根強い人気の毎月分配型投資信託
平成の約30年間を前半と後半に分けると、後半は毎月分配型投資信託の栄枯盛衰が見られました。一時期、毎月分配型投資信託でないと売れないとわが世の春を謳歌した時代もありましたが、運用成績の低迷による分配金の引き下げ、顧客本位の運用徹底を求める金融庁の指導による販売自粛により、純資産総額は大幅に減少しているのです。純資産総額から見た投資信託の今を見ていくことにしましょう。NISA、iDeCo(個人型確定拠出年金)、つみたてNISAなどの非課税投資制度の普及により、身近な投資商品となりつつある投資信託。積立方式による資産形成においては王道の金融商品ともいえるのですが、近年はトレンドや話題を作る投資信託が皆無という状況です。
図は2019年4月末と10年前の2009年4月末の純資産総額のベスト10です。金融庁の指導が入ったとはいえ、どちらもランキングを席捲しているのは「毎月分配型」の投資信託です。毎月分配型投資信託全体の純資産総額は大きく減少していますが、ランキングから見えてくるのは同投信には一定のニーズがあるということです。
毎月分配型投資信託は複利効果が期待できないことから、運用が非効率という見方もありますが、一定のニーズがある以上は、投信業界も身の丈にあった分配方法を示すなどの創意工夫が求められるのはいうまでもないことです。
小粒化した投資信託
個人の資産形成を担う金融商品として期待されている投資信託ですが、2つの図を比較すると投資信託の規模が小粒化したのがわかります。「大きいことはいいことだ」と必ずしもいえませんが、投資対象によっては規模の大きくなるほどスケールメリットが得られる投資信託があるのも事実です。2009年の上位3ファンドの純資産総額は1兆円を超えている一方、10年後の2019年ではトップでも約6500億円しかありません。正確には、2019年のランキングのベスト8までが1兆円を超えているのですが、その全てがETF(上場投資信託)なのです。いわずと知れた、日本銀行が年6兆円の規模でETFを買い入れていることから、ETFの純資産総額だけはかなり大型化しているのです。トップは「TOPIX連動型上場投資信託」で、純資産総額は約8兆8400億円もあるのです。
話がやや脱線してしまいましたが、投資信託の小粒化から見えてくるのは、投資信託業界のトレンド(流行)という風が吹いていないということになります。資産形成は流行を追うものではありませんが、業界が脚光を浴びるのはスター(商品)が出てきたときです。2019年には影もなくなりつつある「グローバル・ソブリン・オープン」というスター商品があったからこそ投資信託が脚光を浴びたののです。
投資の王道からいえば「グローバル・ソブリン・オープン」は邪道なのかもしれませんが、一時期、国民的ファンドと呼ばれたこともあるのですから、令和時代も国民的なファンドの登場が投信業界全体として待たれるところでしょう。資産形成の王道を行くなら、インデックスファンドかバランス型ファンドになるのでしょうか。
低金利が投信にも多大なる影響を及ぼす
ランキングを比較すると、2009年は海外債券を投資対象とするファンドが一世を風靡し、2019年は海外REIT(不動産投資信託)を投資対象とする投資信託が目立っています。世界的に金利が低下したことから、少しでも利回りが高い商品を求めた結果(イールド・ハンティング)といえますが、低金利の長期化で海外REITといえども高利回りを期待するのは難しくなっているのです。ランキングで重複している投資信託は「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」だけです。投資信託は長期で資産形成を行うための商品ですが、10年経つと顔ぶれが様変わりしてしまうのは日本人の移り気な正確を反映していなくもありません。
人生100年時代といわれていることから、資産運用の王道的な投資信託が令和時代のスターに育っていただきたいものです。そのためには個人投資家である皆さん1人1人の力が必要になってくることでしょう。