減少傾向の子ども数と高まる教育熱
各家庭には、「スポーツや芸術方面に秀でた能力を発揮させたい」「家業を継がせたい」など、それぞれの子どもの将来における目標や親の願いがさまざまあることと思います。しかし一般的には「できれば良い学校=偏差値の高い学校に行かせたい」という教育方針に落ち着くご家庭が多いのではないでしょうか。15歳未満の子どもの数は、39年間連続で減り続けて過去最少となっていますが(総務省統計局 人口推計 2020年)、習い事の種類は多種多様に増え、ほとんどの子どもが何らかの習い事に通っているのが現状です。このことからも、少子化と共に、一人の子どもにかける教育の熱は高まってきているといえるでしょう。
世間では、子どもが東大や医学部、偏差値の高い学校に合格した親の子育て手記が相変わらず人気を呼び、教育への関心の高さがうかがえますね。では、一般的には偏差値の高い学校に入れば、子育ては成功なのでしょうか。
受験の成功は親次第と高まるプレッシャーが、子どもを追い詰める
偏差値の高い学校へ注目が集まり、早くから難関校への入学を手に入れるため、受験の低年齢化も増してきています。そのような状況の中、小学校や中学校の受験は親の力次第であるともいわれてきています。親へのプレッシャーはますます高まり、過度な勉強を子どもに背負わせ、思うような結果が出ないと厳しく叱責し、精神的・肉体的にも苦痛を与える、いわゆる「教育虐待」という言葉も最近は耳にします。
「子どものために」という気持ちが、反対に不幸にしてしまうようなことがあれば、子どもだけでなく親にとっても、これほど悲しく、辛いことはないでしょう。
教育は、子どもが自立し社会へ羽ばたくための準備
子どもは学校を卒業すると、やがては社会へ飛び立ちます。子育ての目標は、人それぞれ、各家庭によって異なることでしょう。しかし共通していえるのは、子どもを経済的にも精神的にも自立させ、社会に羽ばたかせることです。そのときの準備として学習やしつけを身につけ、その過程として、学校選びや受験勉強があるのです。子どもの人生の目標が志望校合格にあるかのように親は見誤らず、将来について関わり教育に関してサポートしていくことが大切です。
興味あることや目標を話し合える親子関係を心がける
進学先の学校を決める際、目安とするものに「偏差値」がよく使われています。これは周りの全ての受験者の点数と自分の点数を比較することによって得られる数値です。例えば前回のテストが80点で、今回のテストが60点だった場合、点数は下がっていますが、難易度が違っていれば点数の比較はあまり意味のないことです。このときに偏差値を使えば、テストを受けた人の中で、自分はどの程度の位置にいるのか知ることができるというわけです。学校や塾の先生は、この偏差値をもとに生徒の受験校を決めることが多いでしょう。そして先生に勧められた学校を何となく志望校として決めてしまうというようなことはないでしょうか。
大切なことは、進みたい道、方向性をしっかり考えることです。子どもの興味関心はなんでしょうか――例えば、天体や空の様子、動物、植物、ロボット、人体や命など、また海外の暮らしに興味がある、文学作品を読むのが好き、お料理を作ることが得意、人のお世話をすることが好きなど……さまざまでしょう。子どもの興味関心の高いこと、自分がやりがいを感じることなどから、将来進みたい方向性を考えていくとよいでしょう。
親はそれらのことを意識し、日頃から会話の中で、子ども自身が目標や夢について話し合えるように、心がけておくとよいですね。
人生を成功に導く勉強親サポート5つのポイント
■1:目標や計画は親子一緒に決める学習の目標や計画を先走りして決めてしまう親がいます。人に決められたことに従うことは大人でもやる気が低下するでしょう。学習の目標やその計画は、子どもが主導で親はそのサポートに回り決めていきましょう。そうすることにより、立てた計画を達成する意欲が湧き、できなかったときの責任を人に委ねることなく、自分で負えるような性格が培われていくでしょう。
■2:期待を持ちすぎず、失敗も受け入れる
子どもの可能性を信じ、高い期待を持つことは悪いことではありません。しかし、あまりにも高い期待を持ちすぎると、子どもを潰しかねません。子どもは親が思っている以上に、親の気持ちや思いを敏感に察知しています。親の期待に沿えることを常に考え、もし応えられなかった場合、自分を否定することに繋がることも懸念されます。期待するのではなく、思いっきり挑戦できる環境を作り、その上で失敗したときも温かく受け入れるようにしましょう。
■3:「分かった!」「できた!」体験を褒める
親はどうしても子どものできていないことに目が行きがちです。それよりも、できていることを認めて褒めましょう。そして、子どもが「分かった!」「できた!」という体験をしたとき、親も共感し「スゴイね! こんなに難しいことが分かるようになったんだね」「この問題もできるのね、よく頑張ったね」と、できたことを褒めて子どもの喜びに寄り添いましょう。そうすることにより、さらに学習意欲は高まるでしょう。
■4:基礎問題を落としていたら、戻って学習する勇気を持つ
テストの結果は、点数のみに目を向けるのではなく、間違えている内容を見てください。基本的な問題、また周囲の多くの子どもが正解している問題を落としている場合、その単元の見直しが必要です。その際、その個所だけでなく、どのあたりからつまずいているのか調べ、さかのぼって学習し直しましょう。学習を過去に戻ってやりなおすことは、大変なことでとてもエネルギーが必要にもなります。しかし、ここで曖昧にやり過ごしてしまうと、後にさらに困難になってきます。親は、決して間違ったことを叱責するのではなく、戻って学習するサポートをしましょう。
■5:点数や順位に目を奪われず、勉強の本当の目標を明確に持つ
子どもの勉強をサポートしていると、ともすればテストの点数や順位に目を奪われがちです。もちろんそれらも大切ですが、あくまでも人生の過程であることを忘れないようにしましょう。それらは人生の目標に歩んでいる途中の目安のようなものと考えればよいでしょう。偏差値が落ち、期待した結果が出ないからといって、過度な勉強を強要したり、子どもが強い苦痛を感じ、潰れてしまうことがあっては本末転倒です。なぜ勉強をするのか、その目標をいつも明確にして、子どものサポートをしましょう。