withコロナはbeforeコロナと何が違うのか~中途採用の場合
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非常事態宣言が出された4月直後は、さすがに転職活動を控える動きが見られ、企業もいったん採用活動を見合わせたケースもあった。ただし、中途採用は増員需要よりも、実務経験のある社員の退職に伴う補充が中心であるため、もし企業が採用活動を控えた場合、職場の現場へのしわ寄せが即座に現れる。
つまり、過去に起きたリーマンショック並の大きな衝撃が起きない限り、中途採用に急ブレーキがかかることはない。今回withコロナでよく聞くようになったのは、定年退職する社員の補充を控えたケースである。ただし、これはbeforeコロナの時代であっても見られた現象である。
人事の視点、人材エージェントの視点で見れば、コロナ禍にあっても企業の中途採用の需要は一部のコロナ禍が直撃した業界を除けば大きくは減らず、採用プロセスは多少慎重さを増して時間をかけた採用にはなっているが、あくまでも退職者(定年退職者は除く)の欠員補充の需要を中心に、転職市場はbeforeコロナと同様に活況な状態を保っているのである。
在宅勤務の広がりによって、多様な働き方が定着してきた
コロナ禍の影響は、求人案件の減少のように転職機会を削減させたことよりも、むしろ人々の自由度を奪って、文字通り身動きが取れなくなるような心理的な影響を与えた点で、そのネガティブな影響を過小評価してはならない。2020年に新入社員として入社した多くの若者たちが、4月から会社に出勤できなくて自宅待機を命じられて仕事へのモチベーションを下げたことのように、コロナ禍には多くの人の働く意欲を奪うだけのネガティブなインパクトがあった。
熱意をもって取り組んできたプロジェクトが止まり、国内外の出張もできず、仕事が滞った人も多かったはずだ。一方、テレワーク、リモートワーク、在宅勤務という言葉を毎日のように目にするようになり、多様な働き方の議論が一気に前進したことはプラス材料だった。
在宅勤務をする人が増えたおかげで、通勤時間帯の電車も、以前のような過剰な乗車率ではなく、ストレスが少ない移動手段となっている。副業を認める企業も増えてきた。週3勤務の正社員も出現している。オンライン会議が増え、会議の短縮化や回数削減にもつながっている。コロナ禍は憂鬱だが、長年議論してもなかなか前進しなかった多様な働き方が、この半年間で一気に進んだことは、コロナ禍の中だからこそ実現したといえるだろう。この点で、withコロナ、afterコロナの世界には期待できることも多い。
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