ヒスタミン食中毒とは……魚アレルギーがなくても起こる蕁麻疹やかゆみ
魚アレルギーではないのに、魚を食べた後でかゆみや蕁麻疹の症状……それはヒスタミン食中毒かもしれません
2013年10月、大手の缶詰会社が製造・販売するシーチキン缶にヒスタミン量が多いとして、672万個を自主回収したことがありました。保育園の給食での食中毒の原因になったとしてヒスタミン食中毒が注目されたこともあります。そもそもヒスタミン食中毒とは何なのでしょうか?
ヒスタミン食中毒の原因……マグロ、ブリ、サンマ、サバ、イワシなどの赤身魚
ヒスタミン食中毒はその名の通りヒスタミンが原因で起こります。そもそもヒスタミンは「ヒスチジン」というアミノ酸から生体内で合成されるもので、「ヒスチジン由来のアミン」ということでヒスタミンと命名されています。ヒスタミンは体内に存在するもので、マスト細胞と呼ばれる白血球、肺、肝臓、脳にも存在しています。体にとって必要な作用を持っており、本来、体にとって必要なヒスタミンもあるわけです。ところが外から大量にヒスタミンが体内に入ってしまうと中毒症状を起こします。これがヒスタミン中毒です。では、どのようにして大量のヒスタミンが身体に入ってしまうのでしょうか?
ヒスタミンは、食品中に含まれるヒスチジンというアミノ酸に、食品に付着した腸内細菌であるMorganella morganii、Klebsiella oxytocaなどのヒスタミン産生菌の酵素が作用し、変換されることにより食品内で生成されます。そのためヒスタミン中毒はヒスチジンの多い魚が原因で引き起こされることが多いです。ヒスチジンを多く含む魚は主に赤身魚で、マグロ、ブリ、サンマ、サバ、イワシなどです。これらの魚、または加工品が原因になります。これらの魚や加工品を常温で放置するなど、不適切な管理をすることで、食品中のヒスタミン産生菌が増殖し、ヒスタミンがより生成されることになり、食品中のヒスタミンの量が多くなります。ヒスタミンは熱に安定であり、また調理加工工程で除去できないので、ヒスタミンを調理で除くことは難しいといえます。ワインやチーズなどの発酵食品にもヒスタミンが含まれていることがあります。
魚種別ヒスチジン含有量(消費者庁サイトより)
ヒスタミン食中毒の症状……ピリピリ感、腫れ、頭痛、蕁麻疹、かゆみなど
ヒスタミンを食べた直後から口、舌、のどのピリピリした感覚が起こり、1時間以内に、顔面、特に口の周りや耳たぶが赤く腫れて、頭痛、じんましん、かゆみ、発熱などの症状が見られます。アナフィラキシーのような症状は少なく、重症になりにくいのが特徴です。通常は6~10時間後には症状は消失します。一般に食品100gあたり100mg以上のヒスタミンで発症するといわれていますが、実際には発症する摂取量の目安をはっきりと示すのは難しいところで、成人では22~320mgで発症していると報告されています。
ヒスタミン食中毒の受診の目安・治療法……稀に緊急性のあるものも
ヒスタミン食中毒は自然に治まりますが、症状は数時間続きます。抗ヒスタミン薬を内服、点滴することで症状は早く軽減します。痒みがひどいとき、全身に蕁麻疹が出たとき、頭痛、発熱が強いときなどは、症状軽減のために医療機関を受診したほうがいいでしょう。また、気管支喘息などのアレルギー疾患がある場合は、アレルギー疾患が悪化する可能性があります。この場合も医療機関を受診したほうがいいでしょう。もし喘息発作が起こって呼吸困難がある場合は、緊急性がありますので、迷わずすぐに受診してください。ヒスタミン食中毒は予防が肝心! 違和感を無視せずに食中毒防止を
ヒスタミン食中毒は予防が重要です。魚を購入した際は、魚にいるヒスタミン産生菌によって魚に含まれるヒスチジンからヒスタミンを増やさないためにも常温で放置せず、速やかに冷蔵庫で保管するようにしましょう。また、自分で釣った魚でも、速やかにクーラーボックスに入れるようにします。ヒスタミン産生菌はエラや消化管に多く存在するので、魚のエラや内臓はできるだけ早く除きます。鮮度が低下したおそれのある魚は食べないようにします。ヒスタミンを高濃度に含む食品の場合、口に入れた時点で、唇や舌先、のどにいつもと違うピリピリした感覚が起こることがあります。普段と違うと感じたら、食べずに処分した方がよいでしょう。
■参考
- ヒスタミン食中毒(消費者庁)