見どころたっぷり!ドラマ『昭和元禄落語心中』
昭和最後の大名人、八代目有楽亭八雲(岡田将生)を中心に、落語に人生を捧げた人間たちが織りなす『昭和元禄落語心中』。原作は手塚治虫文化賞新生賞など数々の賞を受賞した雲田はるこの漫画作品、アニメ化もされた人気作です。
名人・八雲『昭和元禄落語心中 1』/出典:Amazon
「原作の世界観にそぐわないから」と実写化作品を敬遠する視聴者も多いなか、原作ファンやアニメファンにも歓迎される完成度の高さで注目される『昭和元禄落語心中』。作品には『昭和元禄落語心中』だけが持つ5つのあじわいがあるようです。
見どころ1:渾身の若い演技をあじわう
注目したいのは、昭和を舞台にしっとりとした落語の世界を、岡田将生、竜星涼、成海璃子、大政絢、山崎育三郎といった若い俳優たちがつくりだしていること。二転三転するストーリーや奇々怪々の登場人物などドラマの要素はさまざまですが『昭和元禄落語心中』が描くのは昭和を生きた人たちの人生そのもの、決して派手ではありませんが、そこに生きる人たちの心の移ろいを若い演技がつぶさに見せてくれます。人生のある期間を切り取って、働き方や恋愛模様にフォーカスする作品でも一話完結でもない、じっくりあじわう作品を支える若い演技は、しっかり見届けたいところ。
天才・助六『昭和元禄落語心中 3』/出典:Amazon
八雲の白髪交じりの貫禄と時折見せる表情の鋭さをゾクゾクと見せた岡田将生。『リーガルハイ』で見せたコミカルな軽快さや『小さな巨人』の重厚さとは違う、どこか近寄りがたさのあるオーラに新しい岡田将生を見て取れます。
山崎育三郎演じるエネルギッシュな助六も絶品。だらしないのに憎めない、『グッドパートナー 無敵の弁護士』での気取った弁護士やミュージカルで見せる圧倒的なキラキラ感とは違う山﨑育三郎の幅の広さにも驚きます。2人の運命を翻弄する芸者・みよ吉(大政絢)や、八雲の養女となる一本気な小夏(成海璃子)、新しい風となる八雲の弟子・与太郎(竜星涼)にも注目です。
見どころ2:本格的な落語をあじわう
寄席に来ている気にさせるのが『昭和元禄落語心中』。観客と一体になる躍動感や出囃子の臨場感は格別の味わいです。落語家ならではの佇まい、手の仕草、視線の置き方、声の張り具合など、端々に感じる落語への真摯な取り組みが功を奏し、落語家の個性、人となりまでが落語に息づくすごさと、落語が上達し完成されていく過程を見て取れる気迫、濃厚な落語の世界はまさに本物。
また、稽古を重ね成熟していくまじめさと演じる女性の艶と色香がにじむ端正な八雲の落語と、観客をグイグイと引き込むエンターテインメント性に富んだ助六の落語に、木村屋彦兵衛を演じる柳家喬太郎の円熟した芸や、7代目八雲を演じるベテラン平田満の落語も加わり、落語の世界が広がります。
見どころ3:実写版の妙をあじわう
原作もアニメ版もたくさんの人に支持された『昭和元禄落語心中』。実写版では、その世界観を壊すことなくマンガの世界に命を吹き込まなくてはいけません。扇子を持つ手のしみやしわ、観客一人ひとりの豊かな表情、提灯の光、屋台の湯気、にぎやかな街の風情がにじむ人生の儚さそのままに、実写版のよさが生きた作品となっています。▶ドラマの詳細はこちらから
見どころ4:昭和の風景を味わう
『昭和元禄落語心中 音曲噺其の二』/出典:Amazon
キセル、ちゃぶ台、桐箪笥、昭和の匂いがプンとする小道具や寄席や楽屋のなつかしい風景もあじわい深く、「今日はよかった」「うまくなった」と落語家たちの成長を語り合う寄席に集う人たちの温かさも気持ちよく映ります。また、明るいばかりではなかった昭和の影も丹念に描かれ、自由が制限された時代を生き抜いた落語を改めて知ることができます。
見どころ5:四季の美しさをあじわう
桜の風景が印象的な『昭和元禄落語心中』。ハラハラと舞い散る桜、向こうの方にぼんやり見える桜など、華やかさから切なさまで、さまざまな心模様を鮮やかに染めています。壊れそうな八雲の心に降る雨、夏の夜、冬の雪、花鳥風月の美しさも作品の見どころとなっています。『昭和元禄落語心中 10』/出典:Amazon
観客として落語を聞き、彼らの成長を見守るような気持ちになる『昭和元禄落語心中』。ドラマファンだけでなく、落語を聞いてみたい、寄席に行ってみたいと思っている人にもみてほしい作品です。