アドバイス1 心苦しくても援助は親族に頼る
いろいろご心配かと思いますが、まずは「現状」から考えます。基本的な生活費が現在、月16万7000円。この上にご主人の医療費として現在、自己負担額が月4万4400円(高額療養費制度の多数利用の上限額)、さらに訪問介護費用として月1万5000円がかかるとすれば、22万6400円となります。それでも、月間ベースでは家計赤字とはなりません。とは言え、貯蓄がゼロである以上、何かあれば資金不足に陥るでしょう。ただし、ここで大事なことは、キャッシング、ローンは新たにしないこと。これは必ず守ってください。親兄弟にはすでに借りていて、これ以上迷惑はかけたくないという思いは十分理解できます。だから、高い金利を支払ってでも金融機関等から借りてしまう。しかし、それはもういけません。現在すでに3カ所からの借り入れがあります。まずすべきは家計の立て直しです。そのためには、これ以上固定支出を増やすべきではありません。心情的に辛いでしょうが、頼れるのであれば、今はまだ親族に頼るべきだと思います。
アドバイス2 公的支援で家計の立て直しは十分可能
次に「今後」を考えます。ハナボウさんが真に望まれているのはご主人の容態が回復することでしょう。しかし、マネープランはより現実に沿った形で、今後に向けて必要な資金をどう準備するかということ。その意味で、今考えるべきは、ご主人が「亡くなられた後」ということになります。まず家計の立て直しですが、先に触れたとおり、ご主人にかかる医療費がなくなれば、月5万円前後の貯蓄はできます。ただし、返済中のカードローンに、さらに現在滞納中のものが返済開始となれば、貯蓄分は半減するかもしれません。それでも、家計は貯蓄体質にはなるはず。さらに、一人親となれば、各自治体での就業支援もありますし、児童福祉手当の受給資格も生まれます。
それと、大きいのはやはり遺族年金です。ご主人に死亡保障はかけていなかったとのことですから、よりその重要性は増します。遺族基礎年金は、年額78万100円に子どもの加算額が第1子で22万4500円ですから、計100万4600円。月額で約8万3000円。しかも遺族年金は老齢年金と異なり、非課税です。受給期間はお子さんが18歳を迎える年度の3月末まで(※)。単純に計算して、8年間受給すれば800万円。遺族年金だけで教育費は十分用意できます。
また、詳細はここではわかりませんが、遺族厚生年金の受給の資格がある可能性があります。であれば、さらに家計にはさらに余裕が生まれます。それも含めて、早いうちに自治体や行政機関の担当窓口に、受給要件や手続きなどを確認しておきましょう。
ともあれ、家計立て直しは十分可能です。これまでの経緯があり、借り入れはありますが、家計管理は基本的にしっかりしています。カードローン等の返済が終われば、貯蓄ペースも上がっていきます。焦らず、貯蓄を継続していくことです。
アドバイス3 自身の健康管理を最優先に考える
そして、これがもっとも大事なことですが、ハナボウさんが心身ともに健康でいること。今も、そして今後しばらくは心労が重なるはず。それが、受け止めなければならない現実です。しかし、お子さんを守れるのはハナボウさんだけです。したがって、自分自身を大事にすることを優先させなくてはいけません。普段から健康に留意し、しっかり食べ、そして働くだけでなく、お子さんとともに生活を楽しむ工夫もしてください。そのための支出まで削ることはありません。節約一辺倒では、息が詰まります。予算を決めて、その範囲で楽しめばいいのです。以前は、借金返済のために副業もされていましたが、今後はしないでください。根を詰めて、倒れでもしたらそれこそ元も子もありません。
親御さんなどからの借り入れは、少しずつ返済していけばいいと思います。まずは自分とお子さんの生活費、そして教育資金を確保し、貯蓄もしていく。その上で、無理のない範囲で少しずつ返済していけばいいのでは。金額ではなく、貯蓄と同様、継続していくことの方が大事だと考えます。
最後に保険について。保障が何もないのはやはり心配です。一人親世帯となればなおさらのこと。まず、ご主人の親御さんがかけている保険の保障内容を確認し、それが死亡保障、医療保障を確保するものでなければ、新たに加入となります。共済で構いません。保険料は2000円前後、入院5000円、病気死亡500万円程度のベーシックな保障で十分です。検討してみてください。
(※)障害等級1級ないし2級の子どもは20歳を迎えるまで
相談者「ハナボウ」さんから寄せられた感想
今後も新たな借入をせずに、貯めて子どもの学費に備えたいと思います。今回も相談に乗って頂き誠にありがとうございました。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。
取材・文/清水京武
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