インデックスファンドの運用成績は二桁のマイナス
2018年はつみたてNISAが導入されたことから、投資家のコスト意識が高まりインデックスファンドに注目が集まった1年と言えるはずです。新規に低コストファンドが設定されたほか、既存のファンドでも運用管理費用(信託報酬)を引き下げるなど、運用会社側もインデックスファンドを意識せざるを得なくなったと言えそうです。注目が高まったとはいえ、2018年のインデックスファンドの運用成績は残念ながら惨憺たる状況でした。投資の成果は短期ではなく、中長期で判断するものといわれても、やはり二桁を超えるようなマイナスの運用成績だと気分が良いものではありません。国内株式の代表的な指数に限れば、最小の日経平均株価のマイナス12.08%から最大の東証マザーズ指数もマイナス34%だったのです。
国内株ファンド全体を見れば、アクティブ運用のファンドも全ファンドがマイナスの運用成績であれば、インデックスファンド購入者も少しは溜飲が下がるのでしょう。しかしながら、運用成績マイナスが最小の日経平均株価よりもマイナスが小さいファンドも多く、また運用成績がプラスのものもわずかですがあるのです。インデックスファンド一辺倒ではなく、一部にアクティブ運用ファンドを入れることも必要かもしれません。
設定後の年間騰落率は全期間プラス
2018年、国内株ファンドで運用成績が唯一プラスの商品は、東京海上アセットマネジメントが運用する「東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープン」です。年間騰落率は5.76%ですから、株価指数が軒並み二桁を超えるマイナスという状況を考えると秀逸の運用成績と言えるでしょう。東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンは、2013年4月25日に設定されているファンド。同ファンドは、2013年の運用期間こそ約8ヵ月しかありませんが、運用開始後の年間騰落率は2018年まで全期間プラスの成績を続けています。2018年は一桁のプラスでしたが、その他は二桁、2017年は55.65%もの好成績でした。
同ファンドは、わが国の金融商品取引所上場(これに準ずるものを含みます)株式のうち、経営者(経営の中心を担っていると考えられる役員等:取締役・執行役員)が実質的に主要な株主である企業(経営者およびその親族、資産管理会社等の合計持株比率:実質持株比率)が5%以上である企業を投資対象としています。
銘柄選定に際しては、経営者のリーダーシップに関する定性分析を重視しつつ、企業の成長性・収益性に比較して割安であると判断される銘柄を選別します。具体的には、オーナー企業を抽出、その後リーダーシップ調査を行い、ポートフォリオを構築していきます。ポートフォリオは、全体が割高とならないようにPER(株価収益率)や株価モメンタムなどの指標を用いてウェイトを調整しています。
2018年12月28日現在のマンスリーレポートによれば、サービス業、情報・通信の2業種で資産全体の約57%をカバーしています。投資市場は東証1部の小型株が約54%となっています。組入銘柄数は35、組入上位はアダストリア、エフピコ、M&Aキャピタルパートナーズとなっています。組入上位10銘柄で資産全体の約66%を割いていることから、意外と集中投資が行われていることがわかります。裏を返せば、それだけ銘柄選択に自信があると考えられます。
資産規模が大きくなったときに注意が必要?
設定来、良好な運用成績が続いている東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンですが、気になる点もあります。運用報告書(2018年7月)によれば、売買高比率が4.88と高いことです。この数値が高いほど売買を頻繁に行っていることになるのですが、同ファンドの純資産総額は約205億円。資産規模が大きくなってくると、これまでのような中小型株を対象とした売買を頻繁に行うスタイルが取りづらくなる可能性があるからです。交付目論見書によれば信託金の限度額は5000億円と、投資対象を考えれば多額です。人気が集まり新規募集停止になるリスクは低い反面、規模が大きくなった時、たとえば純資産総額が1000億円超以降も好調な運用成績が続くのか、しっかりウォッチして行きたいところです。