アドバイス1 「踏み出せない」自分の気持ちを大事に
最初に、つみたてNISAとiDeCoについてのご相談からお答えします。つみたてNISAは関心はあるが、まったく投資経験がなく、踏み出せないとのこと。実は「踏み出せない」、その自分の気持ちを尊重してほしいと思います。しないことは、決して悪いことではありません。無理に始めて大きなお金をリスクにさらしてしまうと後悔することになるのではないでしょうか。周囲に勧められたからではなく、自発的に「したい」という気持ちが未経験の不安を上回ったら、そのときに運用を始めてみても遅くはないと思います。
iDeCoも基本的な考え方は同じです。ただし、ご存知だと思いますが、iDeCoは掛金が全額、所得控除の対象になり、税金が還付されるという明確なメリットがあります。そして、収入を得ているそりさんはその恩恵を受けられます。
一方、デメリットとして、原則、積立金を引き出すことができるのは60歳以降。また、iDeCo口座の開設や管理にコストがかかります。投資信託を選択すれば、元本割れのリスクもあります。しかし、元本確保型の商品(定期預金、保険)を選択すれば、高い投資リターンは望めないものの、コストを差し引いた分の節税メリットはリスクなく得られることになります。
また、「そもそも引き出すこともできないのでは」というのは、どういった状況をご心配されているのかわかりかねますが、現時点では過度に心配されなくていいでしょう。
アドバイス2 準備した資金でどう生活を描くかを考える
次に老後資金についてですが、具体的には、ご主人が65歳のとき1600万円の老後資金が用意されているとのこと。これで足りるかどうかを心配されています。他にも個人年金や妻の退職金を足せば2500万円を超えてきます。さらに貯蓄目的の終身保険もありますね。ここにボーナスからの貯蓄も足し合わせることができます。その上で、今と老後の生活水準が同じだと想定すれば、途中、保険料の支払い額が減ったり、自動車ローンが完済になったりするので、毎月の生活費は21万5000円ほど。ご夫婦の公的年金は手取りでおそらく月額22~23万円。月の生活費は年金でまかなえそうです
こう考えると、年金の受給までにいくら貯蓄形成できるかがポイントになってきそうです。
ただし、これはあくまで仮定の話です。不確定要素も当然あります。それでも、必要以上に不安にならなくてもいいのかなと思います。大事なのは「いくらあれば大丈夫」ではなく、「そのときある資金でどういう生活を描けるか」という発想。要は自分たちの収入に見合った老後をどう過ごすかということだと思います。
アドバイス3 将来の不安を理由に「楽しみ」を排除しない
こうした試算はぜひ定期的に行ってみてください。足りないなと思ったらそのときは働いたり、家計を見直して支出を減らすなどの対応策を考えましょう。とくに、長く働くという意識は個人的には持っていた方がいいと考えます。その理由は、おそらく、そりさんが年齢的に「人生100年時代」に入ると思われるからです。日本人女性の平均寿命は87歳ですが、そりさんがその年代になるまでの間に、さらに平均余命が長くなっている可能性も十分あります。そう考えると、多くの人が100歳まで生きる時代を意識していいのかな、と思います。高齢者にそれほど職場があるだろうかと心配をする人もいるでしょう。しかし、社会全体で
見れば、長く働くことが求められています。収入を得る手段・機会は今後ますます多様化するのではないかと思います。
最後に、ご相談に「老後資金がきびしいなら趣味の海外旅行はあきらめる」とありますが、個人的にはあきらめてほしくありません。お金は本来、使ってこそ私たちの人生を豊かにしてくれるものだと思います。それよりも必要ないな、不要だったなと思う支出を見直すなど、できることをしっかりと行って、まだ、わからない将来を過度に不安視せずに、いま目の前のご夫婦の楽しみを大切にしてほしいと思います。生活に楽しみがあることは、心身の健康につながります。仕事を頑張ろうという気持ちにもきっとなるでしょう。ぜひ、これからもご夫婦で楽しまれてください。
相談者「そり」さんから寄せられた感想
この度はこのような機会をいただき、ありがとうございます。iDeCoとつみたてNISAについて、「踏み出せない自分の気持ちを大事に」というお言葉に、胸のつかえがとれた気がいたします。将来への不安と焦りで収入を増やすことばかり考え、背中を押していただきたく今回ご相談させていただきましたが、リスクを伴う投資ゆえ、不安がぬぐえませんでした。もう少し勉強してからにいたします。家計データと保険の内容に関して特にご指摘がないのは、現状のままで問題ないと解釈してよろしいでしょうか、老後資金について、「月の生活費は年金でまかなえそう」とのことで安心いたしました。ですがご指摘の通り人生100年を想定して、旅行も楽しみつつ、さらに貯蓄に励みたいと思います。八ツ井先生、ありがとうございました。教えてくれたのは……
八ツ井慶子さん
取材・文/清水京武
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