お金の悩みを解決!マネープランクリニック/40代独身の人のお金の悩み

45歳パート月収10万円。体調が悪く、将来のマネープランが見通せません(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、腰痛を抱えて働くことがままならず、将来に不安を抱える45歳の女性。マンション経営をしているが、それも利益は低く、相続した場合にどうすべきか悩んでいるとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 「細く長く」働くことを目標に

ご相談、拝見しました。ふこふこうさぎさんが今後、とくに重要視すべき点は以下の2つだと思います。健康の維持管理と現預金の確保です。
 
まず健康面ですが、バスに乗るのもままならないほど腰痛が悪化しているわけですから、ご本人も認識されているでしょうが、無理は禁物です。その結果、働くこともきびしくなったら、それこそ元も子もありません。
 
健康でもっと働くことができれば、という悔しい思いもあるでしょう。しかし、今目指すべき働き方は、収入を上げることではなく、細く長く働くということ。現在の仕事で月収10万円。住居費が発生していない、という利点もありますが、それでも毎月3万2000円貯蓄できているのは立派です。そして、この貯蓄の積み重ねが、老後に向けての大きな支えとなります。したがって、これを健康面で途絶えることがないよう、十分ケアしていくことが大事だと考えます。
 
そのための医療費や治療費は、必要経費です。ある程度かかることは仕方がないと割り切るべきでしょう。それも合わせて、趣味娯楽費が3万円。この程度の支出はまったく問題ありません。生活に楽しみがなければ、努力や頑張りは続かないもの。気持ちが落ち込んだり、ストレスが溜まらないよう、上手に支出してください。
 

アドバイス2 マンションより現金での相続を希望すべき

次に現預金の確保ですが、これは老後に向けての対策となります。体調に気を使いながら、細く長く働くとしても、それもいずれできなくなります。それ以降の生活費をどう確保していくか。そのためには、現預金を大きく減らすことは避けなくてはなりません。
 
幸い、現預金としては1200万円があります。これが老後資金になり、将来的にはこれを取り崩しながら暮らすことになるわけですが、その速度は遅いに越したことがないわけです。もちろん、今後、投資等のリスクは取れません。
 
そうなると大きなリスクになりかねないのが、現在、ご両親が所有している賃貸用のマンションです。データによると、固定資産税が年間70万円、屋根や外壁の防水、塗り替え費用が年間70万円(10年で700万円を年割り)。それだけで、実質の家賃収入は年間60万円とのこと。もし、このデータが誤りでなければ、ふこふこうさぎさんを含む兄弟3人がマンションを相続し、賃貸経営を継続すると、年間の利益は1人20万円。他に内装や水回りの修繕を入れれば、収入はないに等しいか、もしくは維持管理費用が家賃収入を上回り、結果的に所有者の持ち出しが発生する可能性は十分あると思います。そして、そういう事態、つまり生活費以外に支出が発生してしまうことだけは是が非でも避ける必要があります。
 
さらに怖いのは、土地を担保にマンションを建て直し、さらに大きな負債を抱えること。現在のマンションがよほど好立地にあれば検討の余地があるかもしれません。しかし、現在の家賃収入から類推するとそれも考えにくい。したがって、さらに負債を背負うことは、結果的にリスクの上積みにしかならないわけです。
 
もしも相続となった場合、ご兄弟もいますから難しい面もありますが、私がふこふこうさぎさんの立場なら、土地建物を売却し、その売却益を3等分することを望みます。現金であれば、懸念するリスクは消えるからです。他のご兄弟が賃貸経営を続けるのであれば、土地建物の相続相当分を現金として受け取れるよう、法定相続人として要望します。その結果、相続税が発生したとしても、老後資金づくりとしてははるかに現実的です。
 
もちろん、実際の相続が希望どおり進むとは限りません。しかし、この後触れますが、相続いかんでは、自身の生活が立ち行かなくなる可能性もあります。まずは親御さんがまだ元気なうちにそのことを話し合い、法律上で問題や不安があれば、弁護士など専門家に相談するのもひとつの選択肢です。
 

アドバイス3 相続と60歳以降の働き方がカギ

老後資金については不確定な部分が多く、具体的な試算は難しいのですが、わかっているのは、3年後に収入が半減するとのこと。今後3年間で貯蓄が100万円ほどできますが、それ以降は毎月1万3000円の赤字。そして、その収支状況が60歳まで続くとすれば、生活費の赤字が140万円。さらに、不測・不定期の支出も考慮もして、60歳の時点で貯蓄額を1100万円とします。
 
生活もそれにかかるコストも大きく変わるのが、相続後です。その時期を便宜上、60歳とします。それ以降、生活費に家賃(新たに自身の住まいを借りる)が加わる可能性があり、その他、親御さんが部分的に負担してくれていた他の支出も自身での負担となるはず。仮にその生活費を月12万円とします。
 
60歳以降、フルリタイアとなった場合、そこからの5年間は生活費全額を貯蓄から捻出しなくてはいけません。その額は月12万円の5年分で計720万円。65歳以降、公的年金の受給額を6万円とすれば、生活費の不足額は月6万円ですから、90歳までの25年間で1800万円。これに、いわゆる予備費(長生きリスクでかかるコスト、医療費、介護費用など)を加算して、手持ちの老後資金で間に合うかどうか。
 
ここまでの試算どおりなら、準備できる老後資金は、65歳時点での貯蓄額380万円(1100万円−720万円)と個人年金保険の年金総額370万円を加算した額。これでは、明らかに不足します。それを補うものとして、いかに相続でまとまった現金(2000万円以上)を受け取ることができるか。また、60歳以降、働いて少しでも収入を得られれば、それも老後資金の不足分を補う助けとなります。
 
ともあれ、冒頭でも述べましたが、心身ともに健康維持を維持し、相続も含め現預金を確保していく。それが今後のマネープランを破たんさせないための条件となります。もしも、それがきびしくなると、経済支援等の社会的セーフティーネットに積極的に頼るべきだと考えます。体調が悪化し、数年後で働くことが難しくなった場合も同様です。

現時点で、障害年金を受け取ることはできないとのことですが、それも含めて、社会保険労務士といった専門家や市役所、区役所の福祉課に再度しっかり相談してみてはどうでしょうか。
 
最後に個人年金保険について。ご本人は払済保険も検討しているようですが、少なくとも、現在は継続するだけの貯蓄はあります。継続的に働くことができたり、相続で現金を確保できれば、保険料を前納、あるいは年払いも可能です。まずは継続で検討してみてください。
 

相談者「ふこふこうさぎ」さんから寄せられた感想

体調不良を鑑みて無理のないプランを立てていただきありがとうございます。親の死後の相続が一番の悩みだったので、現金での相続が一番妥当だというのも納得できました。建物がなくなってしまえば社会のセーフティーネットも受けやすくなるので、現金で希望の金額まで相続できるかどうかはわかりませんが、兄弟で話し合って建物の存続ではなく現金化できるよう努めてまいります。また、無駄な支出もなかったみたいなので見ていただき安心いたしました。あと生きがいを見つけるためにたまに旅行にも行ってみます。この度はありがとうございました。


教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など


取材・文/清水京武

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