銀杏(ぎんなん)……果実は臭いが、種は美味! 栄養豊富な秋の味覚
栄養が多く美味しい銀杏
独特の香り(香りというより「ニオイ」でしょうか)を持つオレンジ色の木の実は皮膚がかぶれることもあり、食用には向きません。実が柔らかいので、誤って踏んでしまうと靴に香りがついてしまい、しばらく恥ずかしい思いをすることもあります。ところが、この木の実に包まれた種は非常に美味です。公園や街中の街路樹にもイチョウの木は植えられているので、秋になるとこの銀杏を拾うのが楽しみだという人もいるかもしれませんね。
このように食用の銀杏は種の部分ですので、硬い殻に覆われていて強烈な香りの実を取り除いた後も一苦労が待っているのですが、そこまでしても食べたい美味しさは魅力だと思います。
<目次>
銀杏の栄養・効能……生には毒性。加熱した揚げ銀杏も食べ過ぎに注意
銀杏は同じ漢字で「イチョウ」とも読みますが、漢方薬としてよく用いられるのが「イチョウの葉」です。イチョウの葉は血流改善や認知症予防に効果があるといわれているようです。銀杏の種(食用の銀杏)は抗利尿作用があり、夜尿症対策に効果ありとされていますが、生ではメチルピリドキシンという毒性を持つため、少量のみ利用することとされています。当然ですが、食用にする場合も、メチルピリドキシンには注意が必要です。最近は、おつまみなどで「揚げ銀杏」も流行っているようです。加熱して毒性が完全に消えればいいのですが、残念ながら銀杏の毒性は加熱しても消えません。「揚げ銀杏」は美味しいですが、ほどほどにしておきましょうね。
小児に多い銀杏中毒とは……ビタミンB6欠乏症か? 嘔吐・呼吸困難などの症状も
銀杏の実を食べすぎると、嘔吐、下痢、呼吸困難、けいれんなどを起こすことがあるといわれています。これは「銀杏中毒」と呼ばれているものです。これも、上で触れた「メチルピリドキシン」が関係しています。とはいっても、メチルピリドキシン自体がこのような症状を引き起こすのではなく、この毒性がビタミンB6とよく似た構造を持っており、ビタミンB6の働きを阻害してしまうために、「ビタミンB6欠乏症」を起こして、上記のような症状をもたらすと考えられているようです。銀杏中毒は小児に多いといわれていますので、子どもに銀杏を食べさせる時には量に注意しましょう。年齢にもよりますが、1~2個までとし、子どもがもっと食べたがっても心を鬼にして量を食べさせないようにしましょう。
大人の銀杏の適量は6~7粒程度
銀杏1個は約3g程度で6kcal。銀杏中毒のことを考えると、大人でも6~7粒程度で止めておくと安心でしょう。7粒食べても42kcalと、カロリーの面では誤差範囲です。中毒症状に気をつけながら、美味しく召し上がってください。銀杏のおすすめの食べ方
■レンチン銀杏殻つきのまま紙封筒に入れてレンジで加熱。簡単でとても美味です。
■茶わん蒸し
メインではありませんが、底の方に入れるのがおすすめです。発見した時のうれしさと言ったら!
■銀杏の串焼き
居酒屋メニューとして見かけると、必ず頼んでしまいます。素焼きにして塩をかけてどうぞ。
■銀杏の天ぷら
自宅調理は破裂の危険がありますので、おすすめしません。天ぷら屋さんなどで注文すると、ホクホクのお芋のような味の銀杏の天ぷらをいただくことができます。
銀杏は注意さえすれば美味しく栄養が摂れる
黄色くて丸い見た目も非常にキュートで、お皿の中で映える銀杏。たくさん食べてしまうと中毒症状を起こす可能性もある食材ですので、特に小さな子どもさんがいるご家庭などでは食べるのが少し怖いと感じる人もいらっしゃるかと思います。しかし、やはり銀杏は美味しいです。秋の味覚の一つとして、上手に食卓に取り入れてください。よくある質問
Q. 栄養成分表による銀杏の栄養とカロリーは?
A. 銀杏(生)可食部100gあたりのカロリーは168kcal、炭水化物34.8g、カリウム710mg、β-カロテン290μgです。銀杏は1個3g程度ですので、3/100倍すると、1個当たりの栄養素量が計算できます。インターネット版『日本食品標準成分表 2020年版』には生の銀杏とゆでた銀杏のカロリーと栄養成分が記載されています。微量栄養素は若干違うところもありますが、加熱をしてもほぼ変わりません。
Q. 銀杏の栄養効果・効能は?
A. 東洋医学や民間療法では、銀杏にはせき止めや夜尿症の改善効果があるとして、古くから利用されていましたが、科学的なエビデンスはありません。銀杏は1個あたりわずか3g程度ということもあり、西洋医学ではさほどの効果は知られていません。
Q. 銀杏の薄皮にはどのような栄養がある?
A. 銀杏の薄皮の栄養については研究報告が見つかりません。基本的に薄皮は剥いてしまうので、一般的には食べないからでしょう。食べても重篤な健康被害はないでしょうが、パサパサして美味しくないため、おすすめはできません。
Q. 銀杏の食べ過ぎは危険? 避けるべき食べ合わせはある?
A. 銀杏は「メチルピリドキシン」という毒性物質を含むため、食べ過ぎには注意が必要です。特に小児は銀杏中毒を起こしやすいのでご注意ください。詳しくは「銀杏中毒にならない適量」記事で解説しています。銀杏と危険な食べ合わせはありません。アルコールとの食べ合わせが悪いという説もあるようですが、論文や官公庁発行物の中にはそういった報告はありません。
Q. 銀杏には妊婦に必要な栄養が入っている?
A. 残念ですが、特に妊娠中に取るべき栄養素が豊富に入っているわけではありません。
Q. 銀杏はカリウムやビタミンCは豊富? 糖質は多い? 分類は炭水化物?
A. 銀杏1個(3g)あたりのカリウムは21mg(目標量は男性3000mg/日、女性2600mg/日)、ビタミンCは0.69mg(1日当たりの推奨量100mg/日)です。エネルギー産生栄養素の中では、糖質が最も多く1.11gです。豆・種実類なので、炭水化物が多いのは間違いないありませんが、「分類される」という言い方は不自然かもしれません。炭水化物は糖質と食物繊維が合わさったものを指します。糖質が多いので、炭水化物も入っているという言い方はできます。
Q. 揚げ銀杏の栄養は?
A. 揚げ銀杏の栄養素については『日本食品標準成分表 2020年版』にも記載がありません。カルディの揚げぎんなんは33gで143kcal、たんぱく質2.7g、脂質4.6gなどと栄養素の記載があります。
Q. 銀杏は癌予防や治療に効果的?
A. 科学的なエビデンスはありません。論文や官公庁発行物などでの報告もありません。仮に効果があるとしても、銀杏には毒性があり大量には食べられないので、効果を発揮するほどの量を食べることは難しいと思います。
■参考
- イチョウ - 認知症予防と改善に葉のエキスを(漢方薬のきぐすり.com(イチョウ))
- 銀杏、イチョウ(家庭の中医学)
- 中毒に関する話題:ギンナンについて(日本中毒情報センター)
- 旬の食材百科(ぎんなん)
- 簡単栄養andカロリー計算(銀杏のカロリー)
- ぎんなんのカロリー概要(カロリーSlims)
- ギンナン(イチョウの実)(イチョウ科)(食品衛生の窓)
- ぎんなん(生)の栄養素(日本食品標準成分表 2020年版)
- 子どもは銀杏(ぎんなん)にご注意を(母子栄養協会)
- ぎんなん(ゆで)のカロリー・栄養素(日本食品標準成分表 2020年版)
- 揚げぎんなん 33g - カルディコーヒーファーム オンラインストア (kaldi.co.jp)