「嫁に行け」という親に憎悪を感じる……

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結婚しないと決めているわけではないが、どうしても結婚したいというわけでもない。そんな女性は多いのではないだろうか。ところが昔ながらの価値観をもつ親は、「早く嫁に行け」とうるさい。別居したいが経済的にできず、ストレスがたまるばかり。追いつめられていく女性はどうしたらいいのだろうか。

 

両親と3人暮らし。家に帰りたくない理由

コロナの影響で派遣の仕事が打ち切られ、アルバイトをしている都内在住のミナコさん(33歳)。4歳年上の姉はすでに結婚し、今は両親との3人暮らしだ。

「父も先日、定年後に働いていた会社から雇い止めにあいまして。今は母がパートで、私がアルバイトで働いている状態です。食べていくだけならなんとかなるという程度の暮らし方ですね」

専門学校を出て就職したものの、人間関係に疲れて仕事を辞めたのが25歳のとき。そのころから両親は「早く嫁に行け」と毎日のように言っていたという。

「姉が26歳で結婚したんですよ。だから私もせめてそのくらいで結婚しろ、と。精神的にも疲弊していた時期ですから、私は心療内科で診断書を書いてもらって親に見せました。それでようやく少し黙ってくれたという感じ」

ミナコさんにとっては、人生においてそれほど結婚が重要だとは思えなかった。実際、姉は結婚生活で夫とうまくいかないと年中、愚痴っている。だが母親は「そんなものよ、いつかなにごともなかったと思えるようになる」と言うばかり。姉の愚痴をずっと聞かされてきたミナコさんは、ますます結婚したいと思えなくなっている。

「2年ほど休んで、27歳のときから派遣社員として働いてきました。専門性のある仕事だったので、収入もそれほど悪くなかった。ところがこのコロナ禍で仕事を失い、新たな仕事も見つからない。それでしかたなく、アルバイトをかけ持ちしているんです」

慣れないファミレスと近所の居酒屋でのバイトだが、それでも顔なじみのお客さんができたりして、なんとかやってきた。家に帰りたくなくて、ネットカフェなどに泊まることもある。

 

私は“売れ残り”のみじめな娘?

だが両親からみると、そんなミナコさんが歯がゆいらしい。

「しっかりした仕事をもった人と結婚していれば、こんなことにならなかったのに」

「あんた、自分がみじめだと思わないの?」

父も母も、そういう言葉をぶつけてくる。

「結婚さえしていれば人は幸せなの?」「結婚は人生の目的じゃない」と抵抗してきたミナコさんだが、もう親と争うのにも疲れたという。

「ときどき、両親なんていなければいいと思う自分がいて怖くなるんです。もう顔を見るのもイヤで、最近はネットカフェに泊まる日も多くなりました。それでも帰ると、『いい男でも見つけてきた?』と言われる。もう、さっさと出ていけということなんでしょうね。だけど私はバイト代の半分以上を家に入れているんですよ」

親から見ると、「売れ残りの娘がいるのは世間体が悪い」ということらしいが、今どき、そういう価値観も珍しいのではないだろうか。

「女は結婚するもの。男に頼って生きていくもの。そう思い込んでいて、他の価値観を受け入れないんです。ときどき、私の中に両親への憎悪がわき起こってきます」

ミナコさんとしては、本来の仕事で正社員として再就職するのが今の希望だ。そのためにスキルアップしようと独学で勉強も続けている。

つい先日、33歳の誕生日を迎えたのだが、両親からはおめでとうとも言われなかった。それどころか、「子どもを産めるリミットが近づいているんじゃないの」という心ない言葉を投げつけられた。

「母は、『私はあなたのことを心配してるの』と口では言いますが、まったく気持ちが伝わってこない。このあたりは都内でも昔から住んでいる人が多いので、わりと近所のことが筒抜けなんですよね。だからこんな娘がいるのが恥ずかしいのかもしれません」

30代独身は男女問わずいくらでもいる。親は価値観を変えないと、ひたすら子どもが生きづらくなっていくだけだ。

「ひとり暮らしができればいいんですが、なかなか経済的にむずかしくて。今、シェアハウスを探しています。ただ、私は人間関係がそれほど器用ではないので、シェアハウスに住めるかどうか……。もう八方塞がりになっていますね。とにかく親とは接触しないよう、今は食事も自室でとっています。それが私の心を守る唯一の方法だから」

どうにもならない重い気持ちを抱えて日々を送るミナコさん。話を聞けば聞くほどせつない気持ちになっていく。
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