コロナ疲れやストレス解消にも温泉は効果がある?
今年4月7日に出された「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言」は5月25日に解除となりました。私の周りでも、ステイホームなどの自粛疲れやコロナストレスが溜まってしまい、リフレッシュをしたい人が多いようで、「普段の生活に戻ったら、まず温泉旅行や日帰り温泉に行きたい!」という声も聞こえてきます。温泉は、もともと温泉のお湯の効果だけでなく、温泉地に滞在することによる転地効果によって、気分がリフレッシュし、不安を軽減させる作用があることが報告されています。 広い湯船でのびのび脚を伸ばして、美しい景色を眺めながら入る温泉は、今回のように何ヶ月にも渡るコロナ禍のような慢性的なストレスに対してはとても効果のある対処法と言えるでしょう。 コロナによる様々な制限が解除されれば、温泉は心と体の健康のために積極的に上手に活用したいところです。
温泉施設のコロナ対策は? 現時点で共通の対策ガイドラインはなし
2020年6月8日現在、 143の団体等から、各業界向けの新型コロナ感染症対策ガイドラインができています。 温泉業界に近いガイドラインとしては、旅館やホテルの団体、エステやフィットネスの団体からすでに公開されています。これらのガイドラインを見ると、浴場やプールについての感染予防対策ガイドラインが示されています。しかし、現時点では温泉に特化した対策ガイドラインはまだ作成されていないようです。そのため、各温泉施設では、それぞれ工夫をして新型コロナウイルスに対する対策をとっています。
温泉がもともと徹底していた厳しい衛生管理……塩素濃度・清掃など
私は、温泉そのものが、新型コロナウイルスが特に感染しやすい場所とは考えにくい、と現時点では考えています。 もともとコロナが発生する以前から、温泉の管理運営には、環境省や厚生労働省からの厳しい衛生管理指針などがあり、清掃や温泉水の衛生管理は徹底されていました。例えば、温泉で循環式の浴槽の場合は、0.2~0.4mg/Lの塩素濃度を保つことが決められています。一方、水道水は温泉より塩素濃度は薄く、残留塩素濃度は0.1mg/L以上と決められていますが、この塩素濃度でもウイルスは増殖しないことが分かっています。そのため水道水より塩素濃度の濃い浴槽の温泉水でウイルスが増殖するとは考えにくいでしょう。また、きちんと清掃してあれば温泉施設の設備や環境が、 新型コロナウイルス感染症の感染を特に拡大させる特徴があるということはなく、多くの人が利用すると言う点で、他の商業施設と同様の対策をとることが基本であると個人的には考えています。
温泉におけるコロナ対策、新しい日常としての「新しい入浴マナー」は?
温泉施設におけるコロナ対策は、3密を避けることや、施設内の適切な消毒、利用客・従業員のマスク着用、体温測定、体調確認、手指消毒など、原則は他の業種と大きく変わることはありません。他の施設と異なることとすれば、浴室内では入浴中マスクができないことです。新しい入浴マナーも含め、利用客が温泉で気を付けるべきこととしては、
- 熱がある時や体調が悪い時には温泉に行かない
- 浴室に入るまでは、マスク着用
- 浴室に入ったら、最初にシャワーやかけ湯で、手や体だけでなく顔もしっかり洗い流す
- 浴槽に入る前に、シャンプーやボディーソープ、石鹸を使って頭や顔、手足、体をしっかりと洗う
- 会話を控え、静かに温泉に入る
- 浴室内で咳やくしゃみが出そうになったら、飛沫が飛散しないように自分のフェイスタオルで鼻や口元を覆う
- フェイスタオルは使い終わったら他人に触れさせず十分な流水で洗い流すか、自分のものであれば、他人が触れないようにビニール袋に密閉して自宅へ持ち帰る
- 自分の使った洗い場や、水栓、椅子はシャワーでしっかりと流す
- 窓開けの換気をしている場合は協力する
- 入浴後のマスク着用による熱中症予防のため、いつも以上に水分摂取に心がける
もともと医療や介護の現場では 、患者さんが、誰でも何らかの感染症を持っているかもしれないという前提で常に感染症予防対応をしてきました。これは「スタンダードプレコーション」という考え方です。特に介護では入浴を提供するサービスもありますが、浴槽などの清掃も、これまでも、特殊な消毒剤などを用いるということではなく、通常の洗剤でしっかり清掃し十分な流水で物理的に流すということで、ウイルスも含めた感染症対策をしてきました。
また、特に感染リスクが気になる方は、換気の良い屋外の露天風呂を選んで利用することや、貸切風呂を利用したり、温泉付き客室を選ぶなどするのも良いでしょう。
適切な感染予防を講じた上で、上手に温泉を利用することは、身体だけでなく、ストレス解消など心の健康を保つには有効な方法です。しばらくは、行政からの新型コロナウイルス感染症情報や温泉施設の感染予防対策実施状況を確認しながらにはなりますが、健康維持に温泉を活用していきましょう。
(本記事は2020年6月14日現在のものです。また、筆者の個人的見解であり、所属組織等を代表した意見ではありません)