職務内容を明確にして成果で処遇する「ジョブ型雇用」が増えていく
三菱ケミカルはジョブ型雇用を採用
つまり、職務を遂行できる能力や実績がある人を採用・配置することで、同一労働・同一賃金を実現させることを目指すということだ。その結果、成果の高い人を特別に処遇することで、会社への貢献度の高い社員のモチベーションアップが期待できることになる。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、在宅勤務など、職場の働き方が多様化したことも、ジョブ型雇用の導入を後押ししたかもしれない。たくさんの社員を抱え、多くのグループ企業を持つ伝統的な業界の最大手企業である三菱ケミカルがジョブ型雇用の導入に踏みきったインパクトは、業界内の競合他社への影響もさることながら、広く日本の企業社会に議論を引き起こす意味でも注目に値するだろう。
他にも、最近注目を集めた発表があった。日本経済を支えてきた重厚長大型産業である総合重機業界で国内2位の川崎重工業が、2021年4月より「工場勤務の従業員を含んだ全従業員を対象」に勤続年数に応じて昇給する年功序列を廃止し、役割や成果を重視した新たな人事制度を導入することを発表した。
総合重機業界では、その半年前の2020年10月にも、業界首位の三菱重工業が国産初のジェット旅客機スペースジェットの事業凍結を発表し、約3000人の社員の配置転換を決めた。
三菱重工業では民間航空機事業だけでなく、主力事業である火力発電や造船も含む形で、異例の体制縮小が進んでいる。このように業界全体が業績不振に苦しむ中で、業界上位の川崎重工業では、社員の働き方に関する各種制度改革を進め、従来の日本型雇用からの脱却を急速に進めている。
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