楽天モバイルの先行投資が大きく影響した資本提携

Eコマース大手の楽天が2021年3月12日、日本郵政と資本・業務提携に合意したと発表して大きな注目を集めました。一連の発表内容によりますと、この提携によって日本郵政は楽天に約1500億円を出資して8.32%の株式を持つ楽天の大株主になるとともに、物流やモバイル、そして日本郵政のデジタル化などを主体に協業すると発表しています。
既に提携関係にある日本郵政と楽天だが、2021年3月12日には新たに資本・業務提携を発表している

既に提携関係にある日本郵政と楽天だが、2021年3月12日には新たに資本・業務提携を発表している

楽天は同日、中国のインターネットサービス大手であるテンセントの子会社や、米国の小売り大手であるウォルマートからも出資を受け、合計で約2423億円を調達したとしています。日本郵政からの出資はその半数以上を占めているだけに、楽天は非常に大きな出資を受け、日本郵政と密な関係を構築するに至ったことが分かるでしょう。

ですが実は両社は2020年12月24日にも、資本を伴わない形で物流分野での業務提携を発表しています。それからわずか3カ月のうちに資本を伴う提携に至ったのは、やはり現在楽天が力を入れている、楽天モバイルが非常に大きく影響したといえそうです。

2020年に携帯電話市場に本格参入した楽天モバイルは、新規参入でエリア整備中なだけに、携帯大手3社と比べると利用できるエリアが狭いのが弱点です。そこで同社は、月額2980円でデータ通信が使い放題になる料金プラン「Rakuten UN-LIMIT」を提供、エリアの弱さを他社より圧倒的に安い価格でカバーすることで顧客獲得を進めていました。

・携帯大手各社の料金引き下げで楽天が打ち出した策は
ですが同年9月、携帯電話の料金引き下げを公約に掲げる菅義偉氏が内閣総理大臣に就任して以降、政治主導で携帯大手各社の料金引き下げが進みました。その結果、エリアで圧倒的優位の大手各社が楽天モバイルに匹敵する料金プランを投入し、楽天モバイルは競争力を大きく落とす懸念が出てきたのです。

そこで楽天モバイルは、1GB以下の利用であれば月額0円になる「Rakuten UN-LIMIT VI」を投入して料金面での競争力を強化したのですが、それに伴って利用者も急増、2021年3月9日には累計申込数が300万を突破するに至っています。そのため楽天モバイルは利用できるエリアを広げるだけでなく、利用者増加に伴い通信品質を強化するため追加投資が必要になってきたのです。
楽天モバイルは競争力強化のため、1GB以下であれば月額0円になる「Rakuten UN-LIMIT VI」を発表したが、それ以降契約数は急速に増えているという

楽天モバイルは競争力強化のため、1GB以下であれば月額0円になる「Rakuten UN-LIMIT VI」を発表したが、それ以降契約数は急速に増えているという

・参考記事:1GB以下なら0円、楽天モバイルの“常識超え”新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」を解説

実際楽天モバイルは、エリア整備計画を5年前倒しして2021年夏ころまでに4Gの人口カバー率96%を達成することを打ち出していますが、それに加えて通信品質向上のため、基地局数を当初計画の約1.6倍となる4万4000局を整備すると発表。それに伴い設備投資額も、6000億円から30~40%程度増えるとしていました。
楽天モバイルは利用者増加による品質向上のため、基地局数を4万4000局にまで増やすと発表。それに伴い設備投資額が当初予定の6000億から、30~40%増えるとしていた

楽天モバイルは利用者増加による品質向上のため、基地局数を4万4000局にまで増やすと発表。それに伴い設備投資額が当初予定の6000億から、30~40%増えるとしていた

そして今回日本郵政などから調達した金額は、まさに6000億円の40%程度。楽天も調達された資金を、4G基地局整備に1840万円、5G基地局整備に310万円、4G・5G共通の設備に250万を使うとしており、一連の提携が楽天モバイルのためであったことは間違いありません。
 

順調なエリア整備はユーザーにメリット、だが投資額はまだ足りない?

日本郵政などからの資金調達によって、楽天モバイルは先に打ち出した計画通りのネットワーク整備を進められるといえます。予定通りであれば2021年夏頃には全国の多くの場所で楽天モバイルのネットワークが使えるようになるでしょうし、設置される基地局も増えることから、混雑時にも通信速度が落ちにくくなると考えられます。
楽天モバイルは当初計画を大幅に前倒しし、2021年夏頃には人口カバー率96%を達成するとしている

楽天モバイルは当初計画を大幅に前倒しし、2021年夏頃には人口カバー率96%を達成するとしている

楽天モバイルは現在、エリア未整備の場所をKDDIのネットワークにローミングして補っていますが、そのエリアではデータ通信が使い放題にならず、月当たり5GBまでという上限が付いてしまいます。自社エリアの拡大でローミングエリアが減ることは、楽天モバイルの利用者が安心してデータ通信できるメリットにもつながってくる訳です。

また楽天は日本郵政との提携によって、郵便局の屋上などに基地局を500局以上設置する予定だとしているほか、郵便局内に楽天モバイルの申し込みカウンターを設けたり、宅配ネットワークを活用したマーケティング支援活動をするとしています。楽天モバイルは他の大手3社と比べ自社のショップが少ないことから、郵便局を販売の拠点に活用できるとなればその弱みをカバーできるメリットとなりそうです。
今回の提携によって、楽天は郵便局への基地局設置のほか、郵便局に楽天モバイルの申し込みカウンターを設けるなど販売・宣伝でも協力体制を取るようだ

今回の提携によって、楽天は郵便局への基地局設置のほか、郵便局に楽天モバイルの申し込みカウンターを設けるなど販売・宣伝でも協力体制を取るようだ

・残る課題は
ただそれでも、楽天のエリアには多くの課題があります。正直な所、エリア面で大手3社に肩を並べ、消費者の満足度を高めるには人口カバー率96%では足りません。今後は例えばキャンプ場やゴルフ場など、普段人がそれほど住んでいる訳ではないものの、多くの人が訪れる場所なども今後はカバーしていく必要があるのです。

しかも楽天モバイルは、障害物に強く広いエリアのカバーに適した「プラチナバンド」と呼ばれる周波数帯の免許を持っておらず、郊外や山林、そして都市部であっても入り組んだ場所などをカバーするのに多数の基地局を設置しなければなりません。そこで楽天モバイルは、総務省にプラチナバンドの再割り当てを要望したり、衛星を使って上空からエリアをカバーする計画を打ち出したりしていますが、いずれもすぐ実現できるものではなく時間がかかります。
楽天モバイルは米国の企業と提携し、衛星を用いて全国をカバーする計画を打ち出しているが、技術の標準化や法整備などさまざまな面で課題をクリアする必要があり、すぐ実現できる訳ではない

楽天モバイルは米国の企業と提携し、衛星を用いて全国をカバーする計画を打ち出しているが、技術の標準化や法整備などさまざまな面で課題をクリアする必要があり、すぐ実現できる訳ではない

そうした状況でエリア拡大を進めるには、楽天モバイルの設備投資が今回の資金調達分だけでは足りない可能性があり、楽天は一層の資金調達に迫られるかもしれません。その時日本郵政がより一層の投資に動くのか、それによって両社の関係にどのような変化が出てくるのかという点は、今後大いに注目されることになりそうです。

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