「あだ名禁止」は、いじめ防止対策推進法に対する取り組み

あだ名は集団の状況に影響される

あだ名の問題は、学級の社会性の問題

2013年に成立した「いじめ防止対策推進法」の具体的な取り組みとして、「あだ名禁止」の対応を取る学校が増えています。あだ名がきっかけによる集団のトラブルをなくすために、禁止とするやり方です。

この「いじめ防止対策推進法」は、2011年に起きた「大津市 中2いじめ自殺事件」がきっかけとなり、2013年に議員立法によって成立しました。いじめへの対応と予防に関して、学校や行政の責任などを規定しているものです。

私は公立小学校の学級担任として20年以上勤めてきましたが、この対応に関しては良い面もあれば、悪い面もあると感じています。あだ名で呼ぶ、呼ばないという議論だけでなく、いじめとも関係する「学級の問題」として考える必要があるでしょう。
 

人間関係や言葉遣いにも影響する、あだ名禁止の良い面

あだ名に関しては、年齢や属している集団によっても状況が色々と違ってきます。例えば、アメリカではニックネームで呼び合うことがよくあります。私(鈴木邦明)が自己紹介をする場合、”Please call me, KUNI.”というように言うのは、親しみを込めて互いを呼び合うものです。Mr.SuzukiよりもKUNIの方が、色々な関係がうまくいきそうです。

学校においては「あだ名禁止」とセットで、互いの名前を呼ぶときに男女とも「さん付け」をルールとするところが多くなっています。小さなことのようですが、このように形から入ることはクラスの状態にも随分と大きな変化を生みます。

例えば、担任である私がある生徒に片付けるよう注意しようとしたとき、さん付けの場合は「〇〇さん、片付けてください」と言うことになるでしょう。しかし、呼び捨ての場合は「〇〇、早く片付けて」「〇〇、早く片付けろ!」というような言い方になりがちです。「さん付け」には、言葉使いが丁寧になる効果があるでしょう。

古くから続く武道などにおいても見られるこのような効果ですが、まずは形から入ってみるだけでも、変化が生じ、それが習慣化するということがあるのです。
 

根本の問題は解決しない、あだ名禁止の問題点

一方で「あだ名禁止」や「さん付け」は表面的な対応であり、形だけではあまり意味がないという考え方もあります。確かに、いじめがあるような学級においては、いくら「あだ名禁止」や「さん付け」をしたとしても、違う形で意地の悪い行為が行われてしまいます。

あだ名に関する問題は、その根本に集団の関係性が大きく関係しています。単にルールで縛るだけでなく、全体的な指導やケアが必要となります。

例えば、特別活動の授業の一環として、「あだ名をつけることによる良い点、悪い点はどのようなものなのだろう?」とクラスで話し合うこともよいでしょう。あだ名で呼ぶことによって、親しみを感じることができるという面、反対に嫌な思いをする子どもが出る可能性があることも話題になってくるでしょう。明確な結論が出る場合もあれば、出ない場合があるのですが、話し合い自体にとても意味があります。

「あだ名」の良し悪しについては色々な考え方がありますが、子ども達が話し合う中で、人との関わり方や言葉使いなどについて考えたり、感じたりすることが大切です。○×で分けられるものではないですし、九九のように何かを覚えれば良いものではありません。あだ名に関わらず他の人との関わり方については、子ども自身の経験や学校や家庭における指導など色々な出来事の中で少しずつ考えを作り上げていくものです。
 

あだ名の問題は、根本にある学級の社会性の解決から

あだ名の問題は、その根本にある学級の社会性の問題をより良いものに解決していくことがまず大切です。

私はもともと小学校の教員をしており、現在は大学で教員養成・保育者養成に携わっています。その研究テーマの1つが「運動遊び」であり、その中でも特に「鬼ごっこ」に着目しての子どもの育ちへの影響を研究しています。

鬼ごっこは体力向上の効果もあるのですが、社会性の育成にもよいとされています。ただどんな学級でも社会性の育成ができると言う訳ではありません。例えば、いじめが日常的に起こっている集団が鬼ごっこしても、混乱状態になりがちです。強く殴るような感じでタッチをしたり、一人狙いや仲間外れなどが起こったりします。その学級の普段の様子がそのまま表われ、混乱した悲惨な状況となってしまうのです。

このような学級の意識を「相手をいたわり」「仲間を大事にする」ようにしていくことが、あだ名の問題を含む学級の社会性の解決につながっていくのだと思います。
 

あだ名で嫌な思いをしていないか、家庭でのフォローも大切

あだ名は集団の状況に影響される

あだ名に関して家庭でできるフォローとは?

あだ名だけではありませんが、家庭において子どもの様子を普段からよく見ていることが大切です。何だか元気がないように感じたときには「何かあった?」と聞いてあげるとよいでしょう。

その際、困っていることを言ってくれれば、それを聞いてあげればよいのですが、年齢やその子の性格によってはそうもいかない場合があります。少し難しいのが「別に」「大丈夫」などの反応のときです。

このような場合は、同級生の親などに様子を聞いてみるとよいでしょう。同級生の子どもに、自分の子が最近クラスで困っていることはないか、それとなく聞いてもらうのです。

同級生の親との関係はべったりである必要はないと思いますが、緊急時に頼ることができるような関係の人が少しはいた方がよいでしょう。もし困っていることがあれば、聞き出すことができる場合も多く、担任へ相談したり、本人へアドバイスすることにつながります。


あだ名に関することは、一見小さなことのように感じます。ただ、あだ名によって嫌な思いをしている子どもにとっては「生活の質」を左右するような大きなことです。周りの大人が状況に応じて適切に関わってあげることが大切でしょう。

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