映画

青春の甘さとほろ苦さをユーモアたっぷりに描いた傑作フランス映画

フランスガイドの野口裕子さんは、現地の文化だけではなくフランス映画にも詳しいガイドさんです。今回は、豪華スターをキャストに迎えた傑作青春映画『スパニッシュ・アパートメント』をイチオシしてくれました。

野口 裕子

執筆者:野口 裕子

フランスガイド

 
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セドリック・クラピッシュは、フランスを代表するコメディ映画監督。パリを舞台に若者を中心としたさまざまな人々の日常生活を描く映画を多数撮っています。このクラピッシュ監督が2002年にメガホンを撮り、フランスで大ヒットしたのが『スパニッシュ・アパートメント』。

1年の期間限定でキャリアアップのためにバルセロナに留学するフランス人の若者の体験を描いた物語です。ちなみに、この作品は後に『ロシアン・ドールズ(2005年)』『NYの巴里夫(2013年)』と続き、「クラピッシュの青春3部作」として知られています。
   

豪華キャストがフランス人の等身大の若者を演じる

主人公・グザヴィエを演じるのは、クラピッシュ作品の常連であるロマン・デュリス。グザヴィエの恋人は、『アメリ』で一躍スターになったオドレイ・トトゥが演じています。

ほかにも、バルセロナで出会う人妻役にジュディット・ゴドレーシュ、ルームメイト役にセシル・ド・フランスと有名スターがずらり。フランス映画を少しでも観ている人にとっては超豪華なキャスティングです。
 
余談ではありますが、私はロマン・デュリスとパリのカフェで遭遇したことがあります。そのときのスター然としていない自然でフレンドリーな振る舞いがとてもステキで、以来大ファンになってしまいました。
 

アパートシェアはハプニングの連続

物語は、グザヴィエが父親のコネで役所に就職するものの、キャリアアップのためにスペイン語が必要であることが分かり、1年限定でバルセロナに留学することから始まります。

特にやりたいことがないままなんとなく就職した先に待っていた留学生活。ここで彼は自分の人生を振り返り、本当にやりたいことは何かを真剣に考えることになります。
 
留学中、紆余曲折あってグザヴィエはヨーロッパの若者6人とアパートのシェアをすることになるのですが、この様子がなんとも楽しそうなのです。「イタリア人は大ざっぱ」「ドイツ人は几帳面」「イギリス人のジョークはキツイ」などそれぞれの国の特徴がとてもよく出ていて、思わず「あるある!」と笑ってしまいます。

フランス語と英語の妙な同音異義語のせいで変な誤解が生まれてしまう場面では、ついクスリとさせられます。
 
私も若いころ、アメリカのロスで短期語学留学をしたときに多くの若者と出会い、学業そっちのけで(笑)毎晩クラスメイトと出かけたり、部屋飲みしたりしてとても楽しかったことを思い出しました。

グザヴィエと同じで、初めて異国の地で体験する生活は、驚きや発見の連続で、そこからたくさんのことを学んだのを覚えています。
 

映画を彩る音楽のチョイスもセンス◎

全編に流れる音楽も、この映画の魅力のひとつです。バルセロナ生活の初めと終わりに流れるレディオヘッドの『No Surprise』や、ルームメイトたちと出かけたクラブでかかるダフトパンクの『Aerodynamic』、思わず踊りたくなるラテンリズムが心地よいソニア&セレナの『Que Viva La Noche』など、臨場感のある音楽が物語を盛り上げてくれます。

本作のサントラもイチオシですよ!
 

バルセロナに今すぐにでも行きたくなる!

この映画のもうひとつの主人公といえるのが、バルセロナの街です。グエル公園や海岸バルセロネータ、旧市街、そしてサグラダ・ファミリアなど、名所が次々と登場します。登場人物たちが散歩するなんでもない公園や小道すべてが魅力的に見えてきて、思わず行きたくなってしまいます。
 
個人的には、この作品を観るたびに「青春っていいなぁ」としみじみと感じてしまうのです。 この映画は3部作のうちの1作目として一旦終わりますが、彼らはその後どうなったんだろうと気になってしまった人へ。その続きは2作目、3作目で描かれています。1作目を観たら、ぜひ3部作をコンプリートしてくださいね!
 
DATA
スパニッシュ・アパートメント

監督:セドリック・クラピッシュ
時間:122分
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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