血管腫と血管奇形の違い……厳密には別物だがどちらもレーザー治療がメイン
血管腫治療には皮膚科でのレーザー治療が有効です
血管腫とは、血管が異常に増殖してできたできもののことを指します。そのため厳密には血管が拡張してできた「血管奇形」は含みません。毛細血管が拡張してできた単純血管腫や静脈が拡張してできた海綿状血管腫は、厳密には「血管奇形」であり、血管腫ではないのです。
とはいえ、血管腫、血管奇形ともに治療としてはレーザー治療がメインになりますので、一般的に理解する上では分けて考える必要はないでしょう。
血管腫のレーザー治療効果・有効性
血管奇形も含め、血管腫のメインの治療法はレーザーです。シミ治療のレーザーとは異なり、血管をターゲットとした「パルスダイレーザー」を通常使用します。機種としてはブイビームという名前で知られています。5年毎程度にレーザーがグレードアップされるため、10年前に比べると少ない副作用で効果的に血管腫を治療できるようになりました。現在日本で最新の機種はVbeam2と呼ばれ、アメリカではさらに1世代上の機種が使われ始めています。それでは病気ごとに治療効果を見てみましょう。
■単純血管腫のレーザー治療効果
単純血管腫は正確には血管奇形ですが、血管腫の治療としては保険の皮膚科クリニックでは最も相談が多いものです。保険適応で治療が可能で、3ヶ月おきに5回ほど治療するとかなり赤みが薄くなります。
小児の時期でも大人になってからでも治療は可能ですが、皮膚が薄い小児の時期の方がレーザー治療の効果は高いです。子どもの時期に受診してしっかり治療をしたい場合には、年齢が低い時期での治療開始をおすすめしています。もちろん大人になってからの治療も保険適応で可能です。
■乳児血管腫(いちご状血管腫)のレーザー治療効果
こちらも保険適応で治療可能で、3ヶ月に一回は保険でカバーされます。乳児期での治療となりますので、コストは公費負担で自己負担がないことが多いです。
乳児血管腫は自然消失することもあるのでレーザー治療が必ずしも必要ということはありません。しかしレーザーを打つことで、乳児期の血管腫が拡大傾向である時期に増大しすぎることを抑え、治癒後の血管腫による皮膚の変化を軽減できることがあります。レーザーを強く打ちすぎると水疱やかさぶたになって逆に治癒後の痕が目立ってしまうことがあるので、その点には注意が必要です。
乳児血管腫ではヘマンジオル(成分名はプロプラノロール)というシロップの飲み薬があります。1歳以下で飲み始めると乳児血管腫の拡大を抑えられることがあります。副作用もある薬なので、いざというときに対応ができる大きな病院だけで治療を行っています。
血管腫で出血が止まらない場合に考えられること
血管腫は血管が豊富にあるので、一度出血が始まると止まりにくいという特徴もあります。強く圧迫を続ければ出血が止まることが多いので、ガーゼを当ててテープで数時間強めに固定しておくといいでしょう。それでも止まらない場合はクリニックで止血する必要があるかもしれませんので、皮膚科もしくは救急のクリニックを受診しましょう。血管腫のレーザー治療の副作用・注意点
パルスダイレーザー(ブイビーム)はほかの皮膚を強く傷害することなく血管を強く治療することが可能な優れたレーザーですが、いくつか副作用が起こる可能性はあります。一番多いものは一過性の紫斑(紫色の内出血)と浮腫(むくみ)です。打った場所の皮膚表面の血管が壊れることで内出血します。たとえ紫色になった場合も1~2週間で吸収されて自然に消えるので、問題はありません。顔に内出血が出た場合は化粧で隠せますが、それでも気になる方もいらっしゃると思います。その場合は出力を弱めて打つことができますが、それに応じて効果も薄くなります。むくみが出た場合も数日でひきます。
レーザーの反応が強く出た場合に起きる可能性があるのが、かさぶたや水疱です。強くレーザーが血管に反応した場合には、皮膚が傷害されてやけどに近い反応が起こることがあるためです。レーザーを使うときにはかさぶたや水疱ができないよう強さを調整しますが、反応には個人差があるので、かさぶたや水疱のリスクはゼロにはできません。これらが起きてしまった場合にも2週間程度で治りますが、そのあとに瘢痕(はんこん)と言う傷跡がのこる可能性があります。傷跡が残ってしまった場合も、半年程度である程度は元の状態に戻っていくことが通常です。
上に挙げたような副作用が出る可能性はありますが、かさぶたや水疱は比較的まれであり、シミのレーザーよりも副作用リスクが少なく治療することが可能です。