結果的にコロナショックは絶好の押し目だった
2020年は「コロナに始まりコロナで終わった1年」でしたが、株式市場もコロナに翻弄された1年といえるでしょう。コロナが世界に拡散すると株式市場は2月下旬から3月中旬にかけて急落したのです。その後、世界の中央銀行による大規模な金融緩和、各国の大規模な財政政策の導入を背景に株価がV字回復したのは記憶に新しいところです。終わってみれば株価は堅調だったということができ、日経平均株価は2万7000円台乗せと約30年ぶりの高値に上昇、米国のNYダウ、S&P500、NASDAQの3数は揃って史上最高値更新となったのです。上昇率にすれば日経平均株価は16.01%、TOPIX(東証株価指数)は4.84%、NYダウは7.24%、NASDAQは43.64%の上昇でした。ちなみに、筆者が調べた範囲で2020年に最も上昇した株式市場はナイジェリアで50.03%の上昇率でした。
米国株を投資対象とする投信が好成績
2020年は株式市場が堅調であったことから、投資信託の運用成績も海外株式を投資対象とする商品を中心に株価指数を大幅に上回る好成績でした。2019年の上昇率上位の投資信託が軒並み「ブル・ベア型ファンド」、かつ日本の株価指数を対象としたものであったことを考えれば顔ぶれは全く異なるものといえそうです。図は2020年の全ファンドの上昇率ベスト10です。いずれも海外株式型で、主に北米の株式を投資対象とするものがずらりと並んでいます。唯一、9位にランクインした大和アセットマネジメントが運用する「iFreeレバレッジNASDAQ100」だけが「ブル・ベア型」で、また2年連続ランクインした投信です(2019年は第3位で上昇率は81.90%)。投資信託の世界では2年連続して運用成績の上位に名を連ねるのは難しいと言われることから、快挙といってもよいかもしれません。ただ、NASDAQ100指数が2年連続して高騰したという背景があるのは事実として記しておきましょう。
図は上昇率のベスト10ですが、上昇率をもう少し見ていくと20位にアセットマネジメントOneが運用する「DIAM新興市場日本株ファンド」がランクインしています。年間上昇率は80.63%でした。
上昇率トップは投資資金は2倍超えに
年間上昇率1位は、日興アセットマネジメントが運用する「グローバル・プロスペクティブ・ファンド」で、年間125.85%の上昇率でした。2019年のトップの年間上昇率は94.40%の「楽天日本株4.3倍ブル」でしたから、上昇率は30%も高くなっています。同投信は、世界の上場株式の中から、破壊的イノベーションを起こし得るビジネスを行う企業の株式を実質的な投資対象としています。マンスリーレポート(2020年11月末)によれば、資産配分の82%がアメリカ、組み入れトップは「テスラ」となっています。2位は三菱UFJ国際投信が運用する「eMAXIS Neo自動運転」で、年間上昇率は112.59%でした。同投信は、主として米国の金融商品取引所に上場している、日本を含む世界各国の自動運転関連企業の株式等を投資対象としています。「S&P Kensho Autonomous Vehicles Index」(配当込み、円換算ベース)に連動する 投資成果を目指して運用されます。資産配分の約65%はアメリカ、組み入れトップはやはり「テスラ」でした。
3位~6位は為替ヘッジのあり、なし、決算期が違っているだけなので実質1本の投資信託とみなせるでしょう。三菱UFJ国際投信が運用する「米国IPOニューステージ・ファンド(為替ヘッジあり)<資産成長型>」が3位で、年間の上昇率は107.09%でした。同投信は、株式公開(IPO)から概ね5年以内の中型以上の米国株式への投資を基本としています。
年間騰落率のベスト10は図の通りですが、7位、8位の投資信託も決算期が異なるだけで実質同一の投資信託なので、ベスト10とはいえ実質は6本の投資信託に過ぎないことになります。ベスト20までみても実質は11本の投資信託になることから、株式同様、好成績の投信はより好成績に、そうでない投信はパッとせずというように投資信託全体の運用成績は優劣がついた1年だったようです。2021年はどのような投資信託が好成績を挙げるのでしょうか。
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