亀山早苗の恋愛コラム

「愛されたいだけなのに」逃してしまう彼女の恋愛遍歴が…

愛情はさじ加減を見ながら分配するものではない。無条件に人を愛し、損得顧みずに愛を注ぐ。それが本来のものだろう。ただ、「愛されたい」あまりに盲目的に追従すると、後悔だけが残ることもあり得る。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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「愛されたい気持ちが強すぎて」愛を逃してしまう

愛されたい

愛情はさじ加減を見ながら分配するものではない。無条件に人を愛し、損得顧みずに愛を注ぐ。それが本来のものだろう。ただ、「愛されたい」あまりに盲目的に追従すると、後悔だけが残ることもあり得る。

 

 

「ずっと愛されたいと思っていた」

とある地方の小さな町で生まれ育ったチナツさん(40歳)は小学校に入る前に父を亡くした。母は病弱で、親戚の援助でなんとか生活していたという。

「家が貧乏だから、私は給食費も他の子より少なかった。それが原因でよくいじめられました。学校に行きたくなかったけど、家で寝ている母のもとにいるのも寂しい。だからしかたなく学校へ行っていたけど」

やることがないので勉強していた。中学生までいつも学年トップ。それでも彼女の気持ちはいつも飢えていた。

「母は褒めてくれないし、友だちもいない。今思えば、母は夫を亡くしたショックからなかなか立ち直れなかったんでしょう。大恋愛で結婚したらしいので。でも当時の私は子どもだったし、母にも愛されず、居場所がなかった」

高校は地元の進学校へ。そこでも優秀な成績をおさめたが、愛に飢えた状態は続いていた。求めても得られないものは求めないほうがいいのだとあきらめが勝っていく。高校を出てすぐ東京の大学の二部に入学した。昼間はひたすら働いた。

「そのころ母はいくらか元気になって少し働けるようになっていたんですが、どうやら外で恋愛していたみたいです。娘を愛するより前に、自分が癒されたかったんでしょう」

チナツさんは、上京と同時に精神的に母を見捨てた。

「愛されるというのがどういうことなのか、よくわからなくなっていた。だから働いて勉強してお金を貯めよう。それしか考えませんでした」

 

 

必死で愛したけれど

そんなチナツさんだが、20歳のとき大学の同級生と恋に落ちた。だが、「あなたがいないと生きていけない」と依存し、怖がった彼は半年ほどで逃げたという。

好きになった男性との距離感がつかめなかったのだ。相手が変わっても彼女の姿勢は変わらず、20代は恋愛が長続きしなかった。

一方、大学を卒業して転職した職場が合っていたのか、仕事は順調だった。

「親に愛されなかった私だから、いい親になれるに違いない。そう思っていたら、30歳になるころ妊娠したんです。でも相手に言ったら結婚するつもりはなかったと言われて。ひとりで産もうと決めたんですが、心労がたたったのか流産して」

なにもかもに絶望し、自殺を図るも失敗。助けてくれたのはアパートの隣人の男性だった。そして同世代の彼とつきあうようになった。

「最初は穏やかでいい関係でした。愛されるってこういうことかなとも思った。だけど次第に彼、私のことをうっとうしがるようになっていったんです。私は毎日、彼のために夕飯を用意して待っているのに飲んで帰ってきたりして。『一緒に食べようって言ったのに』と言うと、『女房面するな』と怒り出したりする。そのうち、突然引っ越していきました。1年くらいつきあったかな」

結局、またも愛されなかった。愛されたい、愛情を実感したい。その気持ちが彼女の中でふくれあがっていった。だが、そんなとき弱みにつけ込んでくる男もいる。次につきあったのは、小学校時代の同級生だった。

「実家にはほとんど帰らなかったんですが、5年ほど前、たまたまお盆に帰ったときに道でばったり会って。その彼も東京に住んでいるというので、じゃあ、東京で会おうねと連絡先だけ交換したんです。当時、彼がどういう子だったか記憶にないんですが、東京で再会したらなんとなく懐かしいような気になって」

つきあい出すと、彼からいろいろな健康食品を紹介されるようになった。元気がなさそうだからこれを飲んだほうがいいとか、女性は鉄分が不足しがちだからこれがいいとか。

「最初はプレゼントしてくれたんですが、悪いから買うよというと、どんどん買わされるようになりました。断ったら彼は私のそばからいなくなる。そう思うと怖くて断れなくて」

必死に貯めた数百万円のお金はあっという間に吸い上げられた。そしてもう預貯金がないと言うと彼は連絡を絶った。

「もう生きる気力も死ぬ元気もない。そんな状態が続いています。仕事を辞めたらすぐに食べられなくなるので会社には行っていますが、意欲が薄れていると上司からも指摘されています。40歳にもなってなにをやっているんだろうと思う半面、どうして私は誰にも愛されないのか、生きている価値がないのかと……」

彼女はほろほろと涙をこぼす。がんばってとも言えない。ただ、決して彼女が悪いわけではない。

「愛されたいと願うことはいけないことなのかな」

彼女がふと漏らした言葉が心に刺さった。
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