医療保険

30歳代が入院する確率は60歳代の3分の1もない!

3年に1度の厚生労働省平成29年患者調査の結果が発表されました。保険会社も頻繁に利用する統計で、病気やケガによる入院と通院(外来)の現状をかなり細かく知ることができます。今回は患者調査から傷病で入院や通院(外来)する確率について取り上げてみました。

松浦 建二

執筆者:松浦 建二

医療保険ガイド

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入院する確率は高齢になるほど累進的に高くなる

病気やケガでの入院に備えて、多くの人は医療保険(医療共済)に加入したり、対応できるだけの貯蓄をしたりしていますが、実際のところどのくらいの確率で入院するものなのでしょうか?自分自身が将来病気になる確率はわかりませんが、統計からおおよその確率をイメージすることはできます。

2019年3月に発表された厚生労働省の平成29年患者調査から、入院する確率(受療率)を年齢別に分けてグラフにしてみました。年齢は0歳、1~4歳、5~9歳以降85~89歳まで5歳刻み、90歳以上に分けてあります。受療率は人口10万人に対する割合なので、受療率が1,000で1%ともいえます。
入院受療率

年齢階級別入院受療率(人口10万対)

資料:厚生労働省平成29年患者調査

年齢階級別入院受療率は、0歳(1,167)が60歳代並みに高く1~4歳(169)が若干高いことを除けば、他は年齢が上がるに連れて受療率も上がっています。60歳代あたりからは受療率が急激に高くなり、90歳以上の入院受療率が最も高くなっています。入院受療率が最も低い5~9歳(86)と90歳以上(7,815)では実に91倍もの差があります。20~24歳(158)と60~64歳(997)でも6.3倍の差があり、60~64歳と90歳以上でも7.8倍の差があります。このように入院の受療率は年齢によって相当大きな差があります。
 

どの年齢階級でも入院する確率は下がっている

次に年齢階級別の入院受療率を過去と比較してみました。患者調査は3年に1度の調査なので、1999年から2017年まで3年ごとに7回分の結果をグラフにしてみました。5歳刻みの年齢区分を全て載せるとグラフが見づらくなるので、0歳と5歳~9歳、25歳~29歳、45歳~49歳、65歳~69歳、85歳~89歳及び総数に限って載せてあります。
入院受療率

年齢階級別入院受療率の推移(人口10万対)

資料:厚生労働省患者調査(平成11年~平成29年)

入院受療率の総数(全年齢)は1,036で、2014年(1,038)に比べてわずかに下がり、1999年(1,170)と比べると、18年間で11%ほど入院する確率が下がっています。受療率を年齢階級別にみると、85歳~89歳(5,326)は前回から252下がり、1999年からは3,413も下がっています。65歳~69歳(1,305)や45歳~49歳(398)でも受療率は下がっています。

このようにどの年齢でも入院受療率は下落傾向にあり、1999年と比べるとどの年齢階級でも入院受療率は下がっています。しかし例外もあり、0歳(1,167)は前回から105上がっているだけでなく、2002年以降は緩やかな上昇傾向にあります。
 

通院(外来)受療率は80~84歳が最も高い

同じ厚生労働省の平成29年患者調査から、入院する確率(入院受療率)に続いて通院する確率(外来受療率)も年齢別に分けてグラフにしてみました。
外来受療率

年齢階級別外来受療率(人口10万対)

資料:厚生労働省平成29年患者調査

年齢階級別入院受療率のグラフと比べてみるとわかるように、外来受療率は入院とかなり異なります。総数(全年齢)の外来受療率は5,675で入院の5倍以上になります。0歳(7,276)や1歳~4歳(6,517)の受療率はけっこう高く、60歳~64歳(6,279)を上回っています。

最も受療率が低いのは15歳~19歳(1,923)で、45歳~49歳(3,782)の半分程度しかありません。最も受療率が高いのは80歳~84歳(12,551)で15歳~19歳の6倍以上にもなり、90歳以上(9,968)よりも高い受療率になっています。入院受療率では5歳~9歳が最も低く90歳以上が最も高かったので、低い方も高い方も入院とは年齢階級が異なります。

外来の場合、14歳までの受療率が少し高いのは、子どもの医療費助成の対象年齢が影響しているのかもしれません。子どもの医療費助成は昨今中学3年生までを対象としている自治体が増えており、中学3年生までは比較的通院しやすい状況にあります。受療率が85歳以上で下がるのは、体力的に通院するのが徐々に大変になっているのかもしれません。
 

通院する確率は若い世代が上がっている

最後に年齢階級別の外来受療率を過去と比較してみました。入院受療率のグラフと同じように1999年から2017年までの7回分を、0歳、5歳~9歳、25歳~29歳、45歳~49歳、65歳~69歳、85歳~89歳及び総数に限って載せてあります。
外来受療率

年齢階級別外来受療率の推移(人口10万対)

資料:厚生労働省患者調査(平成11年~平成29年)

2017年の外来受療率を2014年と比べると、総数は5,696から5,675へわずかに下がっていますが、年齢階級別では0歳、25歳~29歳、85歳~89歳が上がり、5歳~9歳、45歳~49歳、65歳~69歳は下がっています。1999年と比べると、総数は5,396から上がっており、年齢階級別では0歳、5歳~9歳、25歳~29歳の若い世代が上がっています。45歳~49歳、65歳~69歳、85歳~89歳の上の世代では下がっています。特に上がっている0歳と特に下がっている65歳~69歳の受療率は、次の調査で逆転しそうな勢いです。1999年から2017年までの間で少子高齢化がかなり進み、その影響が外来受療率にも表れているような気がします。

入院受療率はほとんどの年齢で下落傾向にあります。入院に備えて医療保険などの入院給付金保障に加入している人にとっては、入院給付金を受け取る確率が徐々に下がっていることになります。入院への備えを確保するなら、今後は日数に連動しない保障を確保する方が安心できそうです。

また、20歳代や30歳代は入院受療率が相当低いです。そのため若い頃は医療保険などは必要ないと考える人もいるでしょう。受療率から判断すれば受療率が高くなり始める50歳前後に加入するのが一番効率的かもしれません。

しかし、医療保険などの保険料は一般的に加入年齢が若い人ほど低くなっているので、保険料から判断するなら総支払額をよく確認する必要があります。若い頃に加入した方が割安かあまり差がないなら、長期間の保障を得られる若い頃に加入した方がお得といえます。いずれにせよ時代の変化に合わせて安心できる備えをしておきましょう!
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