アドバイス1 教育資金はその後のマネープランに影響
今後のマネープランということですが、まず現状の家計については、毎月の家計収支はほぼトントンか、月によって若干赤字になるとのこと。ただし、学資保険にも加入し、児童手当はきっちり貯めているわけですから、金額的には頑張って家計管理をされていると思います。ボーナスからも半分以上が貯蓄に回っているので、今はこれで十分。そもそも家計的にもきびしい時期なので、これ以上は節約せず、このまま現状維持ができていればいいと考えてください。貯蓄ペースは、リサリサさんが働き始めると自然と上がっていきます。予定では、上のお子さんが3歳になったときパートを開始。扶養の範囲ということですから、月収にして5万~8万円でしょうか。最初の数年間は保育園費用が発生(下のお子さんが無償化の対象となる3歳まで)しますので、実質の収入増は3万~5万円。それでも、児童手当の貯蓄分を除いても、年間100万~120万円は貯蓄できます。さらにお子さんの成長に合わせて、生活費もアップしますが、何とかこのペースを40~60歳までの20年間継続できれば、2000万~2400万円。これに児童手当の積立分、200万円×2名と、学資保険の満期金200万円、今ある貯蓄を合算すると、計算上、3300万円前後の貯蓄はできることになります。
ここから教育費を差し引きますが、その額は進路によって大きく変わります。仮に、お子さん2人とも希望どおり高校までは公立、大学は私立文系とすれば、中学、高校の費用も含めて、ざっと1500万円。先の3300万円から差し引けば、手元に残るのは1800万円。もしも大学が私立理系なら、さらに250万~300万円はかかると見ておきたいので、多めに見て残りは1500万円。
加えてもしも、自宅通学できないとなると生活費用、いわゆる仕送りが発生します。平均すれば、年間100万円程度なので1人なら400万円、2人なら800万円。ご自宅が通える範囲なら自宅通学の可能性も広がるでしょうが、そうでなければ仕送りは現実的なコストかもしれません。
もうひとつ、まとまったコストとしてクルマの買い替えがあります。2台所有で60歳までに少なくとも2回ずつの買い替えが想定されます。その予算は、抑えたとしても300万~400万円はかかるのでは。したがって、教育費がもっともかかるケース(2人とも要仕送り、大学私立理系)だと、リサリサさんが60歳のとき手元に残る資金は300万円程度となります。
アドバイス2 老後資金の準備には収入アップが欠かせない
次に、老後を考えます。ご主人の退職金は数百万円とのこと。便宜上、先の貯蓄に前倒しで加算して1000万円になるとします。これで足りるかどうかは、ご夫婦の老後の生活費や公的年金の受給額次第ですが、一般的に考えて足りるとは言い難いでしょう。
とくにネックとなるのが、住宅ローンの支払いです。完済はご主人が66歳のとき、リサリサさんは73歳になります。できれば途中、繰上返済をして、返済期間を短縮したいところ。お子さんの進路によっては実施可能でしょうが、ともに私立大でどちらかでも仕送りが発生すると、その余裕もないと思われます。
では、どうするか。現状、保険を含めて家計を見直し、貯蓄率を上げることは難しい。そうなると、あとは収入アップしかありません。
具体的には、対策は2つ。ひとつは、ご夫婦ともできるだけ長く働くこと。60歳以降はもちろん、65歳以降も働いて、なるべく老後資金の目減りを遅らせる。
そして、もっと効果的なのは、リサリサさんが、パートではなく、正社員か厚生年金に加入できる派遣社員、契約社員として働くこと。すぐには無理でしょうが、実際にそれができれば、貯蓄ペースは格段にアップします。さらに、自身の公的年金額も増えますから、老後の資金不足は大きく改善されるはずです。
もちろん、先の試算は教育費が大きくかかるケースを想定していますし、ご主人の昇給も加味していません。一方で、住宅ローンの金利アップで支払いコストは上がります。したがって、将来想定されるリスクを軽減する上では、収入アップが必要になる可能性があることは、頭に入れておいてほしいと思います。
アドバイス3 iDeCoを最大限活用するなら10年後以降
最後に資産運用について。普通預金からの運用を考えられているとのことですが、少なくとも今は、運用リスクは取れません。まずは教育資金を確実に準備するために、確実に元本保証の貯蓄商品で資金づくりをしてほしいと思います。
では、いつから資産運用を始めるべきか。老後資金づくりに特化したiDeCoは、掛金が全額控除という大きなメリットがあるため、リサリサさんにとっても有効な資産運用なのですが、実際に行うなら最短でも住宅ローン控除が終わる10年後以降ということになるでしょう。
住宅ローン控除はローン開始から10年間、年末のローン残高の1%の税額が所得税、さらに残高によっては住民税からも差し引かれる(税額控除。ただし控除は年間40万円まで)ため、iDeCoによって課税額を下げてもその効果は薄い、もしくはゼロに等しいからです。
もちろん、先に触れたように今すぐの資産運用は控えたいので、そのくらい先の方が家計的にもいいでしょう。
確かに、銀行預金はいまだに超低金利。預けている期間がもったいないと考えるのは、当然といえば当然です。しかし、焦る必要はありません。仮に10年後に始めたとしても60歳まで10年以上の運用期間があります。まずはリサリサさんがどんな形であれ働き、高い貯蓄ペースを保つ、そのことを優先してください。
相談者「リサリサ」さんから寄せられた感想
まずは現在の家計管理が大きく間違っていないことに安心しました。運用については今はその時ではないことが十分理解できました。まずは確実な方法でコツコツと貯めていきたいと思います。これからは教育資金や老後の安心のため、子供の成長に合わせて私の働き方を考えていきたいと思います。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/清水京武
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