ホテル

コロナ収束で駆け込みたい、注目のホテルブランド

コロナ禍で多くのホテルが休業していましたが、少しずつ再開する施設が多くなりました。開業延期していたホテルの開業も続いています。秀逸なコロナ対策を施しつつゲストサービスに注力するブランドを紹介します。

瀧澤 信秋

執筆者:瀧澤 信秋

ホテルガイド

星野リゾート 界 仙石原

2018年7月に開業した「星野リゾート 界 仙石原」。星野リゾートのコロナ対策は各メディアでも注目を集めた
 

5年で600のホテルが開業した“観光バブル”のなかのコロナ

コロナショックは生活の価値観を大きく変えました。経済への打撃も甚大で回復までには長い時間を要することでしょう。深刻な影響を受けた筆頭として挙げられてきたのが観光業界です。

なかでも宿泊業では休業や営業停止、破綻なども相次ぎました。近年、業界は訪日外国人旅行者の激増で“観光バブル”ともいえる様相を呈してきました。ホテルの開業が相次ぎ、あちらこちらでホテルの建設現場が見られたことは、読者のみなさんも実感されていたことでしょう。

統計では、2014年から2018年の5年間で約600軒のホテルが増加したとされます。大変な数ではありますが、実は一般のホテルよりも簡易宿所(カプセルホテルやホステル)の増加は桁違いで約7000軒とされています(観光庁統計)。さらに、民泊のインパクトも相当であり、コロナショック前にしてすでに宿泊施設は過当競争になっていました。

 

浮き彫りになった「コンセプト」と「経営スタンス」

これから増えるとされるホテルの軒数でいうと、2018年以降で主要9都市(東京、大阪、京都、名古屋、札幌、仙台、広島、福岡、那覇)において供給される客室数は、2019年から2021年の供給客室数は約7万8000室とされ、2018年末のストック数の24%相当とされています(CBRE調べ)。ただし、これはコロナショック前のデータですので、建設が中止されたりプロジェクトそのものがなくなったり、というケースも一定数はあるかと思います。

この深刻な状況下で、過当競争に加え稼働率の激減、休業、自粛等もあり、各ホテルはあらゆる対策を講じて乗り切ってきました。「ホテルのコンセプト」よりも、「経営のスタンス」を際立たせたのもまたコロナ禍といえます。全面休止するチェーン、細心の対策を講じつつ営業継続したブランドなどさまざまでしたが、共通したのは「ゲストを迎えるためにはいま何をしたらいいのか?」という真剣な自問でした。

そんななかで、コロナ禍において独創的、精力的かつ真摯な対応が際だったブランドは多くありますが、5つのブランドをピックアップして「収束したら是非訪れたい宿」として紹介します。
 
 

ラグジュアリー&リゾート

 
◆徹底した「3密回避」┃星野リゾート
星野リゾート 界 仙石原

アートをコンセプトに掲げる「星野リゾート 界 仙石原」。コロナシフトでも“星野流”のおもてなしは健在だ


コロナ禍において「星野リゾート」では、衛生管理に加え「3密回避」の滞在を提案しています。新しいビュッフェスタイルを導入したり、3密を避けるために客室や屋外など食事場所を変更できるテイクアウトを実施したり、「コロナシフト」での営業を再開しました。

このようなご時世にあって、“星野流”のおもてなしエッセンスが実際どのようなカタチで具現化されているのか興味は尽きません。

星野リゾート 界 仙石原
所在地:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原817-359
HP:https://kai-ryokan.jp/sengokuhara/


◆最小限の客室数で高級感&コロナ対策┃カトープレジャーグループ
ふふ奈良

2020年6月5日に開業した「ふふ 奈良」。わずか30室の客室は高級感だけでなく、コロナ対策にも寄与


「カトープレジャーグループ」は、高級温泉旅館「ふふ」シリーズをはじめ、リゾートを中心に各地でラグジュアリーな施設を運営していますが、大きな特徴として挙げられるのが、建物規模と比べて客室数が少ないという点です。

「おもてなしが行き届く客室数」という考え方がありますが、同グループでも、広々として空間を設けることでプライベート感が高いだけでなく、館内でほかのゲストと接触するシーンを最小限におさえています。もちろん消毒等も徹底されており、このような点からも、安心感の高いステイが期待できます。

ふふ 奈良
所在地:奈良県奈良市高畑町1184-1
HP:https://www.fufunara.jp/

 

ビジネス&リーズナブル

 
◆インバウンド人気のホテルが宿泊のチャンス:ドーミーイン
御宿 野乃 浅草

下町情緒あふれる浅草の中心地にある「御宿 野乃 浅草」。海外からの観光客が多い同ホテルも今なら宿泊のチャンス


人気ビジネスホテルランキングで常に上位の「ドーミーイン」。ゆえに人気が高くこれまでならば予約が取りにくいブランドとしても知られていました。

予約のしやすさはもちろんのこと、リーズナブルな価格設定もあり、海外の観光客からも人気のホテルブランドです。そんなドーミーインでも今の時期ならば、訪日旅行者の少ないので宿泊のチャンスともいえます。コロナ禍での経験は、館内の消毒や清掃、スタッフの接客やソーシャルディスタンスなど徹底した機会にもなっており、ある種安心して利用できる環境ともいえます。

御宿 野乃 浅草
所在地:東京都台東区浅草2-7-20
HP:https://www.hotespa.net/dormyinn/nono/


◆コロナ禍で真価を発揮した┃ベッセルホテルズ
レクー沖縄北谷スパ&リゾート

「レクー沖縄北谷スパ&リゾート」は2020年3月にオープン。7月1日には別棟に「レクー沖縄北谷スパ&リゾート プレミア」を開業した


小規模なチェーンながら北海道から沖縄まで全国に展開するブランドが「ベッセルホテルズ」です。宿泊特化型ホテルからリゾートホテルまで多様な形態ながら利用しやすい料金帯で人気で、徹底した利用者目線を感じるのは限られた規模のブランドならでは。

コロナ禍においても前向きな取り組みを進めており、営業休止というようななかにあっても、従業員教育やサービスの見直しなど次のステージを見据えた普段できない取り組みを続けていたと聞きます。これから楽しみなホテルチェーンです。
 
レクー沖縄北谷スパ&リゾート
所在地:沖縄県中頭郡北谷町字美浜34番地2
HP:https://www.vessel-hotel.jp/lequ/okinawa/


◆格安にして高バリューのチェーン┃一の湯
ススキの原 一の湯

「ススキの原 一の湯」。「箱根一の湯グループ」は、江戸時代から続く老舗で、箱根に10カ所の宿泊施設を所有


「一の湯」は、緊急事態宣言に合わせていち早く5月31日までの全館休業を決めた箱根の温泉旅館チェーン。ゲストや従業員の安心・安全を徹底して守るという堅固なスタンスの一方、再開へ向けた先取的取り組みを続けてきました。

宿泊権利の激安前売りや、クラウドファンディングによる新コンセプトルーム企画など、気持ち的にも沈みがちな業界にあって明るい話題を提供し続けています。格安にして高バリューのチェーンとして人気なだけにこれから是非訪れたいブランドです。

ススキの原 一の湯
所在地:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原817-77
HP:https://www.ichinoyu.co.jp/susuki/

 

コロナ禍にこそ際立つホテルのおもてなし

コロナショックは宿泊業界へ過去に例がない大打撃を与え続けています。一方で、軽症者の受け入れや医療従事者への優先的客室提供など、宿泊施設の公共性やインフラという側面も改めて見直される機会となりました。

一方で、人々の価値観を大きく変えることになり、以前のように気軽に旅へ出るという雰囲気はどこか異質なものになってしまいました。とはいえ、このような非常時だからこそ、宿泊施設に宿るおもてなしやホスピタリティマインドは、多くの人々へ勇気や希望を与えてくれるかもしれません。
 
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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