新たなカスタマーを狙った、“新鮮なカタチ”のSAC
1.5Lターボを積むsドライブ 18i(436万円)とsドライブ 18i MスポーツX(481万円)、2Lターボのxドライブ 20i(474万円)とxドライブ 20i MスポーツX(515万円)をラインナップ
従来、BMWの基本モデルといえば3、5、7のリムジンシリーズで、そこに1、2、4、6が加わった。もうじき8シリーズも追加される。つまり、3、5、7の上下と間の数字を埋めることでフルラインナップ化を図ってきたというわけだ。
一方、BMWが独自にSAV(奇数)、SAC(偶数)と名乗るSUVシリーズもまたX5を皮切りにして、今やX1、X3、X4、X6が日本上陸を果たしている。残るはX2とX7(X8も当然、出てくるだろう! )。そのうちのX2が今回の主役である。
ちなみにBMWでは車名の数字が大きくなればなるほど車格(クラス)が上がっていく。ボディサイズが大きくなるわけだ。パワートレーンの性能によっては上下クラスで価格が逆転することもあるが、基本的には数字の順に大きく高価になっていく。1が欧州C、3が欧州D、5が欧州E、7が欧州Fというセグメント分類で、それに1を足した偶数モデルがクーペ系もしくはSACということになる。リムジン系とX系で数字が同じであれば、プラットフォームも近いと考えてまずは問題ない。 というわけで、今回のX2は、SAVであるX1のクーペ系、つまりはSACの入門モデルと言っていい。ただし、X1はFRの1シリーズがベースではなく、FFの2シリーズ、もっといえばMINIクロスオーバーと基本のプラットフォームを共有するモデルで、当然、X2もそれにならっている。 X1のスタイルが兄貴分のX3やX5の影響を色濃く受けていたのに対して、X2はX4やX6の弟分のようには見えない。それだけBMWとしてもこのX2でこれまでとは違うユーザー、特に若いカスタマーを獲得したかったということだろう。パッと見て、BMWらしいと思う半面、らしくないところ、例えば伝統のキドニーグリルやエンドピラーのエンブレムバッチなども散見され、昔ながらのBMWファンである筆者からすれば、「ちょっと変わったビーエム」に見える。
逆にいえば、それだけBMWのデザインはコンサバであり続けてきた。特に一時期のぶっ飛んだバングル・デザインを経て、その傾向は強まっていたと思う。クラスは違えどもカタチは同じ。民族は同じでも年収が違う、といった風情で、そこにヨーロッパ的なクラス社会の有り様を感じたものだった。
そういうがんじがらめのヒエラルキーを若者は嫌う傾向にある。権威主義に映るのかもしれない。BMWのみならず、メルセデス・ベンツやアウディもそんな雰囲気を“数字の小さなモデル”では払拭しようと躍起になって新たなスタイリングに取り組んでいるようにも思える。
走りは“憧れ派”を満足させる、少し強めのテイストに
新鮮なカタチのX2、その乗り味は果たしてどんなものだったか。これで乗ったフィールがX1と変わらないというのであれば、がっくり肩を落としてホテルの部屋に引きこもるほかなかったが。試乗した192ps&280Nmのxドライブ20i MスポーツXに関していえば、なかなかどうして外観に優るとも劣らずホットなSACだった。 ドライブモードひとつで、そのキャラクターを大いに変える。意図的にキャラを際立たせたのだろう、スポーツモードでは徹頭徹尾、武闘派だ。最近のBMWのなかでも、その味付けは際立っている。ちょっと調味料をかけ過ぎた、という感じで、MINIを思い出してしまうほどの“ミズスマシフィール”(ゴーカートでもいいけれど)だった。もっとも、MINIクロスオーバーあたりと違うのは出しゃばり過ぎない4WDのおかげでどんな場面でも安心のスタビリティ(しっかり感)をドライバーに伝えてくれるところ。つまり、過激さではMINIと肩を並べるが、走りの洗練度においては完全にBMWのそれ、という、考えようによっては当たり前の性能を手に入れたと言っていい。
そのくせ、ノーマルモードで走れば、20インチタイヤゆえのバタバタ感こそあるものの、しなやかに動くアシと強い骨格のおかげか、“ドイツ車らしい硬さだね”と全般的には我慢できるレベルに収まっている。硬いアシ好きには心地いいと感じられる程度にもってきたのだから、ここにきてFRの会社であるBMWのFFに対する知見は、そうとうレベルアップしたのだと思う。 ロイヤルカスタマーを驚かせる容姿ながら、その実、ナカミはイメージどおりのスポーツ派。本当はもう少し優しい走り味が最新のBMWなのだけれども、それじゃこれから入門するBMW憧れ派の満足は得られない。少し強めの味付けを。(初めてBMWに乗る)BMWファンにとって、イメージどおりの走りを提供していると言ってよさそうだ。