お金の悩みを解決!マネープランクリニック/海外在住・海外で働く人のお金悩み相談

49歳貯金1300万。1年後に海外赴任の夫が帰国、収入が大きく下がります(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、貯蓄ができないことで悩む、フリーランスで仕事をする40代女性。さらに、ご主人が海外赴任から帰国すると、収入が大きく減るため、美大を目指すお子さんの教育費が不安とのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 家計の現状を認識することから始める

家計収支をまずは確認してみます。いただいたデータでは、世帯収入が手取りで月額85万円。対して支出は59万5000円、毎月の貯蓄(と投資)が10万円と持株会の1万円ですから、14万5000円の行方がわかりません。ご相談者のTさんが言うには、それも結果的に貯まっているような気もするが、使っている気もする。家計簿もつけてなく、そこが貯まらない要因ではないかとのこと。おそらくそうだと思います。支出の各費目の金額が「3万円」「7万円」「10万円」のいずれかであるのも、大まかに、あるいは感覚として額を認識していることの表れなのでしょう。したがって、「貯蓄ができない」というご相談ですが、できるようにするには家計管理をしっかりする、これに尽きると言えます。
 
方法は簡単です。まず家計簿をつけます。それによって、何にどれだけ支出しているのかが把握できます。そして、もっと削れる部分や無駄な部分が見えてきます。あとはそれをもとに貯蓄可能額を設定して、先取り貯蓄をする。残った資金で、生活費をやりくりすればいいのです。
 

アドバイス2 貯蓄できるかどうか本人の気持ち次第

ただし、方法は簡単でも、それを実行できるかどうかはまた別の話。Tさんは世帯収入が高いため、支出費目は総じて高めでも、また家計管理を無理にしなくても、毎月10万円も貯蓄できるわけです。でも、もっと貯蓄できるのではと気付かれた。しかも、1年後にご主人が赴任先の海外から帰国され、収入が月30万円下がってしまう。使途不明金がすべて支出に回っているのなら、その時点で毎月20万円の赤字です。ですから、この減収を家計見直しのきっかけにしたいところです。
 
しかし、何気なく使っている、知らずに支出している。そういった支出をなくすことは、それが日常的であるほど簡単ではありません。それも含めて、その人の生活レベルだからです。一度習慣化した支出はなかなか変えられないのです。
 
先に、家計簿をつけて現状を認識し、先取り貯蓄をするという方法をおススメしましたが、数字的にはそれで月30万円の貯蓄も可能でしょう。しかし、本当にそれを実践できるかどうかは、Tさんの気持ち次第です。本気で取り組めるかどうか。貯蓄を阻むものがあるとすれば、やはり気持ちなのです。
 
それさえクリアできれば、世帯収入が月額55万円に下がっても、赤字にはならない程度には家計を見直せると考えます。ましてや、ボーナスが年間400万円支給されるのですから、今は「貯蓄はボーナスから」と割り切ってもいいでしょう。データから類推すれば、学費等をここから捻出しても、年間200万円は無理なく貯められるはず。それでも、5年で1000万円。貯蓄ペースとしては十分過ぎるほどです。もし現状、ボーナスからそこまで貯められていないなら、何に使ったかを認識して、無駄(支出の必要性が低いもの)を省く作業をしてください。
 

アドバイス3 教育資金を借りる必要性は低い

あと気になる点をいくつか。まず、保険ですが、支払い保険料が「毎月10万円」となっていますが、加入されている保険から考えて、そこまで保険料が高いかどうか。他に漏れがあるかもしれません。それと、加入保険の各保険料とそれがいつまで支払いが続くのか。ほぼ不明となっていますが、そこはしっかり認識しておきましょう。保険は保障内容ももちろん重要ですが、家計的には保険料の支払い期間も大切なポイントになります。
 
下のお子さんの教育資金については「500万円程度借りる予定」とありますが、その必要はないでしょう。ご主人が帰国するまでの1年間で、その気になれば500万円を貯めることができるからです。使途不明金が全額貯蓄に回れば、月24万5000円。ボーナスから200万円貯蓄できれば、年間でちょうど500万円。わずか1年間で、美大の学費がほぼ全額用意できます。

また、仕送り費用は最大で月15万円とのこと。4年間で720万円。これもボーナスからだけの貯蓄で十分カバーできる金額です。今ある貯蓄を取り崩す必要はありません。
 
さらに言えば、住宅ローンも繰上返済で完済されてはどうでしょう。おそらくローン残高は600万円前後かと思います。だとすれば支払利息が30万~50万円程度軽減されるはず。もちろん、完済すれば、今ある貯蓄は半減します。しかし、今でも貯蓄ペースが高く、さらに住宅ローンと、いずれ教育費負担もなくなりますから、さらに貯蓄ペースは上がります。心配は不要です。
 
ともあれ、まずは家計簿をつけて支出の実態を把握してみましょう。家計改善と貯蓄は、そこから始まります。
 

相談者「T」さんから寄せられた感想

診断結果は、“やはり”といったところ。家計の把握をすることに尽きますね。今回相談するにあたり、月々の支払い額を記入しようとしても、保険料やカードの支払い用に各口座に振り分けている大まかな額でしか、把握していなかったことに改めて気付かされました。私自身の収入は、フリーランスなので頑張り次第でかなり増やすことも可能なため、“節約するより、入る方を増やせばいい”という感覚が身に付いていました。下の子の進学の際には借り入れは必要不可決かと思っていましたが具体的な数字を提示していただき、やり方次第では、あと2年のうちに備えることも可能かと思えるようになりました。これを機に詳細な収支の把握をするところからしっかり始めてみようと思います。ありがとうございました。


教えてくれたのは……
深野 康彦さん
   
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など


取材・文/清水京武

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