皮膚・爪・髪の病気

気になる脇汗・脇のニオイ…皮膚科で受けられる対策法

【皮膚科医が解説】脇は全身の中でも特に汗腺が多く、タンパクや脂質を含む汗が出るアポクリン腺があるためにニオイがきつくなることがあります。清潔にして食生活を整え、制汗剤などを利用するのも有効。皮膚科では塩化アルミニウムや抗菌剤の処方の他、ボトックス(ボツリヌストキシン)注射などで処置することもできます。

野田 真史

執筆者:野田 真史

皮膚科医 / 皮膚の健康ガイド

脇汗や汗のニオイが気になるのはなぜ?

気になる脇汗・脇のニオイ…皮膚科で受けられる対策法

見た目もニオイも気になる脇汗。制汗剤などで抑える他、皮膚科で治療することもできます


汗は背中や頭皮など全身から出るものですが、特に脇や手足には汗腺が多く存在しているため、汗をかきやすい部位です。

特に脇汗のニオイが気になるという方がいるようですが、これは「アポクリン腺」から出る汗が含まれるためです。汗を分泌する汗腺には「エックリン腺」と「アポクリン腺」の2つがあります。通常のサラッとしたほぼ無臭の汗はエックリン腺から出るものです。脇と陰部にはアポクリン腺もあり、アポクリン腺から出る汗にはタンパクや脂質が含まれています。それ自体はニオイがないのですが、脇などの皮膚表面にいる細菌によりタンパクや脂質が分解されると、ニオイが発生します。アポクリン腺からの分泌量や皮膚表面にいる細菌の状態は個人差がありますし、年齢によっても変化しますので、ニオイにも変化が出ます。
 
<目次>
 

脇汗の量やニオイを抑える方法……清潔を心がけ食生活を整えることも有効

汗そのものではなく皮膚表面にいる細菌の状態でニオイが変わるので、毎日石鹸できちんと洗い、肌着や服をマメに変えることは大事です。また、肌が荒れていると脇にアカがたまりニオイがきつくなりますので、がさがさしたり赤くなったりしている場合には皮膚科を受診しましょう。湿疹やカンジダというカビが原因の皮膚炎のことがあります。
 
肥満の人は男女問わず脇のニオイがきつくなります。高カロリー食は避け、定期的に運動をし、体型を維持することは年齢問わず大切です。
 
市販の多汗症用の薬にも入っている塩化アルミニウムという成分は汗の分泌を抑えるので、脇汗やニオイに有効です。皮膚科のクリニックでも保険適用ではありませんが、処方していることが多いです。市販薬には皮膚表面での細菌の増殖も抑えてニオイを改善できるようにと、消毒薬が含まれていることもあります。脇汗には保険適用でエクロックゲル、ラピフォートワイプという2つの処方薬があり、皮膚科ではよく処方しています。
 

制汗剤などで脇汗を抑えても体に害はない?

脇汗自体を押さえる市販のスプレーなどもよく目にしますが、本来出るはずの汗を抑えてしまって大丈夫か気になる方もいるようです。脇汗を抑えても体の他の部位から汗は出ますので、体温調節に異常をきたすことはまず考えにくいです。
 
脇汗を抑える成分にはアルミニウムを用いていることが多く、汗管という汗が通る管を詰まらせて汗を出にくくするといわれています。長期効果は持続しませんので、毎日使う必要があります。
 
かぶれを起こして赤くなる可能性はありますが、それ以外に大きな副作用はありません。市販の製品には殺菌成分など制汗成分以外も含まれていることがありますので、その場合はさらにかぶれるリスクは上がります。赤くなってしまった場合は製品を使うのをやめ、皮膚科に相談しましょう。
 

皮膚科で受けられる脇汗治療・脇汗のニオイ治療・費用の目安・効果・副作用など

■エクロックゲル(ソフピロニウム臭化物)
最近脇汗に保険適用になった塗り薬です。汗を出すシグナルをブロックすることで、汗を止める作用があります。まれにかぶれることがありますが、大きな副作用はありません。1日1回脇に毎日塗ります。効果には個人差があります。私自身の経験では、よく効いたので毎年やっていたボトックス注射が必要なくなったという患者様もいましたし、逆にエクロック単独では効果不十分だったのでボトックス注射を行った患者様もいました。

■ラピフォートワイプ(グリコピロニウムトシル酸塩水和物)
エクロックと並んで保険適用になった多汗症の処方薬で、名前の通りワイプで拭き取るタイプです。エクロックと似た成分になりますが、塗るのが使いやすいか、拭き取る方が使いやすいかで、選ぶのがいいでしょう。

■塩化アルミニウム
保険適用はないですが、塗り薬なので最も簡単に使えます。多くの皮膚科クリニックで処方されています。市販薬にも制汗剤として含まれていることが多いですが、濃度がさらに高いものもクリニックでは処方することができます。手足など、脇以外の汗でも使えます。
 
■抗菌剤の塗り薬
通常は擦り傷やヤケドなどに処方することが多い抗生剤が入った塗り薬ですが、脇の皮膚表面の殺菌を目的に処方されることがあります。細菌の増殖を抑えることで、脇のニオイに効果があることがあります。
 
■抗真菌剤やステロイドの塗り薬
脇表面が荒れて、がさがさやジュクジュクしている場合には、湿疹やカンジダといったカビの繁殖した病気の場合があります。皮膚表面が荒れると、ニオイがさらにきつくなりますので、それをしっかり皮膚科で治療することでニオイがおさまることがあります。皮膚の表面ががさがさしている、赤くヒリヒリしている場合には皮膚科を受診しましょう。
 
■ボトックス(ボツリヌストキシン)注射
額、眉間、目尻といったシワを抑えることで知られるボトックス注射ですが、脇や手足に打つことで、汗を止めることができます。注射なので痛みはありますが、よく冷やしてから注射、もしくは塗り麻酔を塗ってから注射すれば痛みを抑えられます。1cm間隔程度で、密に少量ずつボトックスを浅く注入します。脇に関しては保険適用で行っているクリニックもあります。1度注射すれば半年ほど効果がもちますので、頻回に塗ったりクリニックに行く必要がないところは大きな利点です。
 
■ミラドライ
脇多汗症用の機械で、電子レンジのような原理、汗腺を破壊することで脇の多汗症、ニオイを改善させます。1度の治療で半永久的に効果が持続するといわれていますが、実際には1回ではなく複数回の治療を要することもあります。
 
■手術
汗腺を除去することで、脇のニオイを改善させます。
 

脇汗やニオイに悩まれている方に

マメに洗う、皮膚をいい状態に保つ、食生活や運動に気をつけて体重増加を防ぐ、といった方法は最初に試みる必要がありますが、それでも脇汗やニオイが気になる方は多いです。汗が出るのを抑える、ニオイが出にくいように細菌の繁殖を抑える、など改善させる手段がありますので、長い間お困りの場合は皮膚科を受診してみましょう。塗り薬、注射薬など、改善させる手段は以前よりも多くなっています。
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