学校給食での感染予防、パーテーションやフェイスガードは必要?
学校給食での当番による配膳。今はこのようにマスク着用なしの学校はないと思いますが、感染予防策はどこまでするのが適切でしょうか?
多くの子どもたちが一つの教室で一緒に食事をする学校給食でも、会話によるつばや、ウイルスが付着した食品やカトラリーなどからの感染リスクはないとは言えません。感染予防のために、配膳時の衛生管理はもちろん、食事中の飛沫感染対策に一定の距離を取ったり、食べながらの会話を制限したり、遮蔽物を置いたりすることなどの対策が取られているようです。一部では児童の机にパーテーションを置いたり、フェイスガードをつけたりといった対策を行っている学校もあるようですが、これは実際にどの程度有効なのでしょうか? 詳しく解説します。
集団生活のなかでの感染対策……給食時間だけ厳重に予防しても効果は薄い
当然ではありますが、常に十分な感染対策がされているのであれば、机のパーテーションや給食時のフェイスガード着用にも意味があると言えます。しかし給食以外の時間にそこまで徹底した感染対策がされていないのであれば、パーテーションやフェイスガードといった対策は少し考える必要がありそうです。授業中や休み時間などに、特別な制限を設けていないのであれば、やはり感染リスクをゼロにすることはできないわけです。幸い、新型コロナウイルス感染症は子どもへの感染や重症例が少なく、子どもでの感染拡大はあまり大きな問題にはなっていません。学校が始まってから一部で複数の児童が感染した事例なども報道されましたが、2月以降の一斉休校中も、学童保育や保育園などのそのまま運営されていた施設でも大きな感染拡大がなかったことを考えると、感染の傾向は大人と違うのかもしれません。
学校生活で流行するさまざまなウイルス
学校などの集団生活の場には、新型コロナウイルスだけでなく、様々な感染症リスクがあります。インフルエンザウイルスにはある程度効果がはっきりしているワクチンも治療薬もありますが、2010/11年シーズンの子どものワクチン接種率は59.2%にとどまり、毎年流行しています。風邪の代表的なウイルスであるライノウイルスも毎年のように流行しますし、RSウイルスやヒトメタニューモウイルスなどの特効薬のないウイルスも克服できていません。これらの感染症は、未だに分からない点も多い新型コロナウイルスに比べれば脅威ではないと思われるかもしれませんが、集団生活の中には低出生体重児や先天性心疾患のある子どももいます。RSウイルスに感染すると重症化しやすいですし、持病のない子どもでもインフルエンザなどで急性脳症を起こすリスクがあります。いずれも「怖いウイルス」なのですが、今回の新型コロナウイルスほど厳しい予防対策はされていなかったように思います。今回の新型コロナに対する感染予防によって、他の感染症対策にもつながる可能性が期待できるかもしれません。
パーテーションやフェイスガードのメリット・デメリット
パーテーションのメリットは、ある程度高さがあれば、食事中にマスクを外して会話をする場合でも飛沫感染の予防に有効なことです。一方で、飛沫はパーテーションに付着してしまうため、適切に管理されないと、ウイルスが残ってしまい接触感染の元になりやすいというリスクがあります。特に子どもの場合は、うっかり触ってしまう他、感染症予防になっても、転倒や衝突などの教室内の事故の原因になる可能性もあります。フェイスガードのメリットは、マスクと異なり顔の表情がわかることです。子ども同士での会話もしやすく、お互いの表情を見ながら集団生活に必要なさまざまなことを学べるかもしれません。耳の聞こえにくい人も口元を見ることができるのは大きなメリットです。ただ環境によっては曇って視界が悪くなったり、熱がこもりやすくなり熱中症の危険性があがる可能性がある点は、注意しなくてはなりません。
飲食店は不特定多数の人が利用するため、パーテーションやフェイスガードによる感染対策も有効な面があると思われます。しかし学校では給食時間以上に長い時間を一緒に過ごすわけですから、給食中だけ予防を強化することにはあまり意味がないかもしれません。
本当に必要かどうか、どのような対応が良いのかは今後の対策の中で考えていく必要があると思われますが、最適な方法がわかるまではどうしても試行錯誤になるでしょう。どのような感染予防対策でも、それぞれのメリット、デメリットをしっかりと検証することが大切です。それにより過剰な対応を防ぐこともできますし、逆に不十分な対応も見えてきます。「実際の効果は不明だが何となくうまくいったから良し」とする風潮では、次の最適な対応ができなくなります。ぜひとも検証して欲しいものです。まずはマスクを正しく使ってある程度の社会的距離を取り、密室を避け、換気をすることは有効と思われます。
また、子どもから子どもへ、子どもから大人への感染については、現時点ではあまり報告がありません。その理由はまだわかっていませんが、子どもの感染は大人から感染しているケースの方が多く見られていますので、学校内の感染対策を過剰に神経を使う以上に、まずは私たち大人が日常的な感染対策に気をつけることが大切かもしれません。