アドバイス1 現状の家計管理であれば心配する必要はない
家計管理、家計収支について現状のままで今後資金不足等に陥らないか、というご相談ですが、結論から言えば、さほど心配する必要はありません。不安にならず、このまま継続されて大丈夫です。具体的に見ていきましょう。家計管理については一切、無駄がなく、申し分ありません。手取り20万円で家賃を支払って、かつ医療費も負担して、月2万5000円の貯蓄は頭が下がります。
現在の貯蓄ペースは年間90万円。今後、60歳までに3回ほど1年間の休職をすると、定年までの勤務期間は12年となりますから、貯蓄は1080万円上積みされます。手持ちの金融資産(貯蓄2200万円、投資商品500万円)と合わせて、資産合計は3780万円。休職する3年間、毎月の生活費が今と変わらないなら17万5000円ですから、3年間で630万円。先の貯蓄からその資金を差し引いても、まだ3150万円残ります。さらに、60歳以降、フルリタイアされたとすると、5年間は無収入ですから、同様に生活費として1050万円を貯蓄から取り崩すことになります。それでも、65歳になった時点で、2100万円が残ります。
65歳以降は公的年金が支給されます。「ねんきん定期便」では支給額75万円とのことですが、定期便を受け取った時期が50歳未満なので、明記されている額は、これまで支払った保険料から算出された額であり、60歳まで保険料を支払い続けるのであれば、当然支給額はもっと増えることになります。仮に、月7万円、年額84万円とすれば、毎月の不足額は10万5000円ほど。その場合、82歳まで手持ち資金=老後資金で不足分を補えます。
アドバイス2 傷病手当金の受給について確認を
それと、これはぜひ確認してほしいのですが、ご相談者は「傷病手当金」の対象になるのではと思います。病気やケガが理由で休業している間、勤務先から一定額の報酬を得られない場合、健康保険加入者であれば、手当金が支給される制度です。金額は直近の1年間の標準報酬月額の平均額のおよそ3分の2。仮に勤務先から休業中に給与が支払われていても、先の手当金より少ない場合、差額分が支給されます。ただし、支給期間は最長で1年6カ月(途中、復帰してまた同じ病気やケガで休業すると、その復帰期間も1年6カ月に算入されてしまう)ですので、休業される全期間とはいきませんが、それでもこの支給は家計にとっても、精神的にも大きいと思います。
休業中も勤務先から一定の給与が出る、あるいは傷病手当金を受給できるとすれば、82歳よりさらに2~4年程度は老後資金で補える年数が延びます。加えて、先の試算は、医療費負担が今と変わらないと想定していますが、一方で教育費や雑費も同様に今と同額としています。これが減っていくなら、老後資金はより余裕が増えることになります。さらに言えば、退職金も考慮していません。
あと、投資について。詳しい投資商品の内訳はわかりませんが、利益が出ているものから徐々に現金化していくことをお勧めします。老後に向けて、できれば投資リスクは取りたくありません。
アドバイス3 これ以上節約や収入アップは目指さず、健康第一に
ともあれ、今後の資金を心配してこれ以上節約する、あるいは無理をして働くことは避けてください。あくまで健康面を最優先に考えるべきです。さらに言えば、趣味などで楽しむことはできる範囲で積極的に行ってほしいと思います。医療については専門家ではありませんが、ストレスを溜めたり、過度の不安に陥ることは、決して身体にはプラスにならないはずです。もちろん、いつも穏やかな精神を保つことは難しい面もあるでしょう。それでも、何であれ日々を楽しむという気持ちが、長い目で見れば、予期せぬ不定期支出を抑え、家計を安定することにつながると考えます。相談者「さのづち」さんより寄せられた感想
深野先生、アドバイスありがとうございました。ひとまず、現状維持で寿命までやっていけそうとのことで安心しました。さらに積み増しとして傷病手当金と退職金が使えることに気づかされました。(ただ退職すると現在の職場の保険組合から外れるので、医療費は上がるでしょう。でも雑費と教育費が下がるので吸収できるかも、ですね)健康第一で、今のペースでやっていきたいと思います。今回はこのような機会をいただきまして、ありがとうございました。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/清水京武
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