ドラマ

今観たい、宮藤官九郎ドラマ!クドカンが描く人間らしさにあふれた作品たち

あらゆるジャンルでオリジナリティを魅せる脚本家・演出家の宮藤官九郎さん。ドラマガイドの竹本さんも「思わずスタンディングオベーションを送った」と語るイチオシの作品が多いんだとか。アラフォー世代には懐かしい作品から、老若男女問わず愛され続ける作品まで、クドカンらしさ爆発の“間違いない作品群”をセレクトしていただきました。

竹本 道子

執筆者:竹本 道子

ドラマガイド

 
宮藤官九郎

『MEKURU』創刊号 MEKURU VOL.01 ギャンビット (刊)/表紙・巻頭特集「はじめまして、宮藤官九郎です。」より
 


オリジナリティの高さと斬新な構成でドラマファンを魅了する脚本家・演出家といえば、宮藤官九郎。人気枠の連ドラはもちろん、朝ドラ、大河、深夜ドラマ、さらには昼ドラ枠と、あらゆるジャンルでオリジナリティを魅せてくれます。

また、池袋、木更津、三陸、落語、野球など、多彩なモチーフを存分に活かした作品が多いのも特徴。常に時代をリードしつつも、トレンディさばかりに頼るわけではなく、どこか普遍的な「人間への敬意」や「人間愛」にあふれています。

その時代を生きるすべての人々を豊かに表現し、時間軸で仕掛けていく手腕も巧妙。時代の勢いやきらめきを表現し、ハジけた印象がありながら、​決して勢いまかせにしないクールな視点を持ち合わせているところが、幅広い年代を魅了するのかもしれません。

登場人物それぞれの人生に頬を寄せたくなるような宮藤官九郎の作品群には、イチオシしたくなる作品が多いんです。

 

青春のきらめきをヒシヒシと浴びたい時に観たい!
『池袋ウエストゲートパーク』(2000年/TBS系)

宮藤官九郎

 池袋を舞台にトラブルシューターのマコト(長瀬智也)が活躍する

 
池袋を舞台に、元不良でトラブルシューターのマコト(長瀬智也)が活躍するミステリアスな青春群像劇。いとも簡単に人を刺す研ぎ澄まされた刃と、傷つきやすい脆い刃をクロスさせるような若い登場人物たちのやり取りは、いつ見ても刺激的。カラーギャング抗争や引きこもり問題、ヤクザ絡みの事件など、社会問題や時代の闇を切り取りながらも、なぜか嫌悪感を抱くことも古さを感じることもなく、20年経った今でも胸を熱くしてくれるのは宮藤官九郎の巧みさでしょう。

長瀬智也、窪塚洋介、山下智久、高橋一生、妻夫木聡など、第一線で活躍する俳優たちの、その瞬間にしか見ることができない青春特有の乾いた表情を切り取っているのも見事。疾走する彼らのエネルギッシュで濃厚な時間は、大人になって見る今こそ新鮮です。

 

\d払いがとってもおトク!/



DATA
『池袋ウエストゲートパーク』

原作:石田衣良『池袋ウエストゲートパーク』(文藝春秋刊)
脚本:宮藤官九郎
プロデューサー:磯山晶
演出:堤幸彦、伊佐野英樹、金子文紀
出演:長瀬智也、加藤あい、窪塚洋介、山下智久、妻夫木 聡、坂口憲二、矢沢 心、佐藤隆太、小雪、きたろう、森下愛子、渡辺 謙 ほか


 

心が沈みっぱなしの時にはじけ方を教えてくれる!
『木更津キャッツアイ』(2002年/TBS系)

宮藤官九郎

野球と泥棒稼業、一見ハチャメチャな人生が愛しい


 
余命半年を宣告される主人公・ぶっさん(岡田准一)が、仲間とともに、野球や泥棒(!?)にと夢中で生きる、一見ハチャメチャな日々を描く作品。時間の操り方、野球を基軸に構成する立体感など、「クドカンらしさ」の完成形を見せてくれます。主人公の死という重たいテーマを明るくかつユーモラスに掘り下げる視点は、優しく、だからこそ心にしみる快作と言えそう。人生のはじけ方はもちろん、涙のこらえ方とこぼし方もそっと教えてくれます。2003年には『木更津キャッツアイ 日本シリーズ』、2006年には完結編の映画『木更津キャッツアイ ワールドシリーズ』なども公開され、長く愛された作品。
 

\d払いがとってもおトク!/


DATA
『木更津キャッツアイ』

脚本: 宮藤官九郎
プロデューサー:磯山晶
演出:金子文紀
出演: 岡田准一、桜井 翔、酒井若菜、岡田義徳、佐藤隆太、塚本高史、阿部サダヲ、山口智充、古田新太、森下愛子、小日向文世、薬師丸ひろ子 ほか

 

クドカンの粋に「やられた」と感じたい
『タイガー&ドラゴン』(2005年/TBS系)

宮藤官九郎

落語の人情味をドラマに映した粋な名作

噺家を目指すヤクザと噺家を廃業したデザイナーの出会いから生まれる喜怒哀楽が、ポップに描かれた『タイガー&ドラゴン』。裏に表に、多彩に生きる人たちを、落語の演目に重ねて描き、大通りから路地裏、真昼間から深夜まで、多元中継するかのような物語から目が離せません。威勢がいいのに哀愁漂う彼らにホロっとしたり、クスっとしたり、登場人物たちを物語の中で素通りさせない宮藤官九郎の目線が光る、まさに粋な傑作。落語も絶品です!

 

\d払いがとってもおトク!/


DATA
『タイガー & ドラゴン』

脚本:宮藤官九郎
プロデューサー:磯山晶
演出:金子文紀 片山修ほか
出演:長瀬智也、岡田准一、伊東美咲、塚本高史、蒼井 優、春風亭昇太、銀粉蝶、阿部サダヲ、笑福亭鶴瓶、西田敏行 ほか


 

夜空を見上げ家族を想いたい夜に
『流星の絆』(2008年/TBS系)

宮藤官九郎

  心温まる人間ドラマを丁寧に濃厚に描いた『流星の絆』


 
原作は東野圭吾。両親を殺害され復讐を誓う3兄弟のシリアスな物語に、コミカルさや謎解き要素、宮藤官九郎らしさがブレンドされ、視聴者をグイグイと引き込みます。真犯人を探す3人の心のすき間や焦りを繊細に描き、宮藤官九郎の作品の中では”穏やかに深くきめ細かく”の描写が印象的な作品と言えるでしょう。真犯人と対峙する濃密な最終回の緊張感もみどころですが、そのあとの希望のシーンこそが作品の真髄と言えそうです。心が弱ったときは、ぜひ星空を見上げて家族のことを想ってください。

 

\d払いがとってもおトク!/


DATA
『流星の絆』

原作:『流星の絆』東野圭吾(講談社)
脚本:宮藤官九郎
プロデューサー:那須田 淳、磯山 晶
演出:金子文紀、石井康晴
出演:二宮和也、錦戸 亮、戸田恵梨香、要 潤、尾美としのり、設楽 統(バナナマン)、 桐谷健太、中島美嘉(特別出演)、 柄本 明、りょう、寺島 進、三浦友和 ほか

 

最近、空と海と笑いが足りないと感じた時は
『あまちゃん』(2013年/NHK)

宮藤官九郎

  日本中の老若男女が明るい朝を迎えた名作


 
日本中に旋風を巻き起こし、老若男女が夢中になった朝の連続テレビ小説『あまちゃん』。小ネタなのかオマージュなのか、思わず吹き出してしまう仕掛けが満載です。キラキラと輝く海の景色が心に新鮮な空気を送り込んでくれ、放送当時は毎朝、気持ちよく深呼吸できるようでした。演者の個性を生かす脚本の巧さに加えて、三陸鉄道が走る風景、挿入歌の「潮騒のメモリー」、愉快なテーマ曲など、いくつもの要素で織りなされるハーモニーは奇跡! としか言いようがありません。心にミネラルが足りないと感じたら『あまちゃん』を見て、笑いながら癒されてください。

 

\d払いがとってもおトク!/


DATA
NHK連続テレビ小説『あまちゃん』

脚本:宮藤官九郎
演出:井上剛、吉田照幸、梶原登城 ほか
出演:能年玲奈、小泉今日子、尾美としのり、杉本哲太、小池徹平、橋本 愛、福士蒼汰、有村架純、渡辺えり、蟹江敬三、宮本信子 ほか

 

八方ふさがり、四面楚歌、立ち往生でも絶望しないために
『ゆとりですがなにか』(2016年/日本テレビ系)

宮藤官九郎

 ゆとりのカテゴライズにさまよう彼らの生きたことば



ゆとり世代のアラサー青年3人を中心に、今どきをめいっぱい詰め込んで描かれた社会派ドラマ。サラリーマンの坂間正和(岡田将生)、小学校教師の山路一豊(松坂桃李)、東大を目指す道上まりぶ(柳楽優弥)が生きる「今」はすさまじく世知辛い……そんな現実を切実に痛感させながら、笑いあふれるドラマに持ち込む宮藤官九郎の手腕を堪能してください。坂間の後輩でゆとりモンスターと呼ばれる山岸(仲野太賀)や、大学生の小暮(北村匠海)の言葉のトゲにおののきながらも、彼らとて、決して生きやすいわけではありません。山路の正直な言葉に胸を熱くし、頭のなかでトリッキーな登場人物のことばをグルグルさせると、「私の人生、案外、前に進むかも……!」と思えてくる力作です。

 

\d払いがとってもおトク!/


DATA
『ゆとりですがなにか』

脚本:宮藤官九郎
チーフプロデューサー:伊藤 響
プロデューサー:枝見洋子、茂山佳則(AXON)
演出:水田伸生、相沢 淳、鈴木勇馬
出演:岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥、安藤サクラ、太賀、島崎遥香(AKB48)、高橋 洋、吉岡里帆、小松和重、少路勇介、矢本悠馬、加藤 諒、北村匠海(DISH//)、手塚とおる、青木さやか 、でんでん、中田喜子、吉田鋼太郎 ほか

 

時代をグイグイと推し進めた人間たちに歓喜したい
『いだてん~東京オリムピック噺~』(2019年/NHK)

いだてん

    NHK大河ドラマ いだてん 完全版 DVD-BOX1 全4枚



東京オリンピック開催に尽力した人たちを描いた大河ドラマ『いだてん』。二・二六事件や太平洋戦争などの史実、数多い登場人物一人ひとりにしっかり光をあてているものの、雑多感なくスッキリみせているところに、宮藤官九郎のセンスと成熟を感じます。また、群像劇に見えていた一人ひとりのベクトルを、一気にオリンピックスタジアムに向かわせた力強い構成力には、大きく心を揺さぶられます。いくつものモチーフを絡めながら、時代を行き来させる攻めの手法は、大河ドラマとしてはかなり挑戦的ですが、最終的に点と点が線になり、東京オリンピックと噺をしっかり浮き上がらせた最終回は必見。オリンピックスタジアムの風景に感涙しながら、思わずスタンディングオベーションしてしまいました。ノスタルジックな匂い、時代の持つ底力、チャーミングな登場人物たち……紆余曲折を気持ちよく描いたクドカンに改めて感動します。脚本家「宮藤官九郎」に対する見方を一変させたという意味でも、私にとって価値ある一作になりました。
 

\d払いがとってもおトク!/
 


DATA
『大河ドラマ いだてん』

完全版 DVD-BOX1(全4枚)<発売予定日:2020年4月24日>
脚本:宮藤官九郎
演出:井上剛、西村武五郎、一木正恵、大根 仁、桑野智宏、林 啓史、津田温子、松木健祐、
渡辺直樹、北野 隆
噺(はなし):ビートたけし
出演:阿部サダヲ、中村勘九郎、綾瀬はるか、麻生久美子、桐谷健太、斎藤工、林遣都、森山未來、神木隆之介、夏帆、リリー・フランキー、薬師丸ひろ子、役所広司 ほか

以上、時代と町を生き生きと描いてきた宮藤官九郎のイチオシ作品をセレクトしました。

ほかにも、『マンハッタンラブストーリー』(2003年/TBS系)や『11人もいる!』(2011年/テレビ朝日系)、『ごめんね!青春』(2014年/TBS系)といったテレビドラマはもちろん、映画に舞台に歌舞伎にと、宮藤官九郎の世界を楽しめる作品がたくさんあります。あなたの心の風向きに合わせて、楽しんでみてくださいね。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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