お金の悩みを解決!マネープランクリニック/マイホーム購入・住宅ローンで悩むファミリー世帯

34歳専業主婦、貯金200万円。貯蓄が増えず、毎日不安で仕方ありません(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、2人のお子さんを持つ34歳・専業主婦の方。貯蓄が増えない中、返済が夫75歳まで続く住宅ローンが悩みの種。ローンを支払いながら教育資金、老後資金を用意できるかどうか……。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 結果的に退職金頼みの老後はリスクあり

まずは試算をしてみますが、毎月の貯蓄額は積立定期などを利用せず流動的(月によって異なる)となっていますので、多少の節約を実践するとして、毎月3万円とします。ボーナスは半分以上が貯蓄に回っているので、ここはこのままで。したがって、月3万円×12カ月+ボーナス42万円となり、年間の貯蓄ペースは78万円。

今後、世帯収入や支出の増減は当然あるでしょうが(途中、児童手当がなくなるが、学資保険の支払いもなくなる、など)、定年までの19年間このペースを続けるとして1482万円。これに現預金が200万円、学資保険の満期金300万円を加算して、1982万円。およそ2000万円となります。
 
ここから大きな支出として教育費を差し引きます。まず先の試算で19年間、毎月1万5000円教育費が計上されていますから、これが約340万円。今後かかる教育費は、進路によって当然差があります。高校から私立の可能性があるとのことですが、上の子が私立に行けば下の子もそうなりがち。したがって、ここでは2人とも高校から私立、大学は私立文系とします。
 
高校私立300万円×2人分、大学私立文系400万円×2人分で計1400万円。あとは、それぞれ小学校、中学校の費用もありますので、それらを含めてざっと2000万円とします。結果的に残る資金は340万円。

もうひとつ、定年までのまとまった支出として、クルマの買い替えがありますが、2台所有ですし、買い替え予算は100万円と高くはないですが、19年間で残り340万円はほぼなくなると考えていいでしょう。
 
そうなると、教育資金は用意できますが、退職金を除くと、老後資金は個人年金の年金額分だけ。仮にお子さん2人とも高校が公立なら、さらに300万円程度上乗せされますが、それでも退職金頼みとなります。これは現状、老後は資金的にリスクありと言わざるを得ません。
 

アドバイス2 年金で生活費がカバーできるかがポイント

では、どう対策すべきか。
家計は先に月3万円貯蓄ということで試算をしましたが、その他として、保険の見直しも有効です。医療保障が医療保険と共済で重複しています。保険料の高い前者を解約します。あと、お子さんの共済も必要性は低いので、これも解約。合わせて月9500円程度、さらに貯蓄額が増えます。
 
ただ、新たな家計の見直しはこの程度でしょうか。そうなると、あとは収入アップしかありません。ご相談文では、Rさんが下のお子さんの小学校入学のタイミングで、扶養の範囲で働く予定とのこと。であれば、4年後から月8万円パート収入とすると、年間96万円。これをご主人が定年となるまで継続すれば、15年間ですから計1440万円。それと先の保険料の見直しで19年分の216万円が加算されますから、1656万円。うち1600万円貯蓄に回すことができれば、単純計算で老後資金が1600万円増えることになります。
 
個人年金保険の年金額が不明ですが、掛金から考えて受け取り総額は200万円前後ではないでしょうか。仮に200万円とすると、計1800万円。退職金を考慮しなければ、これが老後資金となります。
 
次に老後の生活費を考えます。現状の生活費を参考にすると、コストとしてなくなるのは教育費、それと保険料が月5000円程度になっているはずです。あと雑費や通信費なとも減額となり、結果、月16~17万円でしょうか。これにボーナスから負担している年間の支出を月割りして、2万円を加算します。
 
対して、公的年金の支給額ですが、Rさんがほぼ国民年金だけだとすると、ご主人の厚生年金の加入期間や今後の収入などが不明ですが、手取りで20万円は切る可能性があります。結果、毎月の生活費は公的年金でほぼ収支ゼロ。つまりは、毎月トントンですから、老後資金は基本取り崩さずに済みます。
 
老後資金は生活費として、年金の不足分を補うとともに、老後の予備費ともなります。まとまった額の支出としては、クルマの買い替えと住宅の修繕・リフォームは間違いなく発生するはず。程度によりますが、合わせて500~600万円はかかるかもしれません。また、医療費や介護費用も考慮すれば、1800万円は予備費として十分な額とも言えます。逆に言えば、それを確保するため、生活費が年金支給額である程度収まることがポイントになります。
 
また、ご主人75歳で住宅ローンが完済すれば、毎月5万9000円の負担が減りますので、さらに家計に余裕が生まれます。その意味で老後資金はさほど心配いらないとも言えます。
 

アドバイス3 退職金額によっては繰上返済で完済も

ただし、ポイントがあります。まず、60歳から公的年金支給となる65歳までの5年間、先の老後資金1800万円を取り崩さないためには、少なくとも生活費分の収入は確保しなくてはいけません。ご夫婦で手取り20万円程度は稼ぐ必要があります。
 
もうひとつは、試算はあくまで試算、ということです。例えば60歳以降、体調面が思わしくなくて働けないかもしれません。今後、予期せぬ支出がかさみ、貯蓄が思うようにできない可能性もあります。そういったリスクを軽減するためには、Rさん自身が扶養の範囲ではなく、フルタイムで働くということも可能なら目指してみる。大事なのは厚生年金に加入する働き方です。それにより収入だけでなく、年金受給額も増えます。最初はパートからでもいいので、そういう意識を持ってほしいと思います。
 
最後に住宅ローンについて。計算上、75歳まで支払えるとしても、やはりリスクにはかわりありません。

できれば、繰上返済によって完済時期を早めたいところ。キャッシュフローから考えて、可能なタイミングは、下のお子さんの教育費のめどが立ったころ。結果的にご主人の定年時となります。このとき、ローン残高は1000万円前後。
 
仮に60歳時点で、退職金が支給されて、この時点での資産が1500万円以上あり(個人年金保険の年金額は前倒しで加算)、なおかつ65歳まで貯蓄を取り崩さない働き方が見通せているなら、ここで完済してもいいと思います。ちなみに、このとき一括返済で、軽減される支払利息は40万円ほど(金利の変動がないとして試算)。
 
また、退職金がないとしたら、手元に500万円(同様に個人年金は前倒しで加算)は残しておきたいので、繰上返済できる額は500~600万円。500万円を返済した場合、短縮できる期間はおよそ7年半。ご主人68歳になる前には完済できることになります。
 
ともあれ、必要以上に心配することは精神的にマイナス。先の試算は、高校、大学ともに私立と、予算を高めに設定しています。4年後にRさんが働かれることが条件ではありますが、設定した貯蓄ペースが継続できれば、想定されているライフプランは資金的に可能です。まずは、貯蓄ペースを保つ家計管理を目指してください。
 

相談者「R」さんから寄せられた感想

専門家の方に、こんなに親切に、細かく相談に乗っていただき、そこまで深く考えすぎなくてもよいということで少しほっとしました。下の子が小学生になったら私も働く予定なので、さらに気持ちを引き締め貯蓄に励みたいと思います。引き続き貯蓄を増やし、家族みんなで頑張っていこうと思いました。本当に、ありがとうございました。



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教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん  
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武



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