お金の不安が消えることはあるのか
ちょっと前に「お金の不安がなくなればいいのに」というコメントをもらったことがあります。これは、誰でも考える素朴な希望でしょう。今月をつつがなく過ごせるだけのお金があって、数年先にも支払いに不安がなく、老後も安心して過ごせるだけの経済的基盤があればいいと誰もが思います。そのために日々をもがいています。
そうしたお金の不安が国民にあるのは、政治の問題だと言い切る人もいますが、私はそうではないと思います。なぜなら、マネーハックの考え方(逆転の発想)では、「お金の不安はたぶん、消えることはない」からです。
しかし、不安が消えないから安心が訪れない、というわけでもありません。今回はそんな話をしてみたいと思います。
現役時代は常にお金の不安との戦い
現役時代、お金の問題は常に不確定要因ばかりです。まず、今よりも稼げるようになるか、若いときは不安に駆られます。数十年先の自分がいれば、何かアドバイスもできるでしょうが、20歳代の頃には未来のことなど分かるはずもありません。住宅ローンを組むにあたっては、数十年にわたり返済を続けていくことができるか、大きな不安を抱えます。そして、返済中はボーナスが無事に出て、夏冬の返済ができるか心配しながら過ごすことになります。
子どもがいれば、本人の望む進路に行かせてあげられるか、お金の不安を抱え続けます。予備校の費用や学費が予想外にかかり、焦ることもあるでしょう。
家計が厳しくてストレスを抱える人もいます。生活費がギリギリで将来に向けて貯められなかったり、返済のためのお金が確保できずケンカをしたりすることもあるでしょう。
実は年収が高いから心配が減るかというとそうでもありません。年収が高い人は生活コストを高めてしまう分、やっぱり心配や不安から抜けだすことができないのです。
年金生活だってお金の不安は消えることがない
それでは現役を退き、年金生活に入る頃にはお金の安心が手に入るか、というとそうでもありません。定年退職まで勤めあげた会社から退職金や企業年金を受け取り、公的年金額が確定したとしてもです。老後の不安は皆さんが想像するように、年金が破たんする恐れがあるからではありません。公的年金はむしろあなたの安心要素です。財政検証が行われており、制度改正を繰り返した結果、破たんリスクは低いものとなっています。
むしろ、どんなに長生きしても給付を続けてくれることの方が「老後の安心」です。あなたが110歳まで長生きして、払った保険料以上の年金を国が払うことになったとしても、国の年金は隔月で振り込み続けてくれます。
実は「公的年金不安」ではなく、それ以外の不確定要因のほうが老後の不安要素です。まず、「何年長生きするか」分かりません。手元のお金を少しずつ取り崩していき、年金に上乗せしたとしても、「20年の老後」か「30年の老後」か分かりません。
統計的には男性19年、女性24年は見込んでおきたいところですが、これも現在の数字ですから、今後もっと長寿化するかもしれません。個人差も大きいです。
さらに、「増税」「健保や介護保険の負担増」などが、後からやってくる可能性もあります。物価上昇が預金の利息以上に起きれば、実質的な購買力も低下します。一方で、年を取るほどに判断力は低下しますから、お金の管理能力も低下せざるをえません。
全く不安がない財産を持っている人は少数派です。ほとんどの人は、「お金は死ぬまで困らずにもつか」という心配を老後もゼロにすることはできないでしょう。
明確なお金の安心はなくても、不安を小さくすることはできる
絶対的な「お金の安心」とか「お金の不安解消」を考えるから、私たちは常に落ち着かないことになります。現代に生きる私たちは、いろんなものが見通せる時代になりました。ニュースやブログ、SNSなど、たくさんの情報が溢れているため、「不安」がリアリティをもって迫ってくるからです。
ネットもスマホもなかった時代、お金の不安がなかったわけではありません。「お金の不安を考えたことがなかった」だけなのかもしれません。たぶん団塊世代より上の世代に質問すれば、「そんなこと考えるヒマもなかったよ」と言うことでしょう。
だとすると、私たちは不安が見える時代に生きていることと、どう向き合っていくかを考えてみるべきでしょう。それは「取り除ける不安」を解消する努力をしつつ、「考えても仕方のない不安」については、ほどほどの距離感で接する努力をすることです。
実はできることをしっかりやれば、目の前の不安はずいぶん小さくなるはずです。例えば、しっかり仕事をして稼ぐこと、キャリアアップに備えて勉強すること、ムダな買い物を減らすこと、そして身の丈にあったちょうどいい生活を心がけること、家計を見える化すること、などです。
決して不安はゼロにはなりませんが、小さくすることはできます。ぜひ、あなたの中の「お金の不安」を小さくしてみてください。同じ世界に暮らしていても、ちょっとだけ生きやすいものとなるかもしれません。
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