食と健康

1週間に必要な食材リスト…栄養バランスよくまとめ買いするコツ

【管理栄養士が解説】新型コロナウイルスによる外出自粛要請の中、スーパーへの買出し回数を少なくする工夫が必要です。栄養的に偏りすぎたり、買いすぎて食材を無駄にしたりしないために、何をどれくらい買うべきかを頭に入れておきましょう。「一週間に必要な食材リスト」を参考に、必要な買出し量をぜひチェックしてみてください。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

買出し回数は減らせる? 外出自粛要請によるスーパーでの混乱

スーパーでまとめ買いをする家族

買出しに出かける回数を少なくするための「まとめ買い」。どれくらいの量が適切なのでしょうか?


新型コロナウイルス対策の「外出自粛要請」で、日本中が大パニックになっていますね。百貨店やショッピングモール、映画館や飲食店などは営業自粛。多くの図書館までもが閉館。本を読もうにも、書店のほとんどが閉店中なので、ネット書店で注文している人も多いと思いますが、それも配送業がパンクしかかっていて通常運転とはいかない様子です。テレビでは「買出しは3日に1回」「スーパーには家族全員で行かずに1人だけで」といった具体的な行動目標が繰り返し報じられています。

「言いたいことは分かりますが、もう限界です!」と思っている人もたくさんいるかもしれません。特にスーパーの混雑状況の写真などは「3密を避けるよう言われても、開いている店が混んでどこも3密じゃないの」と困っている人も多いのではないでしょうか。

特に緊急事態宣言前の東京都内では、食料がなくなっては大変とショッピングカートいっぱいに食料品を買い込む方の映像があちらこちらのニュースで流れていました。
 

非常時に失敗しがちな食品購入傾向……「糖質ばかり」「使いきれない」

ニュース映像ではカートの中身までは分かりませんでしたが、私が行くスーパーでは、米、ラーメンやパスタ、うどんなどの乾麺、冷凍パスタ(なぜかパスタだけ)、そしてそれらに使うめんつゆやパスタソースなどが品薄になっている印象でした。多くの人が、これらのまずはこれらの主食をしっかり確保しようとしたのでしょう。非常時にどの国でも見られる傾向のようですが、栄養学的に見るとこれらの食料品は「糖質」ばかりで偏りやすくなります。

一方で、野菜や肉、魚などを大量に買い込んでいく人も多いようです。適切な下処理を施せば自宅で冷凍保存が可能なものもありますが、冷凍保存が難しい食材は冷蔵庫の中で使いきれず無駄になってしまう心配もあります。普段少しずつ買い物をしている人が、まとめ買いで適切な量を購入するのはなかなか難しいものです。

不安感が強いと買う量ばかりを重視してしまいます。栄養的に偏っていたり使いきれなくなったりと無駄な買い物をしないためには、まず1週間に必要な栄養素をざっくりと頭に入れておき、そこから買うべき食品の目安を知っておくのがポイントです。
 

大人一人が健康的な食生活を送るために、1週間に必要なカロリーや栄養素の目安

健康的な食生活を送るために必要な栄養素量は、性別と年齢にあわせて「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を確認するのがよいでしょう。1日あたりに必要な栄養素量の目安がわかります。

この基準表では年齢ごとに3つのエネルギー量が書かれており、例えば、「成人男性(18~29歳) Ⅰ2300kcal、Ⅱ2650kcal、Ⅲ3050kcal」「成人女性(18~29歳)Ⅰ1700kcal、Ⅱ2000kcal、Ⅲ2300kcal」という風に、それぞれの年代別に3つの数字が出ています。これは日常の活動量の差によって変わります。今もこれまで通り出社して勤務している人は、真ん中の「Ⅱ」の数字を。テレワークで在宅勤務をしていて活動量が減っている人は「Ⅰ」を目安にするとよいでしょう。

自宅学習中の私の教え子たちにも「コロナ太りしました」という声が多いですが、自粛生活でダイエットをするのであれば、主食量でエネルギー量を調節しましょう(主食を全く食べないのも栄養が偏るのでいけません)。そして、野菜類・キノコ類・こんにゃく・海藻で満足感を得られるような料理を1品増やしましょう。特にこんにゃくとキノコは価格が安値安定ですから、使いやすいと思います。
 

1週間に必要な食材リスト

では非常時の買出しでは何をどれくらい買うべきでしょうか。もしも今「非常食3日分」の準備がない場合は、まずはこれを用意しましょう。目安として便利なのが「東京防災(※PDF・89ページ参照)」の表の「食品」リストに書かれている食品です。ここに書かれている食品があれば、大人2人くらいなら3日間生きていけます。先々の「いざという時」も兼ねて、今、用意するのがよいでしょう。

しかしこの食料リストは、完全に「非常食」ですので、残念ながら3日で飽きてしまいます。ですので、各家庭で「食べたい」と思う生鮮食料品を追加し、3日分の非常食と組み合わせながら、献立を立てていくのがおすすめです。

一例として、以下の1週間に必要な食材リストをぜひ参考になさってください。

■1週間に必要な食材リスト(大人2人分)
  • 肉……1~2㎏(1食100~200g見当10食分・2人×5食=10食分)。鶏・豚・牛のどれを選んでもOKですが、3~4種類違うものを購入しておくと便利です
  • 魚……10切れ(1食1切×5食=10食分)※ 漁もお休みしているのか種類が少ないように思いますが、できるだけ多種類の魚を選びましょう。5月はアジやカツオ、地域(瀬戸内海近郊)ではサワラなどが旬を迎えます
  • 卵……2パック(1食2個×5食=10個。副菜などに入れる分として予備10個)
  • 納豆、ソーセージ、ハムなど……合わせて3~5袋
  • 豆腐……2~3パック
  • 常備すべき野菜:人参、ジャガイモ、玉ねぎ……それぞれ3つずつを保存食を兼ねて常にキープ
  • その他の野菜……きゅうり、トマト、キャベツ、ニラ、水菜など、室温で販売されている旬の野菜を1週間分として2000円分くらい。安いものから5~6品を購入するのがおすすめです
  • キノコ……5パック
  • こんにゃく……1袋
 このくらいあれば、和・洋・中のいろんなメニューに対応ができるはずです。旬の食材をネットなどで事前に見ておくと、よりスムーズに買い物ができるでしょう。一例として5月の旬の食材は「5月の食材一覧」などで確認ができます。
 
上記の食材を買出しして1週間経ったら、2週目は冷蔵庫・冷凍庫の残りを確認した上で、食べた分だけ買い足すようにしましょう。余る食材は減りの早い食材と入れ替えてもいいですが、偏りすぎないようにしましょう。とくに魚は値が張るので買いにくい食材ではありますが、食の洋風化(肉食)は免疫力を下げるというデータもあるようですから、意識的に摂るようにしましょう。

他に気をつけたい点としては、空腹時に買い物に行かないことです。美味しそうだし、足りなくなるよりいいかと自制心が利かなくなり、無駄な買いだめをしがちです。事前に上限金額を決めて、それ以上は買わないようにするというのも一つの方法だと思います。1人分を1日800~1000円分くらいで調味料や米なども含めた食材費を賄うと考えて購入すると、たまに贅沢もできますし、ゲーム感覚としてもちょうどいい金額ではないかと思います。
 

コロナ自粛・外出制限疲れに、家で「食の楽しみ」を

私が子どもだった頃は、「豊田市」というクルマ社会の町に住んでいたこともあり、家族で1週間分の食料をまとめ買いすることは常識でした。今でも地方では「1週間分の買いだめ」は当たり前のことですが、車を使わない都会の生活にはなじまないところがあると思います。

これに加えて「買い物には家族総出で来ないで」と言われてしまえば、持り帰りが可能な量も知れています。特に家族の人数が多いご家庭にとっては無茶振りだと思いますが、まずは命を守るために各自ができることをコツコツやりましょう。ダウンタウンの松本さんではありませんが、その日1日、仕事をしなかったとしても、「自宅に居てコロナを阻止」できたなら立派です。まずは、自身が感染しないように自衛すること。これが一番大切です。
 
そのうえで、心を健全に保つことを考えましょう。小さい子どもさんは遊びに行きたがると思いますが、家でできる「時間のかかる遊び」を可能な範囲で試してみましょう。お菓子を作ったり、パンをこねたり、牛乳消費を兼ねてラッシーを作ったり。普段だったらしないような料理に挑戦してみるのも面白いと思います。缶切りの使い方すら知らない子どももいるようですから、これを機会に家にある調理器具の使い方を教えてあげるのもいいかもしれません。食において「(普段ではできない)手間を少しかける」ことでも、子どもたちにとっては楽しい「巣ごもり」になるでしょう。

大人なら「新商品」や「限定品」の食品や、「アマビエラベル」の日本酒なども、家で食べる楽しみ、飲む楽しみになるかもしれません。珍しいお酒をネットなどで探してみるのも楽しいものですが、呑んで寝るだけと安心しきって、深酒にならないようご自愛を。
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