亀山早苗の恋愛コラム

W不倫の恋が終わって…埋められない喪失感が苦しい42歳の母

密かに続けてきて、そして密かに終わった恋。結婚しているがゆえに、恋が終わった苦しさを誰かに伝えることさえできない。それは、よくも悪くも独身者には味わうことのない恋の醍醐味なのかもしれないが……。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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不倫の恋が終わって……埋められない喪失感

不倫の終わり

密かに続けてきて、そして密かに終わった恋。結婚しているがゆえに、恋が終わった苦しさを誰かに伝えることさえできない。もちろん、自業自得だという言い方もできるだろう。だが、心にぽっかりあいた穴を埋める術はないというくらいに相手を欲していたことは事実なのだ。それは、よくも悪くも独身者には味わうことのない恋の醍醐味なのかもしれないが……。

 

いけないことだとわかっていた

どんなにいけないことだとわかっていても、逃れられないのが恋かもしれない。恋心を伝えなければ、実際の恋愛には発展しないですむのだろうが、好きなら相手と話したい、接したいと思うのもまた当然のこと。

「だから逡巡しました。彼とふたりきりで会ったらどうなるか、お互いにわかっていたので」

言葉少なくそう言ってうつむくのは、メグミさん(42歳)だ。2年つきあってきた、6歳年上の彼と半年前に別れたばかり。今は後悔する気持ちが強い。

メグミさんは29歳のとき、同世代の彼と妊娠を機に結婚した。もともといつかは結婚するつもりで長くつきあっていたので、妊娠はうれしかったという。産休を経て仕事に復帰、共働きを続けてきた。夫との関係も良好だという。

「夫とは友だち関係というか、子どもを育てていくパートナーという感覚が強まっていましたね。子どもが小学校に上がったころ、私のいる部署に異動してきたのが6歳年上の彼。最初はいい同僚がやってきたという感じだったんですが、一緒に仕事をしていくうちにだんだん惹かれていって」

彼がメグミさんに好意をもっているのも、なんとなく感じていた。部署の飲み会があるとふたりは必ず隣同士。オープンに冗談を言い合ったりしていたので、「仲がいいね」と言われることもあった。だがオープンすぎて、まさか男女として意識しあっているとは疑われていなかったと思うと彼女は言った。

「1年以上、そんな感じだったと思います。だけどだんだん彼への思いを秘めているのがつらくなっていきました。このまま同僚としていい関係を続けるのがいちばんいいとわかっていたけど、そうすることがむずかしくなったんです」

恋する気持ちを自分の中でためこめば自分が不自由になっていく。彼を無視しようとしたり、仕事で凡ミスが重なったり。およそメグミさんらしくない行動が目立っていった。

「そんなとき彼に声をかけられて。ふたりきりで食事に行き、彼から告白されました。思っていた通り、彼も苦しんでいたんですね。お互い家庭がある。でもお互いに相手が好き。もうこれ以上、どうにもならない。じゃあ、どうするか。そんなことを話し合ったんです」

いけないことだとわかっていても、後戻りできないことが人生にはあるのかもしれない。ふたりは、絶対に秘めておくと約束して男女の仲になった。

 

続けるのもつらい、別れるのもつらい

彼と会えれば全身の細胞が生き返るように元気になった。だが会えない時期が続くと、身も心もしぼんでいく。職場で彼が別の女性と親しげに話していると、髪の毛が逆立つような嫉妬を覚えた。

「彼への思いが強すぎて、自分でもどうしたらいいかわからなくなりました。考えてみれば、私は若いころからあまり恋愛感情が強いほうではなかった。それなのに急に恋に落ちて、免疫がなかったので自分をコントロールできなくなってしまったんです」

職場が同じだからこそ、周りとの雑談の中で、彼が夏休みに家族とどこへ行ったのか、家族関係はどんな感じなのかが見えてしまう。家庭にいるときは夫と子どもに全神経を集中させようとするが、常に「彼は今、何をしているんだろう」という思いが強くなる。

「いつかは彼への強い思いも冷めていくかと思ったんですが、頻繁にふたりきりで会えるわけでもないので、まったく冷めない」

そんな状態で2年近くつきあったころ、彼が「妻に疑われている」と言い出した。彼女はそれが、「彼が別れたくてついたウソ」だと思い込んでしまう。

「少しだけ距離を置こう、ほとぼりがさめたら会えるからって彼は言ったんだけど、私はかなりヤケになっちゃったんです。もう何もかもどうでもよくなって」

ふたりでときどき行っていたバーにひとりで寄った。そして顔なじみの男性とホテルへ行ってしまったのだ。

「酔っていたのは確かですが、どこへもやり場のない気持ちを別の男性にぶつけたかったのだと思います。その男性とはもちろんそれきりでしたが、なぜか彼にバレてしまって、そのままフラれました。ほとぼりがさめたら会えると言ったのに、どうして信じて待ってくれなかったんだと彼に涙目で責められて、私は言い訳できなかった」

その後、しばらく同じ部署で仕事をしていたが、半年ほど前、彼は関西へ栄転で転勤していった。家族も一緒だという。

「そのままコロナの影響で在宅勤務になって。夫も在宅だったので、ずっと夫と一緒にいたら、なぜかますます彼への思いが強まりました。というか、彼を失った喪失感が埋められないんです。今すぐでも関西に飛んでいきたいと何度思ったことか……。私が浅はかだった。生まれて初めて本気で好きになった人だったのに、どうしてもっと大事にしなかったのか」

失って初めてわかることがあると人はいう。それも真実なのかもしれない。恋は嵐のようなもの。巻き込まれて渦中にいると何も見えなくなっていく。いつか彼と再会することを夢見るメグミさん。そのとき、ふたりの第2幕が始まる可能性はなくはない。
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