1.知的好奇心を育てる国語力を伸ばす
義務教育の範疇に限定しますが、学校での勉強科目で重視したいことは、まず国語です。読み書き能力は、あらゆる学習の基礎です。テストだって問題文が正確に理解できなければ、正当は難しいでしょう。正確に読むことができれば、正確に伝えることができます。そして読解力がつけば、自分であらゆる文献を読み解くことができますから、知識が増えます。
知識が増えると、疑問が湧きます。疑問が湧くということは、知らないことがあることに気がつくことです。知らないことがわかれば、もっと知りたいと思い、ますます知識が増えて世の中を理解する枠組みが増えるというループが起こります。
つまり知的好奇心は、正確な日本語運用能力と語彙の豊富さから生まれると言っても過言ではないからです。
2.論理的思考を育てる理数系科目に注力する
次に理数系科目のウエイトを高くすることです。理系科目は論理的思考力の基礎となるからです。もちろん文系の人でも論理力の高い人はいますが、一般論において理系人材は仮説検証の習慣があり理路整然と思考することができ、想像力や予測力も優れています。反対に、私が知る限り所得が低い人の多くは、数学や物理などの理系科目が苦手です。もちろん全員ということではなく、一般的にという意味です。それはつまり、論理的に考えることが苦手であることを意味します。
そのため、「とにかくダメだ」などと理由のない命令をします。感情や思いつきで判断したり、よく子どもを怒鳴ったり、自分の行動がどういう結果を招くのかという想像ができないことが多いといえます。
だから、カッとなって議論を打ち切るとか、別れを切り出すとか、チャンスや人間関係をぶちこわすということをやりがちです。一方、論理性の高さは感情の起伏を抑え、冷静なメンタルを養います。なので論理性の獲得は、日本語能力の獲得に匹敵するぐらい重要なのです。
3.プログラミングなど、今後必要とされる能力を磨く
他にも、プログラミングが必修化されることになっており、親の関心も高い教科です。これも根本は理数系科目と同じく、論理的思考力の育成にあります。たとえば「こういう命令を記述すれば、プログラムはこう動く」という訓練はまさしく論理です。それに、今後はAIやロボットなどの需要はますます高まるでしょう。そのため昨今、子どものSTEM教育(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マスマティクスの頭文字による造語)が注目を集めており、それらを教えてくれる講座は人気のようです。
STEM教育では、プログラミングやデータサイエンスなど、AIやロボットが社会を激変させる未来を生き抜くために必要な、ハイテク分野に重点が置かれています。最近ではさらに、ArtのAを加えたSTEAM教育と呼ばれることも増えています。アート、つまりデザイン思考が重要になるという意味ですね。
4.理数系科目を捨てないこと
ただ、必修科目になるのは学びのきっかけとしては望ましくても、教える側のリテラシーによってはIT嫌いになる子が増えるのではないかという危惧があります。とはいえ、数理的な思考を必要とするのは、プログラミングに限ったことではありません。たとえば、金融は応用数学なしには成り立ちませんし(金融工学という学問領域もあるくらいです)、生物分野では遺伝情報の解析に統計学が必要だし、行動経済学やビッグデータの活用でも統計学が必要です。
統計学を学ぶには、線形代数や微積分の知識が必要となります。つまり今後は、ますます理数的知識や数理的思考が必要になっているということです。
しかし現実では、「数学が苦手だから文系に進む」という逃げの姿勢で選択している人が多いようです。すると、新しい時代に必要な知識を身に着けることができず、その後に広がる大きなチャンスを放棄することになってしまう危険性をはらんでいます。
5.算数・数学は、早めのキャッチアップで苦手意識を克服
そのため算数・数学は、苦手意識を持たないよう、キャッチアップしておく必要があります。社会などは、どこから勉強してもキャッチアップできますが、理数系科目は前に習った知識を応用し、より高度な学習内容になる積み上げ型の教科です。そのため、どこかの学年でつまずけば、その後はずっと苦手科目になってしまいます。だから、つまずいているところまでいったん戻って基礎からやり直し、苦手意識を克服しておきたいものです。これは学習塾などを活用する価値があるでしょう。算数・数学は、わかるようになると俄然楽しくなる科目です。
6.余裕があれば英語を学ぶ
必修化といえば英語も挙げられ、こちらも親の関心が高い科目だと思います。特に英語にコンプレックスを持っている親ほど、子の早期英語教育に熱心になるようですが、余裕があればやる程度で問題ないというのが私の認識です。というのも、コミュニケーションのための英語なら大人になってからでも、十分マスターできるからです。それよりも、まずは日本語で論理力、自分の価値判断基準を持つことです。それがないと、母語であっても外国語であっても、人を説得したり動かすなど、信頼関係を築くことはできないからです。
外国語がペラペラだとしても、伝えたいメッセージや論理性がなければ何も伝わりません。伝わらなければ、何も話していないのと同じです。つまりその英語力は、そもそも持っていないのと同じということになります。
だからまずは日本語の軸をしっかり作る、日本語でじっくり思考できる土台を作ることが大切です。日本語で論理的思考ができ、細かなニュアンスが表現できるようになることです。ただし、ナチュラルな発音はどうしても幼少期のほうが習得しやすいですから、やるとしたら発音でしょう。