新型コロナウイルスの影響で、株価が下がり投資についての関心も高まっています。今から投資を始めるのはどうかという問いにファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんとマネーライターの清水京武さんが解説します(今回の収録は2020年4月に行われました)。
NISAやiDeCoを始めた人が、初めてコロナショックと呼ばれる「暴落」に見舞われた
深野康彦さん:皆さんこんにちは。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦です。清水京武さん:こんにちは。マネーライターの清水です。先生、今回もよろしくお願いいたします。今回のテーマは、「このタイミングで401kをやったほうがいいのでしょうか?」です。 広い意味では投資の積み立てということですが、これだけ1日500円、1000円と日経平均株価が落ちるような時期があった中で、投資をすること自体が非常に恐ろしいと考えて、積み立てをやめたくなるような気持ちになっている人がかなり多いと思います。それを今回テーマにしてみたいと思いますが、先生の周りにもそういう方は多いのではないでしょうか?
深野さん:そうですね。401k、確定拠出年金ですが、個人型の場合はiDeCo、企業型もありますよね。あるいは積み立てだと、つみたてNISAがあります。これが始まったのは2018年で、iDeCoのほうは対象者が広がったのが2016年ですから、今回のコロナショックと呼ばれる暴落に初めてあったわけです。 それこそ含み益がなくなったという人も結構いらっしゃいました。でも今別にわざわざ売る必要ないんだから、このままコツコツと積み立ててくださいと。次の景気が良くなる時、株価が上がった時には大きな果実が得られるから、と励ましています。
清水さん:深野先生に励ましていただいているわけですが、その理由を少しずつ解説いただきたいです。どういう理由で、そのように考えるのでしょうか?
深野さん:やはり株価と景気は循環していますよね。景気は悪い時がずっと続くわけではありません。例えば今新型コロナウイルスの影響で、景気は悪い局面ですよね。まだ悪化している最中、というのが正しいかもしれません。景気は悪化することを後退といいますが、不景気になって、そこから景気が回復して好景気、そこからまた景気後退、不景気、景気回復、好景気……とまわっていくわけです。 それと株式相場も同じです。今なら株価下落、底打ち、反転、上昇化、天井……という景気と同じようなかたちで循環しています。
確かに今は清水さんがおっしゃるように、それこそ1日1000円下がってひやっとする局面もあったりするかもしれません。でも長い目で見ると、時間をかけるとそれをリカバリーしているんです。 だからこういうところで種をしっかりとまいて、次の景気の局面で果実を得るというスタンスです。過去の経験則上です。例えば2008年のリーマンショックだって、アメリカの株価は4、5年くらいで戻っているわけです。 一番厳しいと言われるのは1930年頃の大恐慌です。これはやはりアメリカといえども時間がかかってしまいましたが、それでも25年前後くらいで戻っています。長い目で見てリカバリーしなかったものは、ほとんどありません。
もちろん日本株はバブルの時の高値を捉えていないじゃないか、と言われるかもしれません。 でも実は今回テーマの積み立て投資で買っていくと、価格が安い時にたくさん買ってくれるから、平均取得単価を抑えることによって、元の高値まで戻らなくても利益が確定できるケースは多いわけです。 例えば日本株だってバブルの高値の時に始めても、今はちょっとダメですが昨年あたりまで続けてプラスになっている人もいるわけです。ですから経験則上、時間を味方に付けることによって成功するチャンスが増えるので、何も今慌てる必要はないということです。
清水さん:売ったり、積み立てを解約したりする必要はないということですね。株価は永久に下がることもなければ、永久に上がることもなくて、時間軸の長い目で見ると上がったり下がったりするということが分かってくるわけですね。不安になっている人も多い中で、今積み立てを始める人が増えているという話も聞きます。その場合もいろいろと注意点があると思いますが、中でもiDeCoを始める人が増えているようです。これに関しても注意点がありそうですね。
深野さん:確定拠出年金、通称401kと呼ばれる個人型のiDeCoです。あとは勤務先にある企業型です。この場合はどうしても勤務先経由で利用しなくてはいけないので仕方ないですが、iDeCoを始めるかどうかは自分で選択できます。
当然株価水準から見れば安くなったから始め時かな、と思います。でも残念ながら株価が下がる時は、景気があまり良い時ではないわけです。そういう時って、我々の収入すらどうなるか分からない局面は結構あるわけです。 確かに株価水準から見れば始めやすい水準かもしれないけれど、通常投資というものは余裕資金でやるものですから、その資金を収入から捻出できるのかを考えなくてはいけません。
同時に、今回の新型コロナウイルスの影響がどれだけ長引くかは分かりません。そうすると401kは企業型しかり個人型しかり、共に老後資金を準備するための制度なのです。ここではiDeCoに話を絞りますが、iDeCoの場合は残念ながら60歳まで原則引き出せないわけです。
となると始めたはいいけれど、途中で何かのお金が足りなくなったという場合、iDeCoで回っているお金は他の目的で使うことはできないんです。いつでも現金化できるかどうかの割合のことを、我々は換金性、流動性といっています。 その換金性、流動性がiDeCoは劣ります。ですから余裕があるのであればいいですが、今株価水準が下がったからという理由だけで、自分の家計の収支も見ずに始めることには、私はブレーキをかけたいですね。
清水さん:そうするとiDeCoをやることがいいからといって、手持ち資金がどんどんなくなって60歳まで引き出せないとなると、逆に老後を迎える前に資金が厳しくなるという本末転倒になる可能性があるわけですね。
新型コロナウイルスが終息したとしても、次の○○ショックが起こる?
深野さん:例えば25歳くらいの方だと、60歳まで35年でしょう? 35歳の人だって25年もあるわけです。45歳の人だって15年ですから、その間に何があるか分からないじゃないですか。今回の新型コロナウイルスのコロナショックと呼ばれる暴落の前にあった大きな暴落は、2008年のリーマンショックですよね。 あれだって12年前の出来事なんですよ。それこそ20代30代40代の人は、まだ老後を迎えるまで軽く10年以上あるわけです。新型コロナウイルスが終息したとしても、次の○○ショックが起こるかもしれないじゃないですか。これはiDeCoをやってはいけないというわけではなくて、そういうことを考えた上で余裕の範囲内でやってくれということです。あとiDeCoの場合は、掛金が所得控除というかたちで引けるので、節税になるじゃないですか。そうすると、上限まで目いっぱい掛ける人もいますよね。 でも基本的にはそれもちょっと待ってほしいです。確かに余裕があるならそれでいいかもしれませんが、余裕がないならできる範囲で始めてもいいですし。
本来であれば今回もできる限りきちんと積み立てていきたいのですが、やはり掛金を払うのが厳しければ、一時的に積み立てを停止することもできます。 できれば継続することを考えるけれど、やむを得ないなら停止も仕方ないです。やはり近い将来の出来事へのお金を確保して、家計を守らなくてはいけないわけですからね。そういうことも全部ひっくるめた上で、いくらで始めるのか、今始めたほうがいいのかを考えていただきたいです。
清水さん:積み立てにおいては、今の状況は人によってはチャンスであると捉えることもできるし、厳しいからといって積み立てを停止することが必ずしも良いことではありません。しかし手持ち資金が厳しい方の場合、例えばiDeCoなどの場合は一時停止や減額ができるので、そういうものをうまく使いながら積み立てを継続していくかたちを模索するというのも、一つの考え方かもしれませんね。
深野さん:はい。あとは今回のコロナがいつ終息するのかって、まだ見えないじゃないですか。こういう時はやはり換金性、いつでも現金化できるかどうかを常に考えた上で資産運用をすることが重要です。いつでもとなると、やはり現金を厚めに持つということになります。 そういうことをしっかりとした上でやるならばOKです。でもできていないのに投資をするというのは、本末転倒です。そのあたりのバランスもやはり考えていただきたいですよね。
清水さん::積み立て自体はまだメリットがありますが、現金とのバランスを考えながら、それぞれ皆さんやっていただきたいと思います。深野先生、今回もありがとうございました。
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