アドバイス1 当面、親のことは親にまかせ、自分のことを考えて
なみたけさんは立派すぎます。しかしながら、なんでもかんでも自分一人で背負うことはありません。確かに、自分の大学資金のために親が借りた教育ローンの返済をしなければと思う気持ちは大事ですが、奨学金の返済も繰り上げ返済で完済したわけですから、それだけで十分です。とはいえ、もうすでに教育ローンの返済の目途もたったということですから、これ以上、ご両親のために、経済的な援助をするのは、いったんストップしてみてはいかがでしょうか。
お母さまの国民年金の支払いに加え、将来的な介護費用の心配までしていたら、いつまでたっても親への援助は終わりません。特に介護は、何年続くかわかりません。これからの、なみたけさんの人生が、親のためだけに使われることを、一番心配します。
幸い、病気やケガで働けないわけではないのですから、お父さまには、もう少し頑張ってもらって、二人の生活は二人でまかなってもらうようにしたほうがいいでしょう。冷たいようですが、それがご両親のためでもあります。今のままでは、ご両親もなみたけさんに頼りきってしまい、お金の援助をあてにするようになってしまいます。万一、介護が必要になったときには、経済的援助ではなく、公的サービスの手続きなど、事務的な部分で支援していくことをオススメします。もちろん、そのときのご両親の経済状況で、金銭的援助もありうるかもしれませんが、そのためにも、今は、なみたけさんの生活、経済的な基盤を整えることが、なによりも大事です。
アドバイス2 根気よく転職先を見つけて、自分のためにお金を使う
転職は簡単ではないかもしれませんが、それでも、あと1年あります。まずは、転職活動に全力で取り組んで、自分に合った職場が見つかるよう、根気よく探してください。その際、できれば正社員、少なくとも厚生年金加入ができる職場にしてください。将来の年金受給を疑問視されているようですが、受給額が減ることはあっても、厚生年金がなくなることは考えにくく、社会保障が整っている会社で働くことは、給料以外の恩恵があります。ぜひ、前向きな気持ちで転職に取り組んでください。
その上で、現在の収支状況を拝見すると、毎月3万円の貯蓄をし、来年からは6万円に増やせそうです。ただ、なみたけさんの場合は、毎月3万円の貯蓄で十分です。浮いた3万円は、少なくとも半分の1万5000円~2万円は自分のために使ってください。無駄使いをしろということではなく、たとえば、転職に必要な書籍を購入する、場合によっては資格取得するなど、自分の将来につながることにお金を使ってほしいと思います。
さらに、保険は終身保険に加入されていますが、これは現時点で払い済みとし、以降の保険料の支払いをなくします。今後、結婚、子どもを持つというように、守るべき家族ができたときに、あらためて定期保険などに加入すればいいでしょう。現時点では不要です。また、がん保険もがんが心配であれば、やむをえませんが、一般的な医療保険か、共済で十分です。終身保険の払い済みで浮いた1万円も可能であれば自分のために使っていいです。貯蓄してまとまったら、旅行するなど、楽しみのために使ってほしいです。もちろん、将来に備え貯蓄しておくという選択肢もなみたけさんが納得するならOKです。
アドバイス3 投資は生活が落ち着いてからで十分
この1年、毎月3万円の貯蓄ができれば、今ある貯蓄と合わせて170万~180万円になります。これは万一に備えた保険のようなものです。
どうしても転職先が見つからないとなった場合でも、現預金があれば、当面、生活はできます。実家には戻らないと決意されているわけですから、これはなみたけさんにとって、大事なお金です。投資は、生活が整ってから始めても遅くはありません。今、資産運用を勉強しておくのはいいですが、実践するのは、少なくとも転職先が決まってからにしてください。
いずれにしても、なみたけさんは、転職しかり、趣味や娯楽しかり、もっと自分が幸せになることを考えてください。一度きりの人生です。ひとつでも、楽しいと思えることを見つけてください。
説教くさいアドバイスになりましたが、応援しています。転職、頑張ってください。
相談者「なみたけ」さんから寄せられた感想
先生のアドバイスを聞き、自分ではなく親のためにお金を使っていたと感じました。自分が大学を卒業するまでに色々迷惑や面倒をかけたと思っていましたし、親の厳しい家計状況も加わって、支援したい気持ちが年々強くなっていた気がします。家事の手伝いなどお金以外でできることを考え、今後お金で支援するにしても、少し規模を小さくして行うようにしたいと思います。転職活動は「あと~しかない」等と、慌てて考えずに続けていきたいと思います。転職活動だけに限らず、何事も慌てずに前向きに考えることが大切だとわかりました。最後の助言にもありましたが、「一度きりの人生」なのでよく考えてこれから生活していきたいと思います。この度はアドバイスいただきまして、本当にありがとうございました。
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/伊藤加奈子
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