女性が草食化している?
セックスに対する思いは、世代や時代によっても変わってくるものです。ジェクスの「ジャパン・セックス・サーベイ2020」が実施した20~69歳男女へのアンケートによれば、「セックスをしたい」と願っている男性は8割、女性は4割という結果だったようです。また、その目的は、男性は「性的快楽のため」、女性は「愛情を表現するため」が一番多いという結果になりました。
これに対して、「女性は草食化している」と解釈する人もいますが、実際はどうなのでしょうか?
男女で違う、性行為の意味
そもそも性行為は、体の構造からいえば、男性は「受け入れてもらう側」で、女性は「受け入れる側」です。それによって、今回のようなアンケートで双方の違いが出てくるのは当然のことだと言えます。
また、“自分を好きでもない相手”に行為だけを求められた場合、男女が同じ状況であっても、男性は「甲斐性がある」、女性は「相手に遊ばれた」と周囲が捉えることも少なくありません。男性が「モテ男」で、女性の場合は「モテ女」どころか「淫乱」など悪印象を持たれることも。
そういったことを考慮すると、性欲があるかどうかはさておき、「(性行為を)したいと願う」のかどうかは、男女で違ってくるのは当たり前とも言えます。そもそも男性にとっての最大の目的は「性的快楽のため」であり、女性は「愛情を表現するため」ですしね。だからこそ、特に女性は「誰でもいいわけではない」ことが多いのです。
性行為を求める理由とは?
実は「(性行為を)したい」と思うときに求めているものは、“行為そのもの”ではないこともあるものです。生理的な現象として「ムラムラすること」は、男女限らずあるもの。それをすぐに行為と結びつけてしまうのには、これまで私たちがメディアなどを通じて受けてきた先入観もあるかもしれません。
なぜなら、ムラムラ自体は生理現象であり、「排泄物を出したい」のと同じようなものだからです。男性の体では精子が作られ続けていますし、女性にも生理の周期があります。だからこそ、体がムラムラするのは当然のことであり、「生理的な分泌が高まっているから出したい」みたいなものでしょう。そして、その排泄をする過程に快楽が伴うので、「もっとしたい」という麻薬的な要素があるのです。
ただトイレに行きたいときに誰かに手伝ってもう、なんてことはありませんよね? それと同じように、生理的な分泌も、必ずしもセックスによって排泄する必要はないのです。
つまり、「ムラムラ=性的欲求」ではなく、「ムラムラ=排泄欲求」。特に男性は女性とは違って、分かりやすく精液が溜まるため、「スッキリしたい」という気持ちになりやすいもの。なにかしらの先入観があると、ムラムラしたときに「自分は(性行為を)したいと思っているんだ」という解釈になりやすいものですが、そのときに求めているのは「排泄欲求」に過ぎない場合もあるのです。
性行為によって求めているもの
もちろん純粋に「したい」と思うこともあるでしょう。ただし、その場合も、求めているのは“行為そのもの”ではないことが多々あるものです。
例えば、
(1)自分が女(男)であることを実感したい
(2)誰かに自分を受け止められたい(自分の魅力に自信を持ちたい)
(3)秘め事をして、ストレスを発散したい
などといった願望が根底にあることもあるでしょう。
でも、これらの欲求は、行為でしか解消できないわけではありません。例えば、セックスレスの人でも心が通じ合えるパートナーがいれば、(1)と(2)が満たされ、必ずしも行為そのものを必要としなくなることもあるものです。
また(3)については、普段、人前では自分を演じ過ぎている人が、「ストレスを発散したい」「本来の自分をさらけ出したい」という欲求から起こりやすいもの。だから、普段から自分らしくいる人であれば、こういった願望は抱かなくなってくることもあるのです。
多くの女性にとっては、むやみにする行為ではない
「ムラムラ=排泄欲求」だからといって、性行為そのものを否定したいわけではありません。愛する人と1つになる行為は、とても幸せな行為でもありますしね。でも、だからこそ、「むやみにやる行為ではない」とも言えるのです。特に女性は“受け入れる側”だからこそ、相手が誰でもいいわけではない人も多いのです。
だから、結論を言うと、「女性の4割しか(性行為を)したいと思っていない」という調査結果は、特別おかしな結果ではないし、草食化しているわけではないと言えるでしょう。
結局、その理由は、女性がセックスの目的で一番多かったのが「愛情を表現するため」であったところに表れています。セックスに愛情を求めているからこその結果なのです。
それで言えば、男性にとっての目的である「性的快楽のため」は、ある意味、排泄欲求とも言えます。もし仮に男女の体の作りが逆転して、男性が“相手を受け入れる側”になり、さらに、妊娠のリスクを負う側になったとしても、純粋にセックスを求めるのかどうかというと、そうならない可能性は高いでしょう。つまり、今回のアンケートは、男女の体の構造ならではの結果の差なのです。
もっと自分の体と心ときちんと向き合ってみることが大切!
今回のテーマは、セックスレスで悩んでいる人にとっても、重要なことです。私たちはどこか性行為がないことにコンプレックスを抱きがちなところがあります。それは心のどこかに「“現役感”がない」という恐怖、不安などがあるからではないでしょうか。でも、それはメディアなどの影響によって得られてしまった“誤った先入観”である可能性もあるのです。また、“セックスそのもの”ではなく、そこに潜んだ自分の劣等感、自信のなさが隠れていることも少なくありません。その場合は、むしろ性行為以外のことで解消していったほうがいいこともあるのです。
世の中には、ハニートラップや性行為の強制などで道を誤ってしまう人もいます。それは、性行為が単に欲望だけでなく、コンプレックスとも結びつきやすいからだとも言えるのです。だから、躍起になってセックスを求め、それらを解消したいと思ってしまう人もいるのでしょう。
だからこそ、ムラムラした時は、単純に「自分はセックスを求めているのだ」と判断しないで、もっと自分の体と心ときちんと向き合ってみることが大切なんでしょうね。