職歴にブランクがある人などの、面接逆転術とは?
職歴にブランクがある人などの、面接逆転術とは?
有名企業とはいっても、一般的に名が知られた企業というよりは、求人企業が競合他社と認知している会社の社員が特に注目される。つまり、特に中途採用では即戦力採用が基本であり、仕事ができて、会社に貢献できる人材が求められていることは間違いない。
<目次>
公正な採用への呼びかけと現実は乖離していないか
書類選考で落選する原因は……
例えば、求人案件に記載ができないこと、いわゆる採用差別につながりかねない項目が、書類選考で落選する原因になることもある。
職業安定法では、労働者が人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、差別的取り扱いを受けることがないよう規定している。それを受けて、厚生労働省も企業には公正な採用をするよう繰り返し呼びかけている。
企業が組織である以上、そこには経営者や社員の存在によって時間をかけて形成された企業文化がある。それが原因の一端となって、書類選考では国籍や年齢、性別が考慮されて書類選考で落選してしまうことがある。
実際、企業の採用が国際公募であることを公言している求人案件は稀であり、業務で日本語が必要という理由を盾にして、求人案件の多くは日本人の採用を前提にして、外国人の雇用に消極的な採用は多いのではないだろうか。
ビジネスのグローバル化が進む中、業界や職種、地域などによっては、今後一気に外国人の雇用が進むことへの期待もあるが、コロナ禍の中、いったんその動きも止まっている。
今の時代、募集時に年齢や性別に対する制限を設けた求人案件を見ることはほとんどないが、職業安定法が採用時の差別的取り扱いをしないよう規定しているのとは裏腹に、現実には、特に採用の初期段階の書類選考で、国籍・年齢・性別で足切りをしている会社は少なくないのではないだろうか。
例えば、仕事の種類によって女性、もしくは男性のほうが適性のあるものがあるかもしれない。ただ、原則として募集要項に性別が記載されているものを見ることはない。年齢と性別に関する採用時の差別的な取り扱いは減少の傾向にあるはずだが、高齢者雇用の促進と女性の社会進出の実現には、いまだ様々な課題が残る。
転職回数・継続して働いた年数・経歴のブランクへの偏見はあるか
企業の採用の現場では、過去の転職回数や継続して働いた年数、または経歴にブランクがあることをマイナス評価する慣習が残る会社がある。人材エージェントが企業から人材の紹介依頼を受ける時、それらの特徴に対して懸念を示す面接官がいることに気づかされることがある。転職社会に移行して久しいとはいえ、日本社会には終身雇用や年功序列型賃金制度が色濃く残っている会社が多いことも、その理由の一端である。
就労観には世代間ギャップがあることがよく指摘されるが、面接官によって、転職回数が多いことや継続して働いた年数が短いこと、そして仕事から離れた期間があり、経歴にブランクがあることを評価しない人もいるのだ。
個別なケースでは、それらの特徴を抱えた人に問題がある場合もあるのかもしれないが、言うまでもなく、そのことは個人差があることであり、固定観念を強めて偏った見方をすれば、それは偏見を生み出してしまう。
マイナス評価をする根拠であるが、転職回数が多いことや一つの会社で働いた年数が短いことは、他者と働く際の協調性が足りないのではないか、どんな場合でも自己都合ばかりを優先するのではないか、仕事を覚え、結果を出すことができずに辞めているのではないか、飽きっぽい性格ではないかなど、本人の性格や働き方、そして能力や実績に対する懸念である。
一つの仕事は、最低3年続けたほうがいいという意見を聞くこともある。それも一理あるが、しかし、その主張の根拠は薄いと言わざるを得ない。あくまでも個人の経験値に頼った意見であるからだ。
理屈では、人によっては有能であるがゆえに1年で仕事を覚え、初年度から結果を出せる人もいる。そして、3年働いても期待にこたえられない社員もいることだろう。どちらが優秀で、かつ会社に貢献しているか、それは明白ではないだろうか。
面接官は最悪の状況を考えて防衛的になることが多い
本来、応募者が自らの経歴にブランクがある場合は、その理由を丁寧に説明することで企業に理解を求めることができる。ブランクがあることが、仕事の遂行に影響がないことを認めてもらえば済む話であるのだ。しかし、実際に採用の現場には偏見が存在している以上、ブランクのある求職者はストレスを感じる現実と向き合うことになる。面接官から偏見を持たれかねない理由を持った人が転職活動をする際、人材エージェントにコミュニケーションパートナーとなってもらい、面接官との受け答えに関する練習を事前に積んでから面接に臨むことが望ましいだろう。また、書類選考で不利な扱いを受けないよう、転職理由や転職希望先への志望理由などは、経歴書に添えて、分かりやすく書いたものを企業に提出することも大切である。
柔軟な労働環境や働き方の慣習があるアジアや欧米諸国と比べて、日本の転職市場には同調圧力が強く働き、多様性に対して不寛容な価値観が一部で残っている。今後、日本社会は多様な働き方に対して、もっと寛容にならなければならないだろう。
偏見を持たれやすい個人事情を面接官に説明する時のコツ
転職歴が多い人が新たな転職活動をする際、面接官から過去の転職理由を聞かれることほどストレスに感じることはないだろう。転職には、キャリアアップを望んで転職した場合もあれば、仕事や会社の雰囲気が合わなかった、もしくは業績不振で仕事がなくなり、会社に留まれる状況がなくなった場合もある。さらに、運が悪く上司や同僚からパワハラやセクハラの被害にあってしまったケースなど、人それぞれの事情があるものだ。
ただし、それらの出来事が理由で退職するに至った経緯を、どのようなトーンで、どこまで詳しく面接官に伝えればいいのかといえば、そこは悩みどころである。言い訳をしているように聞こえないためにするにはどうしたらいいのか、愚痴を言ったり、批判をしているように聞こえないようにするにはどうしたらいいのか、説明の難易度は高いと感じるだろう。
相手に丁寧に伝えようとして話が長くなりすぎたりはしないだろうかなど、心配は尽きないものだ。ここで、偏見を持たれやすい個人事情を面接官に説明する時のコツについて簡単に整理しておこう。
転職回数の多さが持つポジティブな側面とは
まずは転職回数について。転職回数が多いことを一番気にしているのは、実は面接官以上に自分自身であることが多い。言い換えれば、面接官はあまり気にしていないこともあるにもかかわらず、つい自らが転職の多さを申し開きしてしまうのである。何回以上の転職回数なら多いとみなされるのか、これは人によってとらえ方は違う。中途採用者の数が多い会社には、転職回数の多い社員も多いことが多く、新卒からの生え抜き社員はむしろ少ない場合もある。
つまり、転職回数が多いことを自覚している人に、最初に意識してほしいことは、転職回数をコンプレックスに思わないことであり、相手から指摘をされていない時から、自らマイナス材料であるかのように、転職理由の申し開きを始めないことが大切である。
自己アピールをするよりも、転職回数が多いことの申し開きに注力してしまっている方を見かけることがあるが、これは少し自分が注意すればすぐに直せる自らの習慣である。
次に、面接官から転職回数の多さを指摘され、その理由の説明をする必要が生じた場合、どのような心持ちで自分の経歴を話せばいいのだろうか。
転職回数の多さを指摘する面接官の中には、防衛的な態度や警戒心が表情や言葉尻に出ている場合もある。逆に、事務的に聞いているだけの場合もある。どちらにしても、転職回数が多いことは悪いことであるという思い込みを払しょくして、本人が説明することが大切だ。
例えば転職回数が5回ある人は、5つの転職理由をその会社を辞めた経緯を含めて詳しく話をするのかといえば、必ずしもそうする必要はない。5回のうち3回は、自分が担当していたプロジェクト終了により、ちょうど仕事の区切りが良かったため、新たなプロジェクトに挑戦できる会社の仕事に挑戦したと説明するのがいいだろう。
残りの2回は、業績不振により、担当部署が人員削減をすることになり、自分は他部署に異動することになったが(例えば営業から経理へ)、自分が専門とするキャリアの継続を希望するため(例えば営業の仕事を続けたい)、新しい会社で営業の仕事に挑戦したと説明できればいい。
この結果、5回の転職理由を2分類し、2回の説明で簡潔に話は済むし、どちらの場合も前向きに新たな挑戦をしているという印象を残すことができるはずだ。
さらに、転職回数が多いことにはポジティブな面もあることを忘れないでほしい。それは転職が実現するだけの業務の専門性や実績があるということであり、いろいろな会社を知っていることでもある。異なる環境の変化への対応ができること、即戦力であることをアピールすることを忘れないことが大切だ。
会社が本来欲しいのは、勤続年数が長い人ではなく(会社に貢献することなく、ただその場にいるだけの人もいるかもしれない)、会社に貢献してくれる即戦力である。
勤続年数が短くても、有事や逆境への強さをアピールできることがある
次に勤続年数の短さについて。仕事が中途半端な形で終わることは、会社にとっても社員にとってもいいことは何一つない。新規事業が軌道に乗らず、計画通りに進まなかったことで、計画途中で業務から撤収することがあるが、その影響は社員個人のキャリアにも影を落とす。勤続年数が短い人、もしくは会社は変わっていなくても、特定の部署で勤続年数が少ない場合、仕事の実績やスキル開発のアピールは弱くなるものだ。
つまり、勤続年数が本来アピールとなるのは、会社に貢献していることが大前提であり、業績もよいから仕事を継続できたという運の良さも伴うケースである。
勤続年数が短い事情は人それぞれ異なるが、上述したような会社都合の要素が強い場合は、自己判断で会社を辞めたり、仕事を継続しなかったのではなかったことについて、こちらも簡潔に説明するべきだろう。
もちろん、自分は悪くないと申し開きを強めることではないから、そこは誤解しないでほしい。あくまでも客観的に、何が起きたのか、そして自分はその環境下でどういう行動をとったか、ようは次善策としてどうしたかを説明すればよいのである。
キャリアのすべてが順調だという人は少ないし、仮に運よく順調だとしても、むしろ何もトラブルに巻き込まれていない人は、かえって有事や逆境に弱いのではないか、会社に貢献できたのは好況下だったからだったのではないかと、むしろ自身の貢献度をディスカウントして見られることもあるかもしれない。一概にキャリアが順調だったことをアピールすればいいかというと、そうでもないのである。
新たな収入源の開拓や職場復帰のハードルが高い時代は終わっている
最後に、離職してから次の仕事までのブランクが長い場合について。過去には会社で働く女性社員が産休をとりにくかった時代もあったが、今では多くの会社で制度が整い、多くの社員は一定期間離職した後に職場復帰を果たしている。病気で休職した人も同じである。もちろん、希望する仕事に戻れたかどうか、出世や昇給などに支障がないかなどは、会社によって異なるだろう。人口削減と少子高齢化社会の到来とともに共働き夫婦が増え、高齢者の再雇用が進み、企業の副業規定の見直しが進む社会環境の中で、雇用形態も多様化し、お金の稼ぎ方、在宅勤務を含めた働き方の選択肢は広がっている。
キャリアにブランクの期間があったとしても、会社への貢献意欲と一定の経験とスキルさえあれば、国内外を含めて視野を広く持って、デジタル化などを含めた新たな挑戦をしていくことで、いろいろな可能性を見出すことができる時代でもある。
人生100年時代を迎えた中で、やり直しのきく社会に向けて、日本もようやく歩みを進めている。
キャリアにブランクがある人の中には、病気したことが原因で、やむなく仕事からしばらく離れてしまった人もいることだろう。療養した後に、新たに仕事を始められるようになったり、以前とは同じ働き方はできなくても、在宅で仕事をするなど、容易なことばかりではないが、挑戦する余地は、以前よりも格段に広がりつつある。
面接で成功する人は過去の執着を捨てられる人、新たな挑戦を語れる人
キャリアのブランクが生まれてしまった原因には、過ちを犯してしまったがゆえに、働けない時期ができてしまって、経歴の中に失われた年数がある人もいることだろう。企業が中途採用する現場では、いろいろなスクリーニングが行われるものであり、自分の希望が常に実現するものでもない。しかし、キャリアにブランクがある場合でも、その内容を分かりやすく、そして簡潔に相手に伝え、自分が会社に貢献意欲があること、仕事への理解や経験、そしてスキルがあることを話すことで、粘り強く就職先を見つけることが望ましい。
前述した転職回数の多さや勤続年数の短さと比べると、キャリアにブランクがあることは、面接官の警戒心はより高くなるが、社会はやり直し、出直しをしたいという者に対して寛容であるべきであり、そうした試みを支援しようという機運はある。
定年後、再雇用がなかなか決まらず、本当はすぐにでも働きたいのに仕事ができない期間が長期化している人もいるが、その場合は、定年前の仕事とは全く異なる働き方も視野に入れて、新たな挑戦、ライフスタイルを検討してみてもいいだろう。
ホワイトカラー的なオフィスワークしかしたことがない人でも、体を動かしてアウトドアで働くブルーカラー的な仕事に挑戦し、新たなやりがいを感じるセカンドキャリアを謳歌している人も少なくない。
企業の面接に臨むときは、会社への貢献意欲を前面に出して、過去の自分をアピールするだけでなく、新しい生き方への前向きさを表現できれば、思いもしない世界があなたを受け入れてくれるかもしれない。新たな人との出会いに満ちた面接という場所で評価される人の多くは、執着を捨てられる人であり、新たな挑戦を語れる人であると、最後に整理して本稿を終えたい。
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