お金の悩みを解決!マネープランクリニック/50代以上の家庭のお金悩み相談

50歳パート主婦、住宅ローンの繰上返済に700万円出してもいいですか?(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、パートで働く50歳の主婦の方。貯蓄を住宅ローンの繰上返済に充てて完済したいが、コロナ禍の減収、今後の教育費を考えると不安とのこと。そもそも支出も多すぎではないかと考えている。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 条件付きで繰上返済による完済は可能

いくつかご質問があるので順に回答してきます。まず(1)の住宅ローンの繰上返済について。教育費が今後ピークを迎えるので迷っているとのこと。確かにそこが気掛かりかと思います。試算してみましょう。
 
仮に、今すぐに住宅ローンを繰上返済によって完済すると、ローン残高700万円ですから手持ち資金=貯蓄は残り約2000万円。教育費は、お子さん2人とも私立大学だとすれば、大学にかかる費用(入学金、4年分の授業料など)は文系で平均400万円、理系で540万円と開きがありますが、一応1人500万円とすると、2人で1000万円。また、長女の方が私立高校の可能性もあるとのことですから、その場合の教育資金として300万円を計上し、今後にかかる教育費を計1300万円とします。
 
結果、手持ち資金の残高は700万円となります。あと、おそらくご夫婦名義の低解約型終身保険は教育資金づくりを目的に加入されたと思われますので、この解約返戻金が200万円とすれば、先の残高は900万円となります。ただし、この数字は、今後の貯蓄による上積み分は考慮していません。逆に言えば、家計赤字が続けば、この残高そのものがもっと減ってしまうことも考えられます。
 
繰上返済後の家計ですが、ローンの支払い分7万4000円がなくなりますから、毎月の支出は42万4000円。家計赤字はほぼ解消できたと言えます。
 
そうなると、今後の貯蓄はボーナス頼みとなりますが、不安要素となるのがその減額。仮に、次のボーナスが前回と同程度の減額であれば、貯蓄は難しいかもしれません。したがって、教育費を確保した上での繰上返済は可能だと考えますが、家計防衛という観点からも「家計支出を見直す」という条件付きとなります。
 

アドバイス2 予算制にして半ば強引に管理していく

その家計ですが、印象として支出は総じて高め。それはつまり、それだけ見直しの余地があるということです。何を削減するかは個々に異なります。その世帯にとって優先順位の低い費目、削減しやすい費目から手をつけることが継続的な節約につながります。
 
それでも、これは(3)のご質問に関連しますが、ミカンさんが言われるように食費が目立って高いことは確かですし、結果的に見直しやすい部分になるでしょう。何が原因で高いかがつかめないなら、とりあえず最初は、予算を決めて半ば強制的に管理していく方法がいいのでは。例えば「月7万円」あるいは「週1万5000円」と決めて、その範囲でやりくりする。それだけで、月2万円以上節約できます。水道光熱費の予算設定は難しいですが、雑費などもできるはず。そのことで、ときに我慢も必要となりますが、創意工夫で乗り切ってください。
 
保険も当然、見直し対象となります。固定支出ですので一度見直せば、ずっとコストは抑えられる点でも効率的です。具体的には、ご主人名義の終身保険2本は、現状を考えれば必要性は低いと言えます。払済保険でいいと思います。

(2)のご質問の回答にもなると思いますが、払済保険によって今まで支払った保険料分の保障は残りますし、現預金もあります。教育費は十分確保できているので、現状を考えれば、あえて死亡保障を確保するより、現金を増やすことを優先すべきでしょう。

どうしても不安なら、医療保険を解約して共済で医療保障と死亡保障を確保してもいいでしょう。保険料はほぼ変わらないはずです。
 

アドバイス3 妻の収入アップは有効な老後対策

家計の見直しで、月5万円の黒字を目指してほしいと思います。最初はきびしいかもしれませんが、徐々に目標に近づけてください。
 
月5万円貯蓄に回れば、年間60万円。定年までの10年間で600万円。また、毎月計上している教育費ですが、先の試算で長女の方については高校からの予算も織り込んでいますから、5年後にはほぼ負担がなくなります。浮いた教育費をそのまま貯蓄に回せば、途中、児童手当の支給がなくなるものの、それでもさらに400万円程度は貯蓄が可能。それだけで、計算上、ご主人が定年までに1000万円の貯蓄が上乗せできます。これに教育資金等を差し引いた現預金の900万円を加算すると1900万円。これが老後資金となりますが、実際にはボーナスが元の支給額に戻ることも考えられますし、退職金制度もあれば、さらに老後資金は増えます。
 
これで老後資金が足りるかどうかはわかりません。考え方としては、生活資金に対して公的年金の不足分を補うのが老後資金ですから、毎月3万円不足なら、65歳から30年間で1080万円。5万円なら1800万円。また、生活費とは別に、住宅のリフォーム費用やクルマの買い替えは定年前から発生します。医療費や介護費用への備えも必要でしょう。そう考えれば、今後の貯蓄がいかに大切かがわかるはずです。
 
対策としては、ご夫婦とも65歳までは働くこと。結果的に、老後資金を増やすことにつながります。また、ご相談の(4)にあるように、ミカンさんが収入アップとなることも、有効な老後対策です。可能なら目指してほしいと思います。
 
ともあれ、住宅ローンの残高が大きくないことと、まとまった預貯金があることが、教育資金を確保した上での繰上返済を可能にしています。とは言え、不透明な世の中ですから、これを機会に家計を見直し、ご家族で協力しながら、減収の中でも貯蓄体質を目指してください。
 

相談者「ミカン」さんから寄せられた感想

この度はご相談に乗っていただき、ありがとうございました。住宅ローン返済をどうすべきか一番悩んでいたので、プロの方のご意見をうかがえて大変参考になりました。また、支出の多さをご指摘いただき、今後の教育費や老後資金など具体的に示していただいたので、このままではいけないと一層の危機感を持ちました。先生からの改善策を実践して、家族の将来のため、この不安定な時代を乗り切っていくため、頑張っていきたいと思います。本当にありがとうございました。

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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武



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