貯蓄

貯蓄率を上げる秘訣は「明日への希望」だった!

オハイオ大学を筆頭とした研究によると、「人生はもうおしまいだ……」という感覚が貯蓄率が下げてしまうことが確認されました。

中原 良太

執筆者:中原 良太

エビデンスに基づく資産活用&マネープランガイド

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悲しみが浪費を招く!? 驚きの研究結果が明らかに

先日、「悲しい感情が人生を台無しにするかもしれないぞ!」という記事を書きました。この記事では、ハーバード大学の研究(1)を基に「悲しい気持ちを持つと自制心が崩壊し、浪費に繋がる可能性がある」という話をしました。
 
ややベタな話ですが、「失恋」「裏切り」「訃報」などで深く傷ついた人が、お酒・タバコ・ギャンブル……と、自暴自棄になる姿は容易に想像できます。心に傷を負った人ほど、お金の使い方を間違えるといわれると、なんとなく合点がいくでしょう。
 
僕らは「人生はもう終わりだ!」と感じると、自暴自棄(ヤケ)になります。そして、普通なら絶対にやらないような失敗をしでかしやすくなるのです。
 

大きな自然災害の直後には、貯蓄率が下がる!?

「悲しい感情が人生を台無しにするかもしれないぞ!」という話に関連した研究が、もう1つあります。これは、オハイオ大学を筆頭とした研究(2)です。研究によると、「人生はもうおしまいだ……」という感覚が、貯蓄率を下げてしまうことが確認されました。
 
同研究では、地震災害と貯蓄率の相関を調査しました。その結果、「近くで大きな地震が起きた地区」の人は、地震発生後から貯蓄率が著しく下がることが確認されました。これは、住民たちが「人生はもうおしまいだ!」「貯金なんかしても無駄だ!」と考えてしまうのが原因だと考えられます。
 
つまり、「明日に対する希望」を持てないと、僕らの自制心が崩壊する!ということです。逆にいえば、「明日に対する希望」を持つことで、僕らは自制心をブーストさせることができます。
 

貯金に不可欠な要素は、「明日に対する希望」

では、「明日に対する希望」は、どのようにすれば持てるのでしょうか? 良い方法が1つあります。それは、「身の回りの出来事に感謝をする」という方法です。
 
ハーバード大学の研究(3)によると、「感謝の気持ちを持つことで、僕らの自制心がブーストする!」ことが確認できました。この研究では、被験者を「中立(Neutral)」「幸福(Happy)」「感謝(Gratitude)」の3パターンに分けました。そして、グループ毎に被験者の自制心の強さを測定したのです。
 
自制心を測定する方法は、「将来のために今を犠牲にできるか?」を数値化した尺度である「遅延割引」を利用しています。
 
その結果、「感謝の気持ちを持つと、将来のために我慢ができる(=自制心が高まる)」ことが確認できました。この実験で面白いのは、単純に「幸せだなぁ」と感じるだけでは不十分で、「恵まれているなぁ」と、感謝の心を持つことに意味があるという発見でした。
 
貯蓄率を上がる秘訣は?

日々の暮らしの中にある、ちょとしたことに感謝の気持ちを持つこと

 
確かに、「なんとなく、今は気分がいいぞ!」と漠然とした幸福感よりも、「自分はなんて恵まれているんだ!」という明確な幸福感のほうが、より充実した気分を味わえる気がしますよね。

てはじめに、寝る前の5分だけでもよいので「今日あったことに感謝する時間」を作ってみましょう。できれば、手帳や日記などを使って、「感謝を紙に書き出す」のが効果的です。これだけでも、「お金を貯めようかな……」という気持ちが、グンと高まると思いますよ。
 
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【参考文献】
 
  1. 論文:Jennifer S. Lerner, Ye Li, and Elke U. Weber, 2013, "The Financial Costs of Sadness", Psychological Science, 24(1), pp. 72-79
  2. 論文:David Desteno, Ye Li, Leah Dick, and Jennifer S. Lerner, 2014, "Gratitude: A Tool for Reducing Economic Impatience", Psychological Science, 25(6), pp. 1262-1267
  3. 論文:Mateusz Filipski, Ling Jin, Xiaobo Zhang, and Kevin Z. Chen, 2019, "Living like there's no tomorrow: The psychological effects of an earthquake on savings and spending behavior", European Economic Review, 116, pp. 107-128
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