20代のときからライターを続け、現在50代後半の私。同世代の仲間が違う業界に転職したり、落ち着いた生活をしたりしているのを見ると、ふとこのまま続けていいのかなと思ったりすることも。そんなモヤモヤした気持ちのときに出会ったのが映画「グランドフィナーレ」でした。
人生に訪れるいくつかの転機。どの道へ進むか、やめるか続けるかなど悩んだとき、一つの映画が答えを運んでくれることがあるのです。
世界的に有名な音楽家が語る「仕事も人生も終わった」
有名な音楽家だった主人公は、引退してアルプスの高級ホテルで隠居生活を送っていました。親友の映画監督は新作映画の準備中なのに、仕事も人生も終わったんだと死の迎えを待つ主人公。
名誉ある英国女王からの指揮の依頼も断ってしまうのですが、あることをきっかけに、80歳にして人生を再び歩みはじめる物語です。
住む世界は違っても、みんな同じように老いていく
主人公は裕福で自分とは違う世界の人物ですが、老いは平等に訪れます。新しいものに対する感覚がスロウになったり、気力が萎えていったりする中で、娘から音楽に没頭していて家族を顧みなかったことを罵倒されます。
病床の妻を思い、気落ちする主人公。年を取ると自身のことだけでなく、家族の問題も持ち上がってくるものです。
人生の再スタートは何歳からでもできる!
そんなとき、親友に起こった悲劇が彼の気持ちをゆさぶります。自分を信じてチャンスをものにしようとしていた同世代の親友に比べ、自分の限界を決めていた主人公。「バカンスは終わり、人生がはじまる」。彼は80歳で、再び音楽の世界に戻り、指揮棒を握る決心をするのです。
この映画を観て、年齢を理由に尻込みすることはないんだ、今のままやりたいことをやろうと気分が晴れました。さらにこの映画の素晴らしいところは、重くなりがちな老いのテーマを、映像と音楽により美麗なビジュアルで魅せきっているところです。
観る人の年齢によって感じ方が変わりますが、どの世代でも何か胸に響くものがあるはずなのでぜひ一度観て頂きたい作品です。
DATA
グランドフィナーレ
監督&脚本:パオロ・ソレンティーノ
出演:マイケル・ケイン、ハーヴェイ・カイテル、レイチェル・ワイズ、ポール・ダノ、ジェーン・フォンダ
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