アドバイス1 自転車操業時代の家計を忘れずに、いまを継続しよう
貯蓄を使い果たしてしまった理由が夫の起業ですから、ある意味、仕方のないことといえます。それを立て直すためにここ数年、家計を徹底的に絞って必死に努力をしてこられたのでしょう。そもそも住宅ローンを完済していることからもみちさんはしっかり家計管理ができる人ですし、支出内訳も頑張りがよくわかるいい家計になっています。しかし、貯蓄ができるようになったここからが本番です。貯金を使い果たし自転車操業状態になったときの苦しさを忘れずに、この絞った家計をしっかり維持してください。というのは毎月30万円程度を貯められていると、つい安心してしまうからです。自営業者に過剰な貯蓄はありません。社会保障が薄い分、自分で財産形成をして身を守らなくてはいけませんから、貯められるときにめいっぱい貯めるのが鉄則。収入が増えたら必ず貯蓄も増やすようにしてください。
節約にはなりませんが、支出で気になる点がひとつあります。それは、夫の死亡保障です。現在の保険は定期保険なので10年後に保険料が上がります。くわえて自営業者は遺族年金が少ないので、もう少し保障を増やしておきたいところ。保険料はほとんど変わりませんが、65歳くらいまでを保険期間とし、最高保障額で計5000万円程度の収入保障保険に変更することをおすすめします。
アドバイス2 まずは教育費。老後資金はその後で
みちさんが考えていらっしゃる通り、まずは教育費を貯めてください。目標は2人分の大学資金=1000万円。現在の貯蓄ペースならば3年程度で貯められるはずです。このお金が手元に準備できれば、かなり気が楽になるのではないでしょうか。末子が大学を卒業する時点で夫は54歳ですから、老後資金は教育費が終わってからでも間に合います。70歳くらいでリタイアしたいとのこと。自営業は退職金がない、年金が少ないというデメリットがありますが、健康であれば何歳になっても働けるという強味があります。リタイアする年齢が遅ければ遅いほど準備する老後資金も少なくて済みますから、できるだけ長く働くことも視野に入れておくといいでしょう。
お金の貯め方は現状のiDeCo、つみたてNISA、経営セーフティ共済といった節税できる制度を利用しながら貯蓄していく方法でいいと思います。普通預金に500万円程度貯まったら、老後資金を少しずつ貯めるという意味から小規模企業共済の積み立てを始めるのもいいでしょう。iDeCoは60歳まで払い出せませんが、小規模企業共済は掛金の範囲内で低利の融資を受けることができます。自営業者にとっては心強いでしょう。
アドバイス3 みちさんはすぐに社会保険への加入を
厚生年金への加入を迷っているとのことですが、月収が手取りで15万円ということは、週の労働時間や月の労働日数が一般社員の4分の3以上ではありませんか? そうであれば加入は「交渉すれば」ではなく「義務」ということになります。事業所は違反状態ということになりますし、加入はみちさんにとってもメリットがありますからすぐに加入してください。具体的に説明すると、夫が国民年金ということは、国民年金保険料1万6410円(2019年度の場合)を夫婦2人分払う必要がありますが、厚生年金に加入すれば夫の分だけになります。また日本人の平均寿命は男性81.09歳、女性87.26歳(2018年「簡易生命表」より)ですから、その差6.17年。みちさん夫婦は2歳差ですから計算上は8.17年の間、1人分の年金で生活していかなくてはいけません。国民年金の場合、遺族基礎年金は18歳になる年度までの子や、その子を持つ配偶者など要件を満たさないと受け取れませんが、厚生年金に加入すればみちさん自身の老齢年金受給額を増やすことができます。公的年金は終身で受給できますから、長生きすればするほどメリットは大きくなります。
また国民健康保険料には加入者数によってかかる均等割額等があるので、子どもはみちさんの扶養家族にしたほうが保険料は安くなるかもしれません。ただし、これは所得などによって変わってきますから、お住まいの市区町村の担当窓口で試算してもらうといいでしょう。
相談者「みち」さんから寄せられた感想
診断ありがとうございます。漠然とした不安がありましたが、アドバイスのおかげでこの調子で着実に家計管理、貯蓄を行っていこうと改めて決意できました。収入保障保険は以前から気になっておりました。早速検討しようと思います。また社会保険の具体的なメリットに加え、扶養家族についても目から鱗でこちらも早速相談窓口に行ってみようと思います。これからも過去を教訓に頑張っていきます。誠にありがとうございました。教えてくれたのは……
藤川太さん
取材・文/鈴木弥生
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