同じ匂いで時代を超える奇才 シソンヌ じろう
『今日から俺は!!』『俺のスカート、どこ行った?』で個性的な教師を演じ、『西郷どん』『いだてん~東京オリムピック噺~』など大河ドラマにも登場しているシソンヌのじろう。彼が演じる計算高かったり、どこか屈折したりする人間に、なぜか私たちは納得し、温かく見てしまうから不思議だ。
女性の写真1枚からふくらませた妄想短編小説『サムガールズ~あの子が故郷に帰るとき~』が話題となり、コントで演じたキャラクター ・川嶋佳子の名前で執筆している作品は評価が高く、映画化もされた。『卒業バカメンタリー』の脚本も担当した奇才・じろうの引き出しからは、まだまだ何かが飛び出すはずで、期待したい。
人間の喜怒哀楽を3D化させる可笑しさと哀愁と 東京03 角田晃広
喜怒哀楽を誰よりも大きく変化させる角田晃広。「発覚する→言い訳する→破綻する」一連の流れの中で見せる感情の揺れが彼の真骨頂だ。感情を爆発させたあとの絶妙な引き潮、そこに漂う哀愁や切なさは見事。
一度だけライブで観覧したが、東京03のメンバー全員が、どんよりした空気をさりげなく引き受け、風向きを変える手腕はまさにプロだった。『半分、青い』『いだてん~東京オリムピック噺~』に続き7月スタートのNHKドラマ10『これは、経費で落ちません!』に出演。白いカッターシャツとメガネが似合いすぎる角田晃広の爆発ぶりを楽しみたい。
いくつもの違う顔をごく自然に見せる 我が家 坪倉由幸
双子のパパを演じた『わたし、定時で帰ります。』では、自然体で私たちを癒やし、『アンナチュラル』では、工場での過酷な労働に笑顔で耐える優しい父親の姿で私たちを泣かせた坪倉由幸。冷静に傍観するコントの時とは違う顔を、ごく自然にみせた。彼の魅力はここにある。もともと持っていた俳優眼と努力が平熱のまま熟してきたのだろう。
ネスレシアターの『踊る大宣伝会議 Season2』の、適当すぎるプロデューサー役では、フワっといい加減な坪倉由幸らしい顔が堪能できるし、植木等を飄々と演じた『トットてれび』でのスーダラ節も新鮮、夢多き時代にみごとに溶け込んでいた。さりげなくいくつもの顔を持つ男に注目だ。
真っ新からスタートした深い演技が胸にしみる 大橋晃(アキラ100%)
『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』にゲスト出演したときは、彼だと気づかなかった人も多いのではないだろうかと思うくらい、“自分臭”を消し去っていたアキラ100%。横尾初喜監督の映画『ゆらり』と『こはく』には本名で出演している。
人間のはかなさややるせなさを静かに絞り出しながら見せ、真っ新から出発した演技は見ている人の心に響く。元々俳優志願だった彼は今、演じることに謙虚に全力で向かい合っていて強い。まだまだ目が離せない。
40歳で新しいフィールドに挑戦! トレンディエンジェル 斎藤司
40歳にしてまだまだ進化を続けるトレンディエンジェルの斎藤司。テレビドラマや映画では斎藤司らしい演技で私たちを楽しませてきた彼が、2019年、舞台『レ・ミゼラブル』で真価を見せている。
歌がうまいということだけで勝負できるほど甘くない世界。発声はもちろん視線の置き方、指先の使い方、いくつもの課題を自分のものにするために努力を続けてきたのだろう。舞台の成功で、彼のさらなる進化が見えてくる日は近い。
以前、お笑い芸人の記事を書いてから、時間が経過したわけだが、俳優として活躍する芸人が増えたということはもちろん、今までとは違う新しい視点を有した才能の開花や、甘んじることなく真摯に取り組み、謙虚な奮起に驚いている。さらに今後活躍するだろう彼らを応援したい。