定年後は、妻の加給年金を合わせて住民税非課税世帯でいきたいと思っています

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、50歳で子どもが生まれたが、定年後にかかる教育費は、住民税非課税世帯とし高等教育の無償化などの制度を利用する予定という58歳の会社員男性です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください。(相談はすべて無料になります)

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教育費は無償化制度を利用したいと思います

教育費は無償化制度を利用したいと思います




■相談者
きりぎりすさん
男性/会社員/58歳
東海/持ち家(マンション)
 
■家族構成
妻(50歳)、第1子(8歳)
 
■相談内容(原文ママ)
50歳のときに子宝に恵まれました。60歳で定年を迎え、退職金は100万円しかありません。以降、夫婦で100万円は確実に稼げますが、これと繰り上げでもらう年金手取り115万円でやっていけますでしょうか。家内が65歳になれば、約80万円の年金があります。加給年金を合わせて住民税非課税世帯でいきたいと思っています。教育は無償化を利用する予定です。塾は特に必要ありません。車はいつでも手放せます。何かのときはマンションを売って(手取り1000万円ぐらい)、市営住宅(非課税世帯で、月4万円)に住むことも考えています。
 
■家計収支データ
相談者「きりぎりす」さんの家計収支データ

相談者「きりぎりす」さんの家計収支データ



 
■家計収支データ補足
(1)収入について
家内は結婚以来、専業主婦です。私は退職後、同じ会社でアルバイトとして70歳まで働く予定です。年100万円ほどの手取りとなります。
 
(2)家計収支について
収支の差額の月2万8000円のうち、年10万円が固定資産税。残りで旅行です。コロナで身動きが取れず、給付された30万円とともに貯金にまわっています。
 
(3)住居費について
毎月1万5000円の住居費は、マンションの管理費や修繕積立金で、住宅ローンはありません。現金で購入しました。
 
(4)車両費について
現金で購入しました。軽自動車。駐車場7000円、ガソリン代1万円。保険と税で月割3000円。
 
(5)食費について
毎月7万円の食費は、外食費や交際費も含めての金額。
 
(6)保険について
保険は生まれて以来、一度も入ったことがありません。車の保険に特約で、子どもの自転車事故などの賠償責任をつけています。
 
(7)公的年金について
年金手帳で年165万円だったと思います。法改正で繰り上げは年125万円になりますか。繰り上げを希望するのは80歳までには他界する自信があることと、それ以上生きるなら、たいしてお金は必要ないし、介護が必要となるなら他界しようと思うからです。
 
したがって、在職でも年金は繰り上げたいと思います。実は会社からは、正社員として現在の給与のまま65歳までとありがたいお言葉をいただいています。私としては70歳くらいまでが健康で頭もはっきりしている状態との前提のもと、10年くらいは家族と多くの時間を過ごし、子と語らい、その成長になるべく多くの軌跡を残したいと思っています。
 
そのためにどのぐらい収入を削れるかが知りたいところです。65歳まで年収と勤務日数は調整可能ではあります。よく夫婦共働きなら1億円くらい収入増と耳にしますが、本当にここで人が暮らしているのかと友人が驚くくらい家を毎日磨き上げ、子の情操教育とバランスの良い食事を作ってくれる専業主婦の価値は私個人としては億程度では比較になりません。
 
■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 教育費はゼロにはならず、貯蓄の半分は教育関連費に
アドバイス2 収入の範囲に支出が収まらないと、貯蓄からの取り崩しが進む
アドバイス3 子どものために収入を確保し、教育に必要な貯蓄をすることも親の義務
 

アドバイス1 教育費はゼロにはならず、貯蓄の半分は教育関連費に

ご相談者は確固たる信念をお持ちのようですが、お子さんの進路についてだけは気がかりです。
 
高等教育の無償化は、経済的な理由で子どもが進学をあきらめることなく、学びの機会をなくさないために設けられた制度です。この制度を利用できるのであれば、それもひとつの考え方です。ただ、教育費が無償になるのは、入学金、授業料であり、それ以外にかかる学校教育費、学校外費は対象外です。
 
中学校まではある程度、家計の中から支出できるとして、公立の中学でも学校教育費や給食費などがかかり、3年間でおよそ40万~50万円かかります。高校は入学金、授業料は無料だとしても、入学準備費用、学校教育費(実習費、補助教材費、修学旅行費、通学費など)で、年間25万円程度、3年間で75万~80万円はかかります。
 
さらに、大学に進学するとなると、入学金や学費は無償化を利用し、それ以外の費用は給付型の奨学金に頼ることも考えられますが、そのいずれも利用できなかったときは、子どもに進学をあきらめさせるのでしょうか。
 
教育に多額のお金をかけることがいいわけではありませんが、子どもに我慢を強いることになっても仕方ないではすまないように思います。貯蓄がゼロなわけではないのですから、現在の貯蓄の半分は、子どもの教育に使ってもいいのではないでしょうか。最終的な判断は、お子さんが成長していく中で、お子さん自身が決めることだと思います。
 

アドバイス2 収入の範囲に支出が収まらないと、貯蓄からの取り崩しが進む

さて、60歳で定年退職し、その後、どの程度、働けばいいのか、ということですが、仮に、相談文に書かれているように、年間100万円の収入に、年金の繰り上げで115万円、合計215万円とすると、現在の支出は22万2000円ですから、年間で約266万円。約50万円の赤字です。これに固定資産税や車関連費など年間での支出を考慮すると年間70万円ぐらいは貯蓄から取り崩すことになります。60歳から65歳までの5年間で350万円のマイナスです。
 
65歳になると、確かに加給年金と特別加算があり、年金は60万円ほど増額になるでしょう。それでも年間の不足額は10万円ほどあり、妻の年金受給までの8年間も、貯蓄の取り崩しが続きます。
 
妻の年金受給が始まれば、加給年金はなくなり、世帯年収は195万円。不足額は再び増えて年間80万円程度となります。これが生涯続くわけですが、子どもの教育に貯蓄を使わなかったとしても、60歳時点での貯蓄1600万円は妻が65歳の時点で1170万円に。年間80万円の不足が続けば、15年ほどで貯蓄は底をつきます。
 
お子さんは、そのころには成人していますから、自立して一人で生きていくとしても、ご自身は長生きするつもりがないとしたら、奥さまはその後、どのような生活を送るのでしょうか。
 
貯蓄の取り崩しを最小限に抑えるためには、収入を増やすか、収入の範囲で生活するかしかありません。食費や小遣いを削るのか、お金の使い方を見直す必要があるでしょう。
 

アドバイス3 子どものために収入を確保し、教育に必要な貯蓄をすることも親の義務

高等教育の無償化については、住民税非課税世帯か、それと同等の世帯が対象となります。さらに金融資産にも条件(1200万円未満など)があり、ご相談者のケースでは、そもそも該当しない可能性もあります。住民税非課税世帯になる収入の目安は自治体によって異なりますが、およそ220万円未満とすると、加給年金を得る65歳の時の収入はそれよりも多くなるのではないでしょうか。
 
住民税非課税世帯になるために働くのをやめて、支出を減らして生活をする、という方法もありますが、年収条件が外れても、学費の3分の1は負担し、収入を増やして少しでも貯蓄をしていく、という考え方もあるのではないでしょうか。お子さんが高校、大学に進学するときに判断すればいいと考えていても、働いて収入を得られるのは、今しかないのです。
 
お子さんと過ごす時間は大切です。でも65歳まで今の収入のまま働けられるのであれば働き、年金受給を65歳からにすることも柔軟に考えてみてください。現状維持であれば、65歳までに約250万円の貯蓄の上乗せができます。65歳から年金受給であれば、満額の165万円に100万円ほどの収入で265万円。家計収支はトントンで貯蓄の取り崩しは最小限で済むのです。
 
いずれにしましても、住民税非課税ありきではなく、お子さんの教育をどうするのか、そのための資金はどうするのか、しっかりと考えておかれてください。
 

相談者「きりぎりす」さんから寄せられた感想

やはり厳しい結果になりましたか。私は、耳の痛くなることを言ってくれる人こそ本当に信頼できる方と思っています。本物のプロにここまで真剣にアドバイス頂けて幸いでした。先生のアドバイスを参考に色々と考えてみようと思います。ありがとうございました。
 

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教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん  
  
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/伊藤加奈子


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