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コロナ禍の「PTA活動中止」は正解だったのか? 改めて問われる存在意義と新たなカタチ

新型コロナウイルス感染症の流行による学校行事の中止などにより、2020年度のPTA活動も軒並み縮小されました。先行き不透明な中、「いっそのことPTAはなくてもいいのでは?」という声も聞かれます。PTAの存在意義とこれからについて改めて考えてみました。

長島 ともこ

執筆者:長島 ともこ

子育て・PTA情報ガイド

コロナ禍で改めて考える「PTAは本当に必要か?」 

学校では補えきれない消毒ジェルやマスクを寄贈するPTAも

学校では補えきれない消毒ジェルやマスクを寄贈するPTAも

新型コロナウイルス感染症が猛威をふるった2020年。突然の一斉休校や緊急事態宣言などにより、これまでPTAが担ってきた学校行事のサポートやPTA主催のイベント運営などが中止・縮小されました。通常総会や役員会、運営委員会も中止や簡略化を余儀なくされ、1年間全く活動を行わなかった委員会もありました。

そして、このようにPTAが従来行ってきたことができなくても、学校はこれまで通りにまわり、子どもたちも無事に学校生活を送ることができました。“前年通り”をやめても特に問題が生じなかったことから、「PTAは本当に必要?」「PTAはなくてもいいのでは?」という声も、ちらほら聞こえてきます。

しかし、そもそもPTAは、保護者(家庭)と先生(学校)、地域によるコミュニティであり
つながりです。自然災害や感染症など、この先の私たちを取り巻く環境がどう変化していくかわからない状況におけるこういったつながりは、子どもたちの健やかな成長、安心感のある地域社会に必要不可欠だと思います。

現に、多くのPTAでは、
  • 行事が中止になった分のPTA会費で消毒薬やマスクなどを学校に寄贈したなどのコロナ対策
  • 運動会は開催されたが保護者の観覧は禁止になったことに対するオンラインの実況中継
  • 例年の行事が中止になったため、PTA主催による校庭での花火大会実施
など、新たな試みが行われました。

PTAの目的は“前例踏襲”ではありません。保護者(家庭)と先生(学校)が時代に合った形でつながり、子どもたちの健やかな成長を見据え、「できる人が、できる時に、できることを行う」コミュニティとして、細く長く存続させていくことが大切なのではないでしょうか。
 

ピンチはチャンス! PTAの新たなカタチを実現する4つのキーワード

コロナ禍は、これまでのPTA活動のあり方を問い直す契機と捉えることができます。家庭と学校の連携がより一層重要となる中、保護者が負担に感じることなくPTAに関わることにつながるキーワードを4つ紹介します。

■1:ミニマム化
執行部・各委員会の内容を精査して必要な活動は残し、なくてもよかったり簡素化できる活動は2021年度で廃止・縮小。それにともない、役員・委員の人数や会議の頻度などを見直すことで、ミニマム化が図れるのではないでしょうか。安全第一を念頭におき、必要最小限の人数で必要な活動に集中して取り組む体制の整備が期待できます。

■2:委員会制からボランティア制へ
執行部の下部組織である委員会を廃止し、活動ごとにメールなどの連絡ツールを使ってボランティア(協力者)を募るスタイルで運営するPTAも見受けられるようになりました。委員を選出する必要がなくなるため強制感が払拭されて、コロナ禍で活動の縮小が進む今の時代にふさわしいPTAのあり方として注目されています。「ボランティアが集まらなかったらどうするのか」などのリスクもありますが、そのようなケースも想定した上でルールを策定して試してみる価値はありそうです。

■3:オンライン化、必要に応じデジタル委員会を
コロナ禍、メールやSNS、ビデオ会議といったオンラインは、日常生活に欠かせないコミュニケーションツールとして存在感を増しています。PTA活動もしかり。ビデオ会議アプリ「ZOOM」などを使った役員会議や委員会はもちろん、必要に応じて保護者会や親睦会なども行うことで参加者の幅が広がりPTA活動への敷居が下がることが期待できます。

また、保護者への連絡は、学校から配信する「学校連絡メール」を利用しているPTAが多いようですが、PTA独自の双方向連絡システムを導入することで、活動がよりスムーズになったという事例もあります(「オンライン化で前例踏襲を改善した世田谷区の事例」)。システムの選定や導入準備には時間がかかるため、政府がデジタル庁を設置したようにPTAでもデジタル部署を作り、オンラインコミュニケーションの可能性を広げていくのも一案だと思います。

■4:アウトソーシング
PTA活動の保護者負担を減らす方法のひとつとして、思い切って外部の力を借りる動きも出てきています。「さかせる」代表の増島佐和子さんは、2人の子どもが通う小学校のPTA副会長を経験した際、非効率で保護者の負担が大きいことを痛感。「PTAはもっとラクちんでいい」をコンセプトに、印刷・清掃・クリーニング・行事の警備やサポート・備品レンタルなど、これまで保護者が行っていたり、やむくもに業者を探していた業務を業種やエリアから対応可能な企業を検索できるマッチングサイト「PTA’S(ピータス)」をリリースしました。

「PTA’S」では、各PTAのニーズに合うアウトソース先を探すことができ、業務軽減につなげるサービスを提供しています。ホームページでは企業の検索の他、PTAに関する疑問にプロのアドバイスを基に法的根拠に則った回答が得られるコーナーもあり、PTA執行部にとっては、なんとも心強いサービスです。

PTA保護者向けのオンライン講座や講演会(家庭教育学級)の企画・運営をサポートする「ファミリード」も登場。食育・マネー教育・英語教育などさまざまな分野の認定講師の中から希望に合う人を探し、直接依頼することができるのに加え、保護者への案内状や講師への依頼状、当日進行表などのテンプレートもダウンロードできます。

立ち上げたのは「一般社団法人 ファミリード」の代表の星谷みよ子さんと副代表の亀谷さおりさん。共にPTA役員・委員経験があるだけにかゆいところに手が届くサービス内容となっています。コロナ禍により、多くの学校で保護者向けの講座が中止になりましたが、このようなサービスを利用することで学びの機会を確保できます。
PTAの雑多な業務をアウトソーシング

PTAの雑多な業務をアウトソーシング

先行き不透明な日々が続きますが、これからのPTAを作っていくのは私たち保護者です。「コロナ禍はPTA改革のチャンス」と捉え、時代に即した新しいカタチを作っていきたいものです。かくいう筆者も、春から息子が通う中学校のPTA執行部の一員として活動する予定です。学校と歩み寄りながら、自分たちに何ができるのか。楽しみながら模索していきたいと思っています。

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