「お」を付けていい言葉、付けるとおかしな言葉
お飲み物、おビール、お酒、おジュース…… 「お」を付けていい言葉、付けるとおかしな言葉とは
「お話」「お手紙」「お茶」「お椀」「おネギ」「おビール」……など、「お」の付く言葉を使ったり、耳したりすることは案外多いものです。しかし、ときにはこの言葉「お」を付けてもいいのだろうか?間違いなのでは?と迷ったりすることもあるのではないでしょうか。
日常よく使う「お」の付く言葉と付けるとおかしな言葉のいろいろを見てみましょう。
「お」の種類のいろいろ
「お」とそれから「ご」もそうですが、まず「お・ご」には、いろいろな種類があります。ここでは、「お」のみを例にあげてみます。■尊敬語
「その件は鈴木さんがお話くださるそうです」のような場合の「お話くださる」は、尊敬語としての用法・意味をもちます。話をする人物(鈴木さん)を高める意味をもつ正しい使い方です。
■謙譲語
「昨日先生にお手紙を差し上げた」の「お手紙差し上げた」は、謙譲語の用法・意味をもちます。向かう先の人物(先生)を高める意味をもつ正しい使い方です。
■丁寧語・美化語
「だいぶお寒くなりましたね」などの「お寒い」は、丁寧語にあたります。
また、丁寧語と似ていますが、「お茶とお菓子」などは、言葉の種類や働きとしては美化語と呼ばれるものです。美化語とは文字通り言葉を美化して述べるものです。
このように、日常何気なく使っている「お○○」という「お」の付く言葉は、さまざまな意味で使われているものです。
先ほどの「お話」などひとつの言葉でも、「お話くださる」は「~てくれる」の尊敬語ですが、「お話いただく」とすると「~てもらう」の謙譲語になります。ですから、同じ言葉でもいろいろな使われ方をすることがわかります。
さてここで、付けてもいいのか迷ったり、付けすぎて過剰な印象をもたれてしまったりする「お」の付く言葉にはどのようなものがあるか考えてみましょう。これは尊敬語や謙譲語の意味をもって使う例より、恐らく美化語のような例ではないかと思います。
言葉を上品にする、美化語としての「お」のいろいろ
美化語とはもっとわかりやすく言いますと、言葉を上品にきれいに述べるものです。使い方には個人差や男女差もありさまざまです。「お」が付くか付かないかはある程度の決まりがあるものもあれば、常識的に見ておかしくないものなど、習慣性による部分も大きいでしょう。■「お」が付くことで言葉として成り立つもの
例:おでん、おかず、おこわ、おしゃべり、お辞儀……など
これらは、「お」が付くことでひとつの言葉として成り立ち、「お」を取ってしまうと言葉として成り立たないわけですから、通常「お○○」と「お」といっしょに使われるものです。
■「お」を取ってしまうと別の意味の言葉に変わってしまうもの
例:おしゃれ、おはじき、おしぼり、おにぎり、おむすび……など
これらは、「お」を取ると言葉として成り立たないのではなく、別の意味の言葉になってしまう例ですね。
■個人差や男女差も恐らくあまりなく「お」を付ける人が多いと思われるもの
例:お茶、お椀、お寺、お宮、お札(ふだ)、お金……など
これらは一般的に「お」が付けて用いられます。「お茶」などは、「茶を飲む」と言えなくはありませんが、男性でも「お茶」のほうが言いやすいのではないかと感じます。また、「お金」や「お祝い」などの金銭に関するもの、「お寺」「お宮」「お墓」「お札(ふだ)」「お賽銭」など神仏に関するあがめるべきものには、男女問わず「お」を付けて用いることが多いものです。
このように美化語として付ける「お」にもいろいろありますが、付けるとおかしな言葉に響いたり、過剰な言葉になったりしかねないものとしては、男女差や個人差がある場合ではないかと感じます。たとえば、食べ物などに付ける「お」は多いものですが、言葉によっては自然なものと不自然なものがあります。
外来語には一般的に付けない、「お」付けるとおかしな言葉
おにんじん、おほうれん草などは不自然
先の「お茶」のように短い言葉には付きやすいこともありますから、その意味では「おねぎ」あたりは聞くこともあり使う人がいてもわかりますが、おにんじんやおごぼう、おほうれん草などは不自然ですね。
また外来語・カタカナの語には通常「お」は付けません。ですから、同じ飲みものでも「お飲みもの」「お酒」とは言っても「おジュース」とは言いませんね。「おビール」は飲食店や接客の場などでは使われることはあるようですが、カタカナに付く例外としては「おビール」や「おソース」ぐらいではないかと思います。
「お」の過度な使用にも注意!
「今日のお献立は、お大根、お人参お野菜たっぷりのお料理」「お紅茶とお華お着物のお教室にお出かけのあとはお買い物」
「お絵描き」や「お歌のお稽古」などは、小さい子どもと話すような場面では用いられることもあり不自然ではありませんが、大人同士の会話では幼稚に聞こえてしまったり、例文のようにひとつの文章の中に「お」が付く言葉をたくさん使うと過剰な耳障りな言葉に響いてしまうことも多いものです。
きれいに丁寧に話そうとする気持ち自体は悪いことではありませんが、言葉のバランスや響きも大切な要素です。そのような点からも「お」の過剰使用には注意して、適度な自然な使い方を心がけたいですね。
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