしいものであれば、黒一色でなくてもかまいません。
一般的には式場に到着した入口で、レインコートを脱ぎ、靴を履き替えて水滴をはらった上で式場に入ります。脱いだものを入れる袋の持参も忘れずに。
雨天時の墓地は滑りやすく危険! 雨の日のお墓参りの装いは?
雨天時は墓地の足元が悪くなります。
滑り防止の加工が施されている区画もありますが、そこに至るまでの通路が滑りやすくなっていたり、土の部分がぬかるんでいて足を取られやすくなります。
比較的新しい霊園だと、通路に浸透性のあるブロックが敷き詰められているなど雨天時の工夫を凝らしているところもありますが、全体からすればまだ一部のみ。転んでぶつかった先が石だと事故になりかねませんので、できれば雨の日の墓参は避けたほうが無難です。
そうはいっても、あらかじめ納骨日や法要が決まっているような場合、天候が悪いからといって他の日に日程を調整するのは難しいこともあります。墓地の状態にもよりますが、足元が不安定な場所なら安全を第一に、滑りやすい靴は避け、手荷物はできるだけ減らすなどの工夫をしておきましょう。
納骨時なら、納骨に立ち合う石材店に事前に想定される墓地の状態を確認しておくと良いでしょう。石材店によっては雨除けパラソルやテント等を用意してくれるところもあります。
実は、雨の日は墓地探しの霊園見学に最適
雨の日のお墓参りは避けたほうが良い、という提案に矛盾するようですが、これからお墓を検討する人には雨上がりや小雨時の霊園見学がおすすめです。霊園の見学は、お天気が良い日に訪れた方が気持ちが良いものですが、水はけの良し悪しや、付帯施設の使い勝手など、雨の日だからこそ目に留まることもあります。水はけが悪く、あちこちらに水たまりがあるような墓地の場合、足元が危険なだけでなく地下カロート内でも水が抜けるように設計されているか不安があります。
また待合室やトイレ、法要室などの付帯設備の使い勝手も見ておくことで、雨天時の納骨や法要などのイメージがつきやすくなります。大雨や長雨が続いた後で地盤が緩い場合などは避けたほうが良いですが、小雨程度でしたらあえて狙って見学に行くのも良いでしょう。