妻は仕事も辞めたいと考えているが可能か?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、障がいのある息子さんについて、どう資金を遺すべきか思い悩む49歳の主婦の方。家計管理や相続などについて、ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください。(相談は無料になります)

 
子どもたちにお金を遺したい

子どもたちにお金を遺したい


■相談者
いちごさん(仮名)
女性/パート・アルバイト/49歳
中部地方/持ち家・一戸建て
 
■家族構成
夫(会社員・単身赴任/53歳)、長男(20代/無職)、長女(20代/フリーター)
 
■相談内容
障がいのある息子とフリーターの娘がいる。息子の就労は厳しそうで、なかなか将来が見えなく一番の心配事。その上でなるべく子どもたちには財産を残したいと思っている(子どもたちの自立を目指すのが最善なのは承知している)。しかしながら、自身も現在勤め先でいろいろな問題を抱えていて、仕事を辞めたいとも思っている。その上で、お尋ねしたいことは3点。

・子どもの年金は払込猶予の措置を採っているが、貯蓄分をそちらに充てた方が良いか?
(自分たちで払わなくてはならなくなった時に払えなくなるのではという心配)
・現状で私が仕事を辞める選択はありか?
・我が家の収入でこの貯蓄額は妥当なのか?また保険商品以外での資産運用方法を知りたい。
以上是非とも宜しくお願い致します。
 
■家計収支データ
相談者「いちご」さんの家計収支データ

相談者「いちご」さんの家計収支データ



■家計収支データ補足
(1)ボーナスの使い途について
夫小遣い45万円、家族小遣い8万円、固定資産税と自動車税12万円、年払い保険料20万円、家族イベント費用5万円、家族旅行・帰省50万円、クレジットカード支払い20万円、貯蓄(普通預金)200万円
 
(2)長男への公的手当等について
現時点で「障害年金」や「障害者手当」等の支給を受けてはいないが、いずれ支給を受ける可能性あり(医師と相談中)。
 
(3)年金の猶予について
長男、長女とも所得が一定額に達していないため。親が支払う選択肢もあるが、年金制度への不信感から、それに回す資金を貯蓄している。ただし、将来的に必要だと考えた場合、一括で支払うことも考えている。
 
(4)加入保険について
[夫]
・定期保険(死亡保障1000万円、保険期間67歳まで)=保険料5725円
・共済(60歳まで、病気死亡800万円、入院3万円、がん一時金100万円)=保険料7400円
・個人年金保険(不明)=保険料7700円

[妻]
・定期保険(死亡保障500万円、保険期間68歳まで)=保険料1448円
・共済(60歳まで、病気死亡800万円、入院3万円、がん一時金100万円)=保険料7400円
・米ドル建て終身保険(死亡保障3万米ドル)=払込み終了
・米ドル建て終身保険(死亡保障5万米ドル)=保険料20万円(年払い)
・米ドル建て終身保険(死亡保障3万米ドル)=保険料1万4000円
・変額個人年金保険(60歳満期、10年確定、年金額40万円)=保険料2万1000円

[長男]
・共済(死亡保障10万円、入院1万円)=不明
・変額終身保険(55歳払込終了、死亡保障1000万円)=保険料1万1500円

[長女]
・共済(死亡保障10万円、入院1万円)=不明
・米ドル建て養老保険(65歳払込終了、死亡保障3万1000米ドル)=保険料1万2000円
 
(5)退職金と再雇用について
夫の退職金は3000万円ほど。60歳以降、再雇用によって65歳まで働く予定。収入は現在の50%程度になる。
 
(6)厚生年金について
年金支給額/243万円
 
(7)老後資金について
自分たちの老後資金について、長男の生活費も考慮(念のため、今後も所得がないと想定)して考えたい。長女は将来独立と考えている。
 
■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 即リタイアでも資金的には問題なし
アドバイス2 外貨建ての保険商品は投資と同じ
アドバイス3 相続ではなく、生前贈与を活用したい
 

アドバイス1 即リタイアでも資金的には問題なし

ご相談としてもっとも大きい部分は、お子さんには生活が困らない程度の資産を遺したいが、ご自身はできれば仕事を辞めてリタイアしたい、ということだと思います。大丈夫です。ご主人の収入も高く、まとまった金融資産もあります。問題はありません。
 
仮に今すぐ、いちごさんが退職したとします。毎月の貯蓄ペースは単純に計算して16万円程度に落ちますが、それでもボーナスからの貯蓄を加えれば年間390万円。ご主人が定年までの7年間で2730万円。今ある金融資産(投資商品は評価額の増減なしとする)と合わせて、4000万円ほど。退職金を加算すれば、60歳の時点で7000万円。老後資金として考えれば、さらに個人年金保険から受け取る年金額(妻は計400万円、夫は不明)や終身保険の解約返戻金も加算する必要があります。

そして、そこから実際いちごさんご夫婦に必要な老後資金を差し引けば、それがお子さんに遺すことのできる金融資産となります。
 
毎月の生活費が今と変わらないとすれば、60歳以降の生活費は、一部、保険の払込期間が不明な商品もあり、その他不確定要素もありますが、ボーナスから捻出しているコストも月割りで加算すると、おおよそですが月30万~33万円。ご主人が65歳まで再雇用制度を利用して働くとすると、ボーナスを入れた手取り年収は480万円ほど。年間100万円近くは貯蓄できます。65歳以降、夫婦とも年金生活となった場合、毎月の不足分は12万~15万円。90歳になる25年間で4000万円ほどになります。これに、個人年金保険や年金や終身保険の解約返戻金(もしくは死亡保険金)を考慮して、手元に残る資金は、途中クルマの買い替えや住宅リフォームの費用等を引いても、少なくとも4000万円前後は遺せるのではないでしょうか。
 

アドバイス2 外貨建ての保険商品は投資と同じ

現状のままでも資金的に困ることはないですが、気になる点として、まず保険があります。ご夫婦とも定期保険は不要です。解約していいでしょう。もちろん、ご夫婦に万が一のことがあれば、とくにご長男については心配でしょうが、すでにまとまった資金があります。あえて定期保険で死亡保障を確保する必要はありません。
 
また、個人年金保険については、残りの保険料は前納してもいいのでは。それだけ余裕資金がありますし、それによって支払い保険料もある程度節約できます。
 
そして問題の米ドル建ての保険です。貯蓄性という点で有利かもしれませんが、為替リスクまで考えなくてはいけません。必要なときに円高になっていれば、それこそ貯蓄性は帳消しになります。つまり、外貨建ての保険は投資なのです。

対して、金融資産の割合を考えれば、そろそろ投資比率は落として、元本保証商品で確実に資産を確保する時期にさしかかっています。その意味で、外貨建ての保険商品に今後も掛け続けることは、避けたいところです。

したがって、今も保険料の支払いが続いている、いちごさん加入の米ドル建て終身保険2本は払済保険に。長女の方の養老保険も同様です。2人のお子さんに掛けている共済も不要です。
 
また、質問にあります「保険商品以外での資産運用方法を知りたい」については、浮いた保険料の一部を使って「つみたてNISA」を始めてはどうでしょう。運用中の利益が全額非課税扱いという大きなメリットがあります。
 

アドバイス3 相続ではなく、生前贈与を活用したい

もうひとつ気になる点は、資金の遺し方です。投資商品や保険商品も利用されて、多角的に準備されていますが、もっとも確実に、かつ効率的に遺すなら、部分的に生前贈与を活用してはどうでしょうか。
 
贈与税は、その基礎控除部分である年間110万円(暦年贈与)の範囲内であれば、非課税となります。一方、相続で遺すと、いちごさんのケースでは相続税が発生する可能性も否定できません。

ただし、暦年贈与を毎年定期的に行うことで定期贈与(まとまった贈与を分割して行う)とみなされる場合があります。そうなると贈与税が発生してしまいます。贈与契約書を作成するなど、対処法はいろいろありますが、面倒であれば信託銀行の暦年贈与信託を利用するというのもひとつの方法です。
 
ただ気をつけたいのは、息子さんと娘さんの立場の違いです。娘さんは将来的には独立するという前提があります。ですから、今からまとまった資金を手渡すことで労働意欲が損なわれては、独立もままなりません。贈与額については、息子さんと同じにするのではなく、娘さんは相続に重きを置いた方がいいかもしれません。
 
最後に、息子さんの年金の猶予について。個人的には、親が一括で支払ってもいいと考えます。資金的に余裕もありますし、年金制度も存続していくと考えるのが自然です。ともあれ、いちごさんが退職すれば、自分の時間が持てます。ストレスからも解放されるでしょうから、お金を遺すことだけでなく、今後お子さんとともにどのように時間を過ごしていくかを、ゆっくりと考えてはどうでしょうか。
 

相談者「いちご」さんから寄せられた感想

この度、プロの方の目で多方面からアドバイスを頂き、大変感謝しております。まず仕事を辞めるかどうかの悩みですが、「即リタイアOK」とおっしゃっていただけた事で気持ちに余裕が生まれました。今後の事を改めてしっかりと考えたいと思います。今後の資金繰り等、細かな計算も、自分ではなかなかできなかったのですが、具体的に数字で示して頂けた事で対策も練りやすくなりました。余裕資金の運用方法は現在の投資性の強い方法以外のものが思いつかず「つみたてNISA」も頭になかったので、今後積極的に活用してみたいと思います。ここまで具体的なアドバイスを頂ける事はそうそうないので、とても良い機会になりました。また、最後に家計の診断以外で子供との関わり方などにもお気遣いを頂き、とても温かい気持ちになりました。この度はありがとうございました。


教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武
 
 

【関連記事をチェック!】
56歳貯金400万円。学費で貯蓄が600万円減り、老後が不安
54歳、低収入の息子に貯金2000万円と自宅を遺したい
60歳間近で貯蓄1000万円のみ。次男は就職に失敗…
52歳医師、月収135万円。貯金が少ないことで悩みます
59歳教育費で貯蓄ゼロ。住宅ローン残債が2000万円
 

月々の保険料を見直しませんか?

近くの保険相談窓口を探す(無料)

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。