ランドセル重すぎ問題、新学期の前にできる対策は?
ランドセルは、子どもの身体と中身をしっかり支え守ってくれますが、近年その重さが問題になっています
しかしランドセルには「毎日教科書を持ち帰る」「歩いて通学する」という日本の登下校に適した、以下のような特長があります。
- 両手をふさがない
- 丈夫(中身を守ってくれる)
- 転倒時にクッション代わりになる
そういった理由から、子どもの身体も中身もしっかり支えて守ってくれる通学カバンとして、ランドセルは今まで使われてきたのです。
負担のないランドセルの重さの目安は「体重の15%まで」だが……
とはいえ、今や教科書は大きく重くなり、必要な教材・教具の量も増え、新型コロナウイルスの影響で年間を通して水筒までもが必需品となっています。ママタスlaboのアンケート(※1)では、子どもたちが背負っているランドセルの重さは3~4kg、週末週初は5kgにも及ぶということがわかりました。
身体に影響がない重さは体重の15%までといわれます。しかし今のランドセルの重さは、子どもたちの体重の2~4割にあたります【グラフ提供:ママタス】
さらに学童保育を利用したり、学校から直接習い事に行ったりする子は、そのための荷物も必要ですから、負担はより増すことになります。
本来ならばランドセルを含む荷物の軽量化を早急に進めるべきですが、通学カバンのスタンダードは、まだまだランドセルです。そこで今できる対策として、ランドセルが身体に与える負担を小さくする方法を考えたいと思います。
軽量化のコツ1 :「軽く感じる」ランドセルを選ぶ
大手メーカーの人気ランドセルの平均的な重さは、クラリーノ(合皮)で1.1kg程度、天然皮革で1.3kg程度です。背負ってみると数百グラム程度の違いはわからないこともありますから、「軽く感じる」、つまり「身体に負担がかからない」工夫がされているかどうかがポイントになります。低学年の児童に対して行われたランドセル背負い実験によると、荷重圧は肩中央部および腰椎部に大きく加わることが分かりました。またランドセルと中身の重さが増すほど、荷重圧も大きくなるようです。特に肩中央部は、ランドセルが揺れる歩行時に負担が大きくなる傾向がみられます(※2)。
一般に、ランドセルが背中にフィットしていると接触面積が広くなる分、背中への負担が分散されて楽に背負うことができるといわれますから、ランドセルを選ぶときには、身体へのフィット感と肩ベルトは特に丁寧にチェックしましょう。
たとえばセイバンの「天使のはね」は、『Wぴたっと設計』で肩や背中、腰への負荷が集中せず、実際の重量より軽く感じられることが実証されています。
なお、もし「軽量」を売りにしたランドセルを選ぶなら、極端に安価な物ではなく、大手メーカーや工房のランドセルがおすすめです。軽くするだけでなく、オリジナルの素材や独自の技術で、強度や耐久性をも持たせていることが多いからです。ホームページなどで詳しい説明や実験の様子をチェックすることもできます。
軽量化のコツ2:成長や季節に合わせて、肩ベルトを微調整する
肩ベルトの確認・調整は、身体の大きさに変化があったときだけでなく、季節ごとに行うのがおすすめです。夏と冬では、服の厚みに差があるため、ランドセルの位置が微妙に変わるからです。また、肩ベルトには重さがかかりますから、幅が広くずれにくい、クッション性のあるものがおすすめです。細やかな調整ができるよう、穴の数の多いものがよいでしょう。
ちなみに、肩ベルトの長さはランドセルによって違いがあります。延長や交換は、有料で対応してくれるメーカーがほとんどですが、お子さんの体格によっては、最初からベルトが長めのものを選んでもいいかもしれません。ホームページに「身長○○cmのスタッフも背負えます」などの例を掲載しているメーカーもありますから、参考にしてみてください。
軽量化のコツ3: 中身を減らす
2018年には文部科学省からも「児童生徒の携行品に係る配慮について」(※3)という事務連絡が発出されました。そこには、家庭学習で使わない教科書やプリントなどを置いて帰る「置き勉」、また、お道具箱は学期末に保護者が集まる際に不足を確認・補充すれば持ち帰らなくてよいなどの工夫例が掲載されています。ただし、置き勉をはじめ児童の携行品を具体的にどう工夫するかは学校に任せられており、取り組みには差があります。置き勉を認めることにより学校側の管理負担が増えるのは確かですから、実施について疑問や不満がある場合は、クレームではなく相談という形で話をしてみるとよいかもしれません。
小学校卒業後も、中学校・高校と重い荷物の負担は増すばかりです。ランドセルの軽量化には限界があるでしょうし、荷物を軽くする方法は、これからも考えていきたい問題です。
また、お子さんによっては、忘れ物をする不安や時間割を揃える面倒くささから、必要のない教科書やノートまで持ち歩いていることがあります。特に低学年のお子さんの場合は、一人で支度をするようになっても、たまに声をかけてあげるといいでしょう。
注目される、ランドセル以外の選択肢「通学用リュック」
今は、通学に軽くて丈夫なリュックを推奨する自治体や小学校も増えてきています。たとえば、京都府を中心に大阪府や滋賀県などの小学校で使われているのは、京都府の学生用品店マルヤスが製造している「ランリック(R)(ランリュック(R))」というリュックです。ナイロン製で重さは約700g、価格は1万円程度、コンセプトは「健康と安全」です。
また、北海道小樽市で使用されている「ナップランド」、奈良にある学校指定カバンを作っているメーカーが開発した「ダイワホーサン」なども、通学用リュックとして人気を集めています。
■新しい形のスクールバック「NuLAND(ニューランド)」
またこの春、「ママたちが望む、時代に合った新しいスクールバック」として「NuLAND(ニューランド)」が発売されました。860gと軽いだけでなく、伊藤忠商事が展開する循環型素材ブランド「RENU(R)(レニュー)」のリサイクルポリエステルを採用した、子どもたちの身体と環境のことを考えた通学カバンです(重さについては、部材の変更などにより、多少前後する場合があります)。
ランドセルの使用は義務ではない!?
学校で指定されている場合を除き、ランドセルの使用は義務ではないことがほとんどです。しかし、入学前の学校説明会の資料に持ち物としてランドセルと書かれているなど、その使用は慣習となっています。保護者としても特に疑問を持たずランドセルを選ぶのは、ごく自然なことといえるでしょう。そんな中、2018年7月に滋賀県野洲市では「学校指定のランリュックにしてもらえると、経済的にもありがたい」という保護者からの意見について、「通学用カバンについては、負担軽減と合理性の観点から、各小学校においてPTAで協議しお決めいただくことが望ましい」と回答しています(※4)。
全ての自治体に当てはめられるわけではないかもしれませんが、このように、保護者の意見を表明することで、ランドセルを使うかどうかを決められる可能性はあるということです。
ランドセルや荷物の重さだけでなく、マスク着用が避けられない中での暑さや台風など、登下校時の子どもの身体の負担は計り知れません。ランドセルの選び方・背負い方などを見直しながら、また別の通学用カバンを選ぶ自由について、社会全体で考えていってもよいタイミングなのではないでしょうか。
※1:ママタスlaboアンケート「子どものランドセルと教科書、いまどうなっている⁉」
※2:森由紀ほか(1999)「小学生の学習用具の携行方法と負荷について」『日本家政学会誌』50(9), 949-958.
※3:文部科学省「児童生徒の携行品に係る配慮について」
※4:滋賀県野洲市長へのご意見・ご提案「小学校のランドセル」について回答
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