月経が来ないのは更年期のせいだと思っていたら
若者の性が問題視されがちだが、40歳以上の中絶例も少なくない
厚生労働省による令和元年度衛生行政報告例の人工妊娠中絶の年齢階級別件数によると、20歳未満については1万2678件で、各歳でみると19歳が5440件と最も多く、次いで18歳が3285件となっています。また40~44歳は1万3589件、45~49歳は1399件と、40歳以上の中絶例も若者と変わらないのが現状です。またここ数年、人工妊娠中絶件数の総数が減少傾向の中、45~49歳については増加傾向であることも見逃せません。
厚生労働省「令和元年度衛生行政報告例」母体保護法関係より
40代後半の「産み終え世代」では、産む人より中絶を選択する人が多い
ここ数年に関する人口動態調査と衛生行政報告例をもとに計算された年齢階級別の中絶選択率は、20歳未満が約6割、40~44歳が約2~3割、45~49歳が約5割というデータが出ています。全妊娠件数に対して中絶を選択している人の割合は、若者も40代後半もそれほど変わらないことが分かります。40代で「産むことを選択する人」の割合が数年前より増えている中、40代後半では約半数の人が中絶を選択しています。「予定外」の妊娠に対して、40代後半で「産むことを選択しない」人は少なくないといえるでしょう。
避妊に関して正しい知識がないのは 10代も40代も一緒
40代で「希望していないのに妊娠してしまう」理由の多くは、「まさか妊娠するとは」という油断からくるものと推察されます。以前クリニックにいらした40代半ばの患者様も、月経が来ないことを「更年期のせい」だと信じ込んでいらっしゃいました。月経が来ないのは更年期のせいだと思っていたら
「え!? なんで!? たまにしかしていないのに」
→1回の性行為でも妊娠はします。
「ちゃんと外で出したのに!?」
→膣外射精は全く避妊にはなりません。
というつっこみどころ満載の反応でしたが、実は、避妊に関して正しい知識を持っていないのは、10代も40代も変わらないのです。
妊娠を希望していない40代は、本来閉経するまで避妊が必要
もちろん、妊娠の継続をしないという理由は、10代と40代では異なります。40代の方の場合、多くは、体力がない・経済的に無理・すでに複数の子どもがいる・高齢出産に対する不安が大きい、などがその理由となることが多いと考えらえます。予定外の妊娠の場合、その女性の心身の健康を保つための選択肢の一つとして人工妊娠中絶がありますから、中絶という選択をすることはやむを得ない場合もあるでしょう。でも、本来であれば、「妊娠を希望していないのであれば、閉経するまでは避妊する」ことが必要なのです。
確実な避妊をしたければ、避妊効果が高い方法を
前述の膣外射精のように間違った避妊方法を選択して「ちゃんと避妊しています!」という方も少なくありません。日本人の7~8割が、いまだにコンドームという不確実な方法で避妊しているというデータもあります。避妊効果の目安となる「パール指数」で比較してみると、いかに「危ない橋を渡っている」のかが分かると思います。パール指数とは「各種避妊法使用開始1年間の失敗率(100人の女性が1年間に妊娠する率)」のことです。
各避妊方法のパール指数は、
- 低用量ピル……0.27人
- 子宮内避妊具IUD……0.6~2人
- 子宮内避妊システムIUS……0.1~0.2人
- 不妊手術(男性)……0.1人
- 不妊手術(女性)……0.5人
- コンドーム……2~15人
- リズム法……1~25人
- 殺精子剤……6~26人
(ただし、例えばピルであれば、正しく服用法を守って一度も飲み遅れや飲み忘れがない場合と、飲み忘れが何度かあったり飲み方を間違えたりすることで避妊の効果は違ってきます。コンドームも同様で、最初から最後まで絶対にずれたり漏れたりせずに使用されるのが理想的ですが、途中から使ったり外れたり破れたりするケースも起きています)
確実な避妊をしたければ、ピルを飲むか子宮内避妊具を入れるかです。海外にはそのほかの選択肢もありますが、日本で使用できる確実な避妊はこの2種類です。たとえ結婚していても、40代でも、「今は妊娠を希望していない」タイミングで性行為を行うのであれば、自分の手で確実な避妊をすることが「自分の人生を主体的に生きる」ことにつながります。
【参考情報】
- 5歳階級別 出産数、中絶数と中絶選択率(日本産婦人科医会)
- 妊娠100件に対する人工妊娠中絶の割合(日本家族計画協会)
- 2020年度の人工妊娠中絶届出件数 前年度比1割減 (一般社団法人日本家族計画協会)
- 望まない妊娠を繰り返さないために
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