コロナ禍で6割の人が睡眠の質の低下を実感
「コロナ禍の睡眠に関する意識調査」(※1)で、感染拡大以降、約6割の人が睡眠の質の低下を感じていることが分かりました。今回は、一級建築士で住宅リフォームコンサルタントの筆者が、ぐっすり眠れる寝室の環境づくりについてご紹介します。ぐっすり眠れない悩み。これまでとは違う生活へのストレスも
調査によると、睡眠の質の低下を感じている人の具体的な悩みには、「眠りが浅い」「夜中に何度も起きる」「寝ても疲れが取れない」などがあり、その原因として、「不安やストレスで考え事が続く」「生活リズムの乱れ」などが挙げられています。コロナ禍への不安、働き方の変化、外出控えなど、これまでとは違う生活にストレスを感じている人は少なくありません。All About編集部でも、「眠りが浅い」、「脳は疲れている実感はあるのに身体が疲れていない感覚がある」といった声が挙がったようです。
睡眠で大切なことは、「時間の長さ」だけでなく「質を高める」ことにあります。ぐっすり眠ってスッキリ起きる、そのためにはストレスの軽減や適度な運動などが必要ですが、そこにもうひとつ「睡眠環境」も重要な要素になります。
睡眠は身体の免疫力とも関係があるといわれています。よい眠りをもたらしてくれる寝室の環境づくりをして、少しでも身体と心を休めましょう。
気付きにくい「眠っている間」の騒音にも注意!
スマホやテレビを見ながらいつの間にか眠っていた……。そんな経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。よい睡眠のためには眠る前に明るい画面を見ないというのはよく知られていますが、実は眠っている間の騒音も睡眠に悪影響を及ぼしています。WHOの欧州夜間騒音ガイドラインでは、睡眠に悪影響を与えない寝室内の環境騒音は30デシベル未満とされています。また航空機騒音がある場合でも40デシベルを下回るレベルまで削減するよう推奨しています。
環境省のデータによると、30デシベルはホテルの室内、40デシベルは図書館程度ですから、かなり静かな環境です。
もし寝室内にテレビや動画の音が響いていたり、イヤホンを付けっぱなしにしていたりしたら、それは騒音の中で眠っているということ。眠ってしまえば大丈夫と思いがちですが、睡眠中の「音環境」を整えることは、よい睡眠を取るためにとても大切なことなのです。
寝室にスマホは持ち込まない、動画を見るならループや連続再生にしない、テレビはタイマーで切れるようにしておくなどの工夫で、静かに眠れる環境づくりをしましょう。
道路沿いなど外部からの騒音対策はどうする?
幹線道路沿いの家などは、外からの騒音によって眠りの質が低下している可能性もあります。そんな時は内窓の取り付けで騒音対策ができます。今ある窓の内側に樹脂製のサッシを取り付けて二重窓にすることで防音効果が高まり、マイナス40デシベル程度の効果がある製品もあります。例えば、交通量の多い道路の騒音が80デシベル程度とすると、一般的なサッシがついた室内の騒音は55デシベル程度なのに対し、内窓が付いた部屋は40デシベル程度まで軽減(※2)できるとしています。
実は筆者の以前の事務所は幹線道路沿いにあり、昼間はテレビの音が聞こえないほどの騒音でしたが、内窓の取り付けでかなり静かになり、その効果のほどを実感しています。
内窓は防音だけでなく断熱効果があるので、いま省エネリフォームをすると商品や工事と交換ができるポイントがもらえる「グリーン住宅ポイント制度(※3)」の対象となっています。リフォームの場合は最大30万ポイント、条件により60万ポイントまでもらえますので上手に利用して頂ければと思います。
寝室内は夜に暗く、朝に明るく! ベッド内環境の見直しも
今回は主に音の問題についてご紹介しましたが、他にも眠る時は暗く、朝は明るくといった「光のメリハリ」も、身体のリズムを整え、睡眠の質を高めるために重要な要素になっています。加えて、意識しておきたいのが「ベッド内環境」です。質の高い睡眠を取るための布団の中の理想の温度は33度、湿度は50%が目安です。冬に電気毛布を付けっぱなしで眠る、暑くなってきたら汗びっしょりということがないよう、寝具にも配慮をしましょう。
寝室は人生の3分の1を過ごし、毎日の元気を支える大切な部屋です。睡眠環境を改めて見直し、ぐっすり眠って、スッキリ目覚め、毎日を元気にお過ごしくださいね。
※1:「コロナ禍の睡眠に関する意識調査」(2020年7月、ウーマンウェルネス研究会)
※2:「LIXIL インプラス」の特長より(※一定の条件下においてメーカーが算出した数値です)
※3:「グリーン住宅ポイント制度」(※条件と期限があります。詳細はこちらをご確認ください)